4.5.彼女の為の相談会
今回は視点が変わり、薫視点の話になります。
翼がどうしてあんな行動を取ったのか、これでわかります!
夕ご飯を食べ終えて、自室に戻り勉強していた私の耳にピコンと、聞き慣れた会話アプリの通知音が叩いた。
もう直ぐ九時だというのに、一体誰が……いや、今は宿題やらないと。英単語の小テストの勉強もあるんだし。
スマホに向きかけた思考を切り離して、シャーペンを握りなおす。だがしかし、その直後またピコンピコンと通知音。
「……こんな時間に誰なのかしら」
独り言がポツリとこぼれてしまった。
なんせ、余り大きな声では言えないが、私は友達が少ない。二桁ギリギリ位の人数しかいないのは友人関係は深く狭くだからなのだ、異論は認めない。
その中でしつこく連絡をよこす奴は二人しかいない。その片方は最近疎遠になってるから、まぁ十中八九蒼だろうとスマホのホームボタンを押す。
「……なんで、翼が」
通知されていたのは『翼から新着メッセージがあります』なんて、信じられない文字列だった。訳がわからなくて、とりあえずアプリを起動してみる。
『どうしよう! ちょっと相談乗って!』
『薫?』
『おーい、無視しないでくれ』
まるで私が相談に乗る事前提で進められている文面にイラっとし、眉をひそめる。
なんじゃこりゃ、相談に乗るとでも思ってるのだろうか。私の可愛い可愛い椿来を傷つけて泣かせた奴にかける情なんぞ、ないに決まってるのに。こんな文に既読をつけたのは失敗だった。さっさと消そうと電源ボタンに手を当てた瞬間、私は目を見開く事になる。
『椿来と文化祭実行委員やる事になっちゃったんだよ!』
「はぁぁっ?!」
思わずスマホに向かって叫んでしまった、それ位の衝撃だったから。この文面を見てしまったからには、話を聞かざるを得ない。何をどうしたらそんな事になってしまうのか。
パネルをタッチして、メッセージを返す。
「どういう事か説明なさい」
『やっと反応したかと思えば上からかよ……まぁいいけど。 不幸な事故なんだよ、まさかくじでお互い引き当てるなんて』
「最悪のくじ運ね……」
『俺だって気まずいけど、今更どうこう言える事じゃねーからさ。 どうするのが最善か薫に相談したくて』
嘘でしょ……確かに今日椿来と帰ってる時に文化祭実行委員になったとは聞いたけど、まさか此奴とだとは。あの子絶対内心不安なのに私に心配かけたくないとか、思ったりしてるのかなぁ……うぅ、健気、可愛い。明日の朝は会った瞬間に頭撫でてあげよう。
ちょっと涙ぐみつつ、椿来の事を考えてメッセージを打つ。
「普通に振る舞ってあげて」
『……まだ俺、踏ん切りついてないんだけど』
「知らないわよ、椿来のが辛いだろうし」
『俺にも気を使って欲しいもんだ……』
「嫌よ、君の所為で椿来が傷ついた事には変わりないんだから」
『……だよな、すまん。 調子乗った。 とりあえず普段通りやれるようにするわ』
「ん、そうして。 椿来を想うんなら全部正直に話した方がいい気もするけどね」
このアプリの恐ろしいところは思った事をついつい綴ってしまう事かもしれない。これは聞いちゃいけないと思っていたのに、既に送信していた。
……ヤバい、既読のまま止まった。どうしよう。取り繕おうと適当に打とうとすれば、彼から返信が届いた。
『今更遅い。 椿来は俺よりももっといい男と幸せになるべきだから』
「……わかったよ」
『心配してくれてサンキューな』
「あんたじゃなくて椿来の心配してるの」
『お前の椿来愛は壮大だな……』
「……うるさい。そんじゃまた明日」
一気に打って、一つため息を吐く。
本当はまだ両想いなのに翼も椿来も、お互いを諦めようとしている。これはやっぱり勿体無いと思う。どうしても二人には幸せそうに笑っていて欲しいと言うのが、私の願いだから。
「頑張るか、私は私で」
独り言で呟いて、気合いを入れてみる。二人をもう一度、結ばせる作戦を立てる為、私は新しいノートを開いた。
そして表紙に『仲直り大作戦!』と書いて、椿来の事を思い出す。
例えお節介だとわかっていても、椿来の為ならなんでもする。だからできる事から始める。
ノートに思いつくままアイディアを書いていたら、いつの間にか夜は更けていったのでした。そのため小テストの結果は……聞かないでくれると嬉しい。
如何でしょうか?薫ちゃんの椿来のベタ惚れ感が伝われば嬉しいです!
(恋愛感情ではありませんが(笑))