式典に向けて
防衛戦を無事乗り越え、ラニカには国王から手紙が届く。そこには式典と勲章の授与について書かれていた。
「アンナ。どうにか無かったことに出来ない?」
「無理ね。あれ程の活躍した人に何もしなかったら王族の恥になるわ。大人しく出席しなさい?」
「わかった……」
防衛戦から一週間。ラニカの元には、国王陛下から防衛成功の功績から式典への招待の手紙が来ていた。大勢の前に出ることが苦手なラニカは、どうにかして貰おうとアンナに相談しに来たのだ。
「ラニカ様。これは喜んでいいのではないでしょうか? ラニカ様が奮戦されたからこそ、今回の防衛戦は都市への被害が無かったのですから」
「それはそうかもしれないけど、恥ずかしいの!」
「今回の一番の功労者なのです。ラニカ様は胸を張って堂々としていればいいのです」
イフリートは、まるで自分のことのように喜んでいる。そして、胸を張ったことにより一部分が強調される。
ラニカは、それと自分のものを見比べる。イフリートは魅力的な身体をしている完璧なプロポーションだ。それに比べてラニカはかなり控えめだ。はっきり言って羨ましい。
「そういえば、ラニカはドレス持ってるの? 式典に出席するならドレスの一つくらい着ていかないとダメよ?」
「あっ……」
ラニカが持っている衣服は転生後に購入したローブと学校の制服だけだ。式典なら制服でも問題はないかもしれないが……。
「制服で行こうなんて考えていませんよね? ラニカ様程の御方が制服で出席なんてありえません!」
「そうよ? それに女の子ならドレスの一着や二着持ってないとダメよ」
と釘を刺されてしまうのであった。
「国王、私は勲章授与に反対です。どこの馬の骨ともわからぬ奴に勲章を渡すなど……」
「そうですぞ! それに勲章は今回の防衛戦にて奮戦した私の私兵達にも与えられるべきです。あんな少女に『不死の大亀』と『冥虫』が倒せるはずがありません!」
二人は、国王の政策に反対してくる力の強い貴族だ。これまでも、何度かこうして国王が行おうとした政策に口を挟んできた。
「ビルゲッツ子爵、ハイド伯爵よ。それは既に決まったことだ。私はこれからのアンデッドの対策を話す為に呼んだのだ。それにその二種でなくとも、ゾンビとスケルトンをかなりの数討伐しておる。学生であるにも関わらず、ここまで国に貢献してくれたのだ。勲章を与えたとしても不思議ではなかろう?」
「国王がそこまで言われるのであれば……」
気に食わないのか眉間に皺を残し悔しそうにしながらも、貴族達と国王のアンデッドへの対策会議は進んでいく。今回得られた情報やラニカが実際に使った魔法等、これからの討伐へ向けて比較的前向きに会議は進んでいった。
(あんな小娘が、勲章授与だと……?ふざけるな、勲章は私が授与されるべきだ……)
(一体、どんなペテンを使ったのだ?あの強大なアンデッドを討伐した等と……)
先程の二人の貴族はまだラニカのことを信じられずにいた。そして会議の間、その二人が積極的に意見することはなく、会議が終わるまで自ら口を開くことはなかった。
(式典では、何かあるかもしれん。対策をしておくか。娘達も今回は出席するのだ、何事もなく終わればいいのだが……)
国王には、二人の姿が何かを画策している様に見えた。
読んでくださってありがとうございます!ラニカのドレス姿は可愛いんだろうなぁと思いながら書いていました。これからも頑張って続けていきますのでよろしくお願いします。