王女直轄部隊長
いよいよ、動き始めます。
あっと言う間に女の人の姿は見えなくなってしまった。せめて名前くらいは聞こうと思ったのに。
「そういえば、女の方は王女直轄部隊の隊長さんじゃねぇのか? 男は知らんが……」
この国の王女の直轄の部隊で、所属は討伐軍だが、軍の指揮系統には含まれず、王女の命令にのみ従い行動する。まさに親衛隊とも言われる部隊。この部隊は全て女性のみで構成されていて、メイドも兼任している人も多く、王女の身の回りの世話等もその部隊のみで行っている。そしてかなり忠誠心が高いと言われている。
その部隊の隊長があの人なら、あの魔力のオーラは納得出来る。あれ程の魔力は、学園の魔法学区の教師陣でも持っていないだろう。そんな人が一般人なはずがなかった。
「マグロさん、どのくらい強いのかは知ってる?」
「マーグロイだっつってんだろ……。聞いた話だと、雑魚なら単独で1000体は軽く倒せるらしいぞ。」
「そんなに強いんだ。教えてくれてありがとう」
「おう、もうすぐ学校の方でも討伐参加するんだろ? 気をつけろよ。」
「はーい」
マグロさんと手を振り、別れる。これから練習を更に重ね、力をつけなければならない。ここを守るためにも。
王女直轄部隊は王城に本部を構えている。訓練も王城内のスペースで行っており、交代して王女の護衛も行う。部隊の人数は20人で、4人で1小隊で全部で1中隊となっている。ちなみに5中隊で1大隊だ。
街中では隠している、魔力を開放する。身体から、青いオーラが流れ出た。このオーラはフロナにとっては身分証明書と同じ意味を持っている。
「隊長!おかえりなさいませ!」
門番として立っている衛兵が、顔も見ずに通してくれるのはこの青いオーラのお陰だ。他に出せるのは師匠くらいだろう。
「フロナ隊長。入隊希望者の書類選考が終わりました。今年は推薦がありませんでしたので、問題がなければこのまま面接や実技選考になります」
「レニス中隊長。一人調ベテ欲シイ人物ガイルノ。『4ツノ球体ノ武器ヲ操リ、トテツモナイ魔力ヲ持ッタ綺麗ナ白銀ノ髪ノ少女』ナンダケド。名前ト、ドンナ人ナノカ、調ベテクレナイ?」
先程街中で、私を助けてくれた少女。彼女は試験などパスしてこの部隊に入れる程の強さだと考えている。もし実力が無かったとしても、あれほどの才能があれば、すぐにこの部隊でもトップクラスになるだろう。
一番の問題は年齢だ。幼い者を軍で働かせるべきではないという者もいるだろう。言っている者の大半が、自分が成り上がる為の手柄を横取りされたくないと考えている無能達なのが残念だが。
彼女の見た目は学校に通っている歳では無かった。しかし、才能を見出され学園に入学しているかもしれない。それなら少し調べてもらえばわかることだ。
そして、軍の頭の弱いおじ様方が何を言ってくるかは心配だが、彼らよりは遥かに強いだろうし、実力で黙らせることが出来ると思っている。
「わかりました。見つかり次第、すぐに連絡を致します」
「オ願イネ」
すぐに部隊の制服に着替え、王女の元へ行く。待機しているメイドに取り次いでもらい、部屋へと入る。
「フロナ。休暇中だったのに、ごめんなさい。」
「オ気ナサラナズ。私ハ、システィナ王女ノ兵デスカラ。」
「そういうのは止めて欲しいのだけど……。今は置いておきましょう。フロナ、敵が動いたわよ。概ね予想通りね。学園には連絡してあるから。こちらも予定通り実行します。私の部隊からは貴方だけということになっています。いくら軍楽隊の魔法支援があるからって一人で無茶はしちゃダメよ。」
「ワカッテイマス。デハ、私ハコレニテ。」
「えぇ。」
一礼し、部屋と後にする。その際の王女の顔はとても不安そうであった。いつもは見せない表情に心配になったが、私がやることは変わらない。
(全力ヲ尽クソウ。コノ国ト、王女ヲオ守リスル為ニ。)
「……遂に来たわねぇ。」
王女から届いた手紙には、敵が動いたことと、予定通り課題を執行することが書かれていた。
生徒のことも勿論心配だけど、この国の未来が懸かっている。失敗は許されない。
「生徒達に通達なさぁい。いよいよ課題を始めるわよぉ。」
「「「「「わかりました!」」」」」
教員達も真剣な表情で部屋を出て行く。
そして、その日の午後には課題の実行が決まったことが全生徒に通達された。
読んで下さってありがとうございます。今回はリアルの都合にて更新も遅く、そして量も少なくなってしまいました。申し訳ありません!祖母が怪我をして入院したりで忙しかったためです。
これからもお付き合いくださいますようよろしくお願いします。




