奮闘
『冥虫』と『不死の大亀』が出現し、壊滅の危機。ラニカはどうするのか!
指輪の魔力制限は、魔力の一度に消費する量の上限を制限するというもので、これにより過剰に魔力を消費して魔法が異常な威力で発現することを回避することが出来る。
この上限一杯に魔力を消費して連続で魔法を放ったとしても、魔力の回復量の方が上なので実質無限に魔法を放つことが出来た。
ラニカの方へと向かってくるアンデッドは全て倒した。近くには、屍の山が築かれている。
4つの魔装球のうち2つはアンデッドの処理に使っていたが、残りは全体の監視のために上空に待機させていた。危ない所が出ると援護に向かわせて、辛うじて前線を維持していたのだ。
そして、そこに『冥虫』の大軍と、『不死の大亀』がやってきた。亀よりも数が多く被害が拡大しそうな虫の方が厄介だろう。
(大量の虫を殲滅するには、範囲魔法がいいだろうけど。数が多すぎて一度に処理出来ない。)
魔法を放ったとしても、処理できなかった残りがカウンターで魔法を放てば周辺にいる兵士が倒れ、前線が崩壊する。
(何か、打開策は……。確かあの虫の特徴は、魔法陣を作って魔法を放つことと、寄生すること……。)
寄生は近づかないようにするくらいしか対処がない。一度体内に入り込まれればその時点で死が確定する。
(虫達はいつも空中で魔法陣を作成する。飛べなくする? だとすれば……。重力で縛り付ける?)
地面に落としてしまえば、虫達は魔法を撃てない。そうすれば後は魔法を遠距離から放って倒せばいい。
それならば、虫達がいる所の重力を強めればいい。魔法陣を作ろうと既に動いている所はそれで妨害も出来るはずだ。
「これで……どう!?」
上空に待機させていた魔装球を2つ使い、虫がいる区域全体の重力を10倍に強めた。虫達は飛ぶことが出来ず、藻掻きながら地面へと落ちていく。
そして、地面に落ちた虫を炎で焼き尽くす。合計10の群れ、計50万の『冥虫』はこれで消し炭となった。
「やった。後は亀だけ」
『不死の大亀』がいた方角を見たラニカは、目を大きく見開く。
「嘘……。」
討伐軍が即席で作り上げた防衛ラインは既に無く、討伐に向かった兵士の半分は既に倒れていた。それでも諦めずに親衛隊長と残った兵士達で必死に食い止めようとしている。
親衛隊長が隙を突いて『不死の大亀』を転倒させたが、それでも大したダメージは与えられておらず、時間稼ぎにしかなっていないようだ。
(あのままでは、全員死んでしまう!)
自分の手元に残した魔装球2つを『不死の大亀』の上空へと飛ばす。そして、指輪のことも考えずに全力で魔法を放った。
(あの人達を、守る!)
魔装球が上空で円を描く。次第にその速度が速くなり、魔装球が光出す。そして臨界に達した魔装球から、レーザーが発射された。
それは光が空から降り注ぎ、光の柱の様にも見えた。あまりにも大きい光の柱は『不死の大亀』の身体の半分を飲み込んだ。
そして光の柱が消えると、下にいた『不死の大亀』は身体の半分と頭だけを残し、消滅した。
(やった……。)
思わず座り込むラニカ。
その際にピシッと小さな音がした。見ると、魔力制限の指輪が割れてしまっていた。これではもう使いものにならないだろう。
(あぁ……。また指輪を買わないとだめか……)
無事防衛を果たし、喜んでいる兵士とは対照的に、ラニカは肩を落とすのだった。
見て下さってありがとうございます!年末に近づき、徐々に皆さんも忙しくなっていることと思います。私も忙しいですが、なんとか途切れないように続けていくつもりです。これからもよろしくお願いします!