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神様ショップと異世界転生!  作者: ぬこだいふく
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精霊イフリートと精霊契約

焼き魚を二つ買い。演習場に向かう途中…。赤いトカゲさんを目撃する。

 絶妙な焼き加減の焼き魚を食べながら、闘技場へ向かう。塩の塩梅も完璧で、噛む度に旨味が溢れる。また買おう。次は、別の奴を試してもいいかもしれない。


 一匹を食べ終えた頃。前から馬車が走ってきた。貴族が乗っているのだろう。装飾が豪華で、馬の身体が大きく逞しい。御者台に乗る人も燕尾服の様だ。

 

 馬車との距離が近くなり、御者の顔が見えるかどうか。そんな時。


 馬車の進行方向に、赤いトカゲを見つけた。精霊だろうか、気がついていないのか、のんびりと歩いているが、このままでは轢かれてしまう。


 咄嗟に飛び出し、トカゲを拾って、そのままの勢いで反対側へと飛び込む。トカゲはしっかりと腕で守ったので、多分無傷のはず。間一髪で、馬車が通り過ぎた。


 馬車は、一瞬止まる素振りを見せ、御者もこちらをチラッと見たのだが、すぐにまた走り去っていってしまった。もしかしたら、中に乗っていた主に急かされたのかもしれない。


「危ないところだった……。トカゲさん! ちゃんと周り見てないと危ないよ?」


 私の注意なんてお構いなしに、トカゲさんは私が元いた場所へと歩いていく。今度は私も一緒についていく。


「あ、私のお魚……。うぅ……」


 地面には私が買った焼き魚が落ちていた。これではもう食べられない。トカゲさんは焼き魚を鼻先でツンツンと突いている。


「もし欲しいなら食べてもいいよ?」


 私のその言葉を待っていたのか、トカゲさんは私がOKを出した瞬間に魚にかぶりついた。そこからは止まらない。トカゲさんは、美味しそうに魚をあっという間に平らげてしまった。


 トカゲさんは、食べ終わるとくるりとこちらに向き直り、何かを伝えるかのように口を大きく開くと、トカゲさんの身体が大きく燃え上がった。

 慌てて距離を取る。もしかしたら、さっき離れてと言っていたのかもしれない。


 炎が消えると、トカゲさんがいた所には、人間の女性の姿があった。


「食べ物を恵んでいただき、感謝します。どうやらあまりの空腹で、馬車が来ていることにすら気が付かなかったようです。そして……命を助けていただきありがとうございます。あのままでは、私は死んでいました」

「トカゲさんが無事で良かったよ。お魚は地面に落ちちゃったから私は食べられないし、トカゲさんが食べて喜んでくれたならいいの」

「なんてお優しい……。私のこの生命、貴方の為に捧げます。」


 左の手の甲から熱を感じる。見ると紋章が浮かび上がっていた。薄っすらと白く描かれ、白く発光している。


「私はイフリートと申します。よろしくお願いいたします。」

「イフリートさん。そんなことしなくてもいいんだよ?」

「いいえ、命を2つ分も救っていただいたのです。身を捧げてご奉仕せねば気が済みません。それと主様。敬称はいりませんのでどうぞ呼び捨てでお呼びください。」


 そして、イフリートは片膝を折り、頭を下げた。




 ようやく演習場に到着した、約束の時間は既に過ぎている。アンナに謝らなくちゃ。


 イフリートはトカゲの姿に戻って肩に乗っている。人間の姿だと、魔力を消費し続けるらしい。トカゲの姿なら魔力は回復するから完全に回復するまで休んでとお願いした。


「あぁ!やっと来たわねぇ。心配したのよぉ?」


 アンナが駆け寄ってくる。両手を広げ、このままでは恐らく抱きつかれるだろうと思ったその瞬間。肩から炎が目の前に飛びイフリートが現れた。人の姿になって。


「主。この者からは、邪な気配を感じます。安易に触れさせてはなりません。」


 アンナとの間に立ち、ここを通すまいと睨みつける。


「あら? いつの間に精霊なんかと契約したの? それもかなり位の高い精霊じゃない?」

「えっと……さっきそこの道で……。イフリート、その人は私を助けてくれた人で先生なんだよ? 失礼しちゃダメ!」

「し、しし失礼しました! 主の恩人でしかも先生である御方に無礼をっ! 申し訳ありません!」


 イフリートは必死に頭を下げている。アンナは、気にしてないと言ってくれた。この人に見捨てられたら、私は野宿確定だった……危ない危ない。


「さてと、これで演習できるわねぇ。……あら?」


 この闘技場は、アンナの権限で貸し切りのはずなのに、観客席に人が居た。制服を着ているから生徒だというのはわかるけど、それ以外は見当もつかない。


「ルーマス・イクト?ここは立ち入り禁止と通達があったはず。聞いてなかったの?」


 いつも少しだけ伸びる語尾が無くなるだけで、恐怖を感じた。怒っていると語尾が伸びなくなるのは覚えておこう。


「失礼します、学長。本日、訓練の為に半月も前から予約していたのにいきなりキャンセルになった。理由くらいは私にも知る権利があると思いまして、こうして参った次第です」


 礼儀正しい感じで接してきてはいるけど、こちらに飛んでくる嫌な視線から察するに、闘技場を使えないことに不満があるのだろう。


「ちゃんと補填も行うつもりよ。それに、第一演習場は予約リストを一日ずらして、予定が合わない人は、他の演習場を使えるようにするつもりよ?」

「わかっております。学長がお決めになったのですから、勿論従います。ですが……」


 またこっちを睨んでる。イフリートも限界らしく、握った拳をプルプルさせている。


「この者が本当に予定をずらし、そして国の税金と学長の私費という対価に見合う者なのか、気になっただけです」

「貴様っ!?」

「イフリート! ダメッ!」


 ルーマスという男に殴りかかろうとするイフリートを、手を掴んで止める。イフリートがもう限界だ。この調子だと、本当に手を出しかねない。なんとか穏便に終わってほしいけど。


「そう……。なら、演習相手変わる? 相手はそこの精霊を、ここに来るついでにさらっと契約しちゃうくらいの強者だけど?」

「その精霊…本当に強いのですか?全く魔力を感じないのですが……」

「戦ってみればわかるわぁ」


 そして、演習相手がさらっとルーマスに変わる。


(アンナ……それでいいの……? 私の実力を見る演習なんじゃ……)


 アンナは私と目が合うとにっこりと微笑む。どういう意味なんだろうか……。

 私もルーマスも位置についたのでアンナが合図を出す。


「では、評価演習を始めます。準備はいい? ……始め!」


 遂に学校に入って初めての戦闘だ。頑張ろう。





「我を守る盾となりて顕現せよ。イージス!」


 戦闘に入り、ルーマスは4つの盾を召喚した。綺麗な光り輝く盾は浮遊し、ルーマスの周りと漂っている。


「イフリート。貴方の実力を見てみたい。出来る?」


 イフリートは深々と頭を下げる。


「主様。やれと命じてください。私は、主様の為であれば全力を尽くします。」

「わかった。お願いね」

「かしこまりました。この身は全て、我が主のために」


 数歩進み出て、右手を振り上げる。


「開け、<業火の門>」


 イフリート少し前に溶岩が湧き出す。イフリートはそこに躊躇いなく手を突っ込む。そして、自分の身体よりも遥かに大きい大剣を取り出した。

 大剣は、剣先から柄の部分まで溶岩が流れている。熱気がこちらまで届いているからかなり高温のはずだ。


「主様。少し魔力を分けてくださいませんか? 我々精霊は本来自身で魔力を生成できるのですが……。今回は……」

「さっきまであんな状態だったもん、しょうが無いよ。好きなだけ使って」

「ありがとうございます」


 身体から魔力が抜け出る感覚がした。感覚的には1%程。イフリートが遠慮したのかな。

 剣を見ると先程より二回りほど大きく、そして赤く輝いている。


「どうなってる! さっきはまるで魔力がなかっじゃないか!」


 ルーマスも焦っているようで、イージスを盾にしながら魔法を詠唱しようとしている。


「主様を侮辱した罪。これで償え。<レーヴァテイン>」


 剣など届くはずがない距離でイフリートは手に持つ大剣を振るった。剣から赤や黒の炎が出現し、ルーマスへと迫っていく。イージスを使って防御しようと4つ全てを使ったみたいだが。イフリートの大剣は4つ全てを粉々に粉砕し、ルーマスを焼いた。


「あああああああああああ!!!!」


 ルーマスは何も出来ずに、黒焦げとなって倒れた。


「そこまでぇ! 勝ったのはぁ……ラニカ・セフェル!」


 これ、私の評価演習なのに……。イフリートだけで終わっちゃった。いいのかな。


「主様。終わりました」


 こちらに嬉しそうに近づいてきて可愛かったので、思わずいい子いい子と頭を撫でてしまった。イフリートも手が届くように頭を下げている。


「……はっ!? ごめんね!」

「いえ……」


 気がついて慌てて手を引っ込めたが、恥ずかしいことこの上ない。イフリートも恥ずかしいのか頬が赤くなっている。


「そ、それにしても。主様はラニカというお名前だったのですね」

「あれ? 言ってなかったっけ……。えへへ……」

「あら? じゃぁ、貴方はどうやって精霊と契約したのぉ? 契約するには名前教えないといけないはずよぉ?」


 イフリートは契約してなかったんだ。既に契約してたと思ったのに。


「ラニカ様の許可もないのに、勝手に契約するなんて出来ません。これは仮契約と言って、一時的に精霊側の同意があった場合のみ可能な契約です。精霊側から契約の破棄が出来ないため、命を捧げても良いという相手にのみ行います」


 私をそこまで信じてくれているなら、私もそれに答えたい。それに魔力も、イフリートが必要なら渡してあげたい。


「じゃぁ、ちゃんと契約しよ!」

「いいのですか!? ありがとうございます!」


 紋章の所にイフリートが手をかざすと、綺麗な赤色に変わった。それに、イフリートとの繋がりを感じる。大分疲れているように感じたのでイフリートを休ませてあげよう。


「すごいわねぇ……。ちゃんと契約してない状態であれほどの威力。今の状態でやったら、演習場壊れちゃうんじゃない?」

「ラニカ様がお望みとあらば」

「やめて! 絶対にやめてね!」


「うふふ」

「クスクス」

「アハハハ」


 演習場での三人の楽しいお喋りは暫く続いた。

遂に主人公の名前が出せました。頑張って書いていきますが、これから忙しくなるかもしれないので更新が遅くなる可能性があります。気長にお待ちいただければと思います。一応週一で更新できればと思っています。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

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