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第一事件『新人エリート警視【七霧葵】』

さてさて、続き、いいペースで書いています。このままで行きたいですねーー。

 【神木無威】検索……完了


 二〇一一年

二月八日[多数の殺人容疑及び殺人未遂により現行犯逮捕]


同年

 二月一八日[裁判が終結《本人に精神の異常が見られるため、両腕の永久拘束と永久投獄及び無期懲役》の判決が決まる。この判決が決まった日、容疑者【神木無威】本人が自らの事を【死神】と言っていた、更に元犯罪者しか殺害していなかった事から、ネット上では英雄視されていた事もあり、神木無威は以後【死神】と呼ばれている事から、この日は《死神宣告》と呼ばれメディアに大きく報じられた]


 同年

 四月八日[【死神】が移送される、日本が神木無威を始めとする、至上最悪の犯罪者達を投獄するために作った監獄【アメノイワト】に投獄される]


 同年

 四月九日[警察始まって以来の天才、史上最年少で警視になった女性【宮園美々】が【死神】の更生任務及び、監視任務の命を受諾、更生と監視を開始する]


 同年

八月一日[この日より【死神】の新たな構成プログラムが始動。【□□□□】と【宮園美々】により【アメノイワト】内にある山で山篭りを行う]


 以降二年間【記録無し】


 二〇一三年

 八月一日[山篭りから【死神】が帰還する。構成プログラムは完了し、性格に多少難がある(【□□□□】の影響による物とされる)ものの、人格の異常性は解除された。これより【死神】の捜査協力権が有効となる。【死神】の犯行は、実に巧妙な手で隠匿されていたため高い思考力があると思われる。そのため捜査協力計画が立ち上がった]


 同年

 八月八日[初の協力捜査を開始。しかし初捜査だったにも関わらず、たった三〇分で事件を解決。【死神】の有効性が実証された。そして【宮園美々】が警視正に昇進する]


 ……以後、幾つもの事件を解決している……


 二〇一四年

 一月九日[新たな監視官、警視【七霧葵】の配属が決まる]



〓◆〓



「よし。殺人鬼が相手だろうと関係ない。絶対に任務を全うして美々先輩を追い越す!」


そう、レディーススーツを着た背の低い女性は、二ヤッと笑い、【端末】を鞄に直すと、椅子から立ち上がる。背が低く、少女ともいえる体系を持った女性、(なな)(ぎり)(あおい)は長い黒髪を揺らし、コツコツと音を鳴らしながら、歩き始めた。憧れの先輩を超すために。



〓◆〓



 しかし、その憧れの先輩の姿は、新たな職場に到着した瞬間に打ち砕かれた


「んふふふふふ。ムイ――。遊ぼうよ――――。お姉さん、暇だぞ――――」


 その牢獄は真っ白な部屋だった。出入り口は防弾ガラスで出来ていて、中の様子が伺える。

 乱れた栗色の長髪の女性が、拘束衣で両手を縛られているにも関わらず、器用に両足を使って、パソコンを操っている少年に、もたれかかっていた。

 少年は目を細めて、ウザそうにしながら、我慢しているように見えた。

 どこからどう見ても、その少年は神木無威、つまり【死神】であることがすぐに分かった。

 しかし女性の方はむしろ見たくないほどに、だれていた。なんとほぼ半裸なのだ。これはもはや、ため息吐いてしかるべきと言えるだろう。

 そしてその正体が、自分の憧れの存在だと気づいた時、葵は固まって二人のやり取りをただじっと見ていた。


「相変わらず酒臭いね。その口から漂う匂い、またバーボンでも飲んだ?」


 無威がパソコンの画面から目を外さずに、そう言う女性は驚く。


「すご――い。流石、ムイ。大正解! もうビックリするぐらいビックリしてるよ!」


「意味分かんない事、言って無いで仕事をしてよ。仕事を。僕の分は終わったよ」


 無威は美々を、まるで相手にしない。


「ええ――――! 私だってやったよ?」


 小首を傾げる美々だったが、無威はため息を吐く。


「そうですね。その酔いっぷりで、デスクワークを二時間で終わらせた事は、尊敬に値するけど、まだ美々姉さんの仕事は終わってないよ」


「ええ――――! 嘘だぁ――――!」


「嘘じゃないよ。ほら、もうさっきから、部屋の前で固まってるから、とりあえず、制服かスーツに着替えてきなよ」


「え!? ひょっとして今日、新しい人来る日だっけ」


「そうだよ。いいから早く着替えなよ。よそ様の前で見っとも無い。というか僕もよそ様だからそういう格好はやめて欲しいけど。」


「ええ――。見っとも無くないよ――。人様に見られて恥ずかしいカッコなんかしてないもん。それに他人行儀なんてひど――――い。ほら――。ムイも好きなおっぱいだよ――――」


「そりゃあ。おっぱいの嫌いな奴はそうはいないと思うけど、そういう話をしてるんじゃないの。いいから切り替えてきなよ。はやく。思春期真っ只中の僕にそう言うことするなんて、ホント、美々姉さんっていい性格してるよ」


「ええ――。ひどいな――――。山篭り中は、あんなに昼夜を問わず、優しくしてくれたのに――――」


「そういうこと。言ってるんじゃないって、さっきから言ってるでしょ。それから、誤解を招く発言をやめて欲しいかな。それに、あった頃の美々姉さんはもっとまともだったと思うけどな」


「もう意地悪ばかり言って酷いよ――――。ムイなんか、ムイなんか、制服に征服されればいいんだ!」


 半裸の女性、(おそらく美々)はそう叫びながら、横の扉につっこんだ。


「また、意味の分からないところで、アニメのネタを……。その内、動くセーラー服とか、赤い片太刀バサミとか持ってこなきゃ、いいけど……。まあいいか?」


 無威はそう言って(おもむろ)に立ち上がる。


「えっと、七霧警視でいいのかな? 中にどうぞ。しばらくしたら美……宮園警視正が来ると思うので、少々待ってて貰えますか?」


 無威がそう言うと葵が口を開く。


「あなたが【死神】ですか?」


 葵のその言葉を聞いて、無威はニヤッと笑う。


「その質問には、宮園警視正が来てからお答えしましょう」



〓◆〓



「失礼しまし……? あれ? ナナちゃん? ひょっとして、新しい監視官ってナナちゃんだったの?」


 スーツに着替えた美々はペコリと頭を下げようとする時、相手を見た。そしてみた瞬間に固まった。


「はい。先輩のおっしゃるナナちゃんで、間違いないです。そして、昔も言いましたが、その呼び方は恥ずかしいので、やめてください」


 ナナちゃんと呼ばれた女性は、小さいながらも、睨んでくる眼力は確かだった。身長は一四○あれば、いいほうだろう。


「あれ? そんなに嫌がってたっけ?」


「はい。嫌とちゃんと言っていましたよ。高校同じ剣道部で、一年しか一緒にいなかったですけど。しかし、すごいですね。もう警視正なんて。驚きました」


 葵がそう言うと、無威は首を傾げる。


「? あれ? 七霧警視。今、宮園警視正と高校一年、一緒だった言いましたよね?」


「? そうですが?」


「今、美々姉さんが二五歳で高校、一年だけ同じく部活をしていた。つまり、二つ違いって事は、七霧警視は二三歳!?」


 ピキッ


「何かおかしなことでも?」


 葵は無威の発言で、額に青筋を立てていた。


「い、いえ。何も」


(そんな外見、そんな体系でありながら、二三歳。つまり、この幼女はつまり、合法ロリ。オタクからロリババアと呼ばれる。架空の存在。まさかそんな奴が実在しようとは……)


 ピキッピキッ


「今、物凄く失礼な事考えませんでしたか?」


 さらに青筋が深く、力が入る。


「そ、そんな事は……」


(流石、警視だけの事はある。鋭い! っていうか。ひょっとして心読めるのか? ……まあ、世の中には、〝よく分からん現象〟もあるしな。試すだけ試すか。ペッタンk)


 シュッ……カッ!


 いきなり無威の頬の横をシャーペンが掠める。


「……次は当てます。よからぬ事を考えないようにお願いします。監視官には、監視している者を殺害する権利があるので。私は躊躇わず殺そうと思った時に殺します」


 警察が言いそうに無いことをさらっと言う。


「……はい」


 無威は内心ドキドキだった。


(絶対心読まれてる――――。後、迷いが全く無い! 超怖い! めっちゃ怖い! ビビッた! これからは平常心を心がけないと殺される。下手な事は考えないようにしよう)


 無威が冷や汗を流しながら、そんな事を考えていると、葵はコホンと軽く咳き込む。


「ところで、あなたは結局【死神】なんですよね?」


 それを聞き、美々が答える。


「うん。この子、神木無威はかつてどこぞの【キ〇】みたいに、ノートは使わなかったけど、自分の才能を使い、法を犯した人間を次々と殺した張本人、通称【死神】。現在は警察の捜査協力者だけどね。一応、挨拶」


 それを言うと無威はため息をついて言った。


「だから、そういう曖昧なところでアニメネタ入れるやめて。ホントに! しかも過去の罪をネタにしないで下さい。は、恥ずかしいから! んん! 改めて神木無威です。お世話をかけますが、よろしくお願いします」


 そんな無威の対応に葵はまるで威圧的に無威を睨みながら挨拶する。


「ええ。よろしくお願いします。本日付であなたの監視官になりました。警視の七霧葵です。あなたみたいな、人格者が、あの【死神】とは、少し拍子抜け気もしますが、いいでしょう」


「あははは」


「何が面白いのでしょう?」


「すいません。何もないです」


「何もないので、笑ったのですか? いや、あれですね。今のは、誤魔化し笑いという、日本人に有るまじき、浅はかな文化です」


「…………すいません」


「……いいです。それより先輩、話したい事があるのですが」


「ん? なに?」


「先輩は【死神】に捜査を協力を受ける事について、どう、お考えなのでしょ?」


「……いきなり直接的だな――――」


「あなたは黙っていてください」


「はいはい」


 ピキッピキッピキッ


「あなたはなん何です。さっきから自分の意見も持たず、まるでハリボテのような人間ですね? 考えてる事も浅はか、馬鹿で能天気、才能が、あるだけで、性格はコロコロ変わって情緒不安定。しかも自分からは何もしない。それに何より……」


 葵がたった数分溜めたイライラを吐き出した。

 しかし途中で口ごもる。

 突然無威から異様な殺気が出て、雰囲気もガラリと変わったからだ。

 何故突然、無威の様子が変わったかというと、無威が人から言われて一番嫌な言葉を、葵が言おうしたからだ。


「それより先は、〝俺〟が言おうか?」


「……」


「ムイ。やめなさい」


 急に美々がムイを静止する。


「いや。言うよ。七霧警視。つまりこう言いたいだろ? 〝俺〟には人間味が無いと」


 そう無威に決定的に足らないもの、それは人間味だ。

笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり、そんな事を無威は決して感情から出す事は無い。

全て偽者。

 痛がったり、苦しんだりする事も無い。

 それはもはや別の生き物、いや化け物と言える。


「……」


「そりゃ。無いさ。だって、あんたが今、前にしてるのは、殺人鬼。つまり〝鬼〟なんだぜ? それくらい理解しといてくれよ。まあ、あんたを殺す気はないけど〝俺〟という人間、いや〝鬼〟っていうのが、どれだけ勝手な存在かってのを、理解しとくんだな」


「…………」


「ま、それは冗談として置いといて。そろそろお昼にしましょうか」


 そうコロッと変わった様に言うと無威は、部屋を出て食堂へ向かった。


「……あれが、【死神】」


 【死神】が去った後、葵はその場にへたり込む。


「甘く見てたでしょ」


 美々はうまくフォローに入る。


「はい。まあ、まさか五つ下の子が【死神】だと思わなかったもので」


「それに、あんなので、怖気づいたら、本気のムイの前には立てない。はっきり言うと本気の彼を殺せる人間はいないわ。まあ、あくまで〝人間〟が相手ならの話だけど」


「え? それってどういう」


「【死神】の出番が来れば嫌でも分かるわ。まあ、今日は初日で疲れてるでしょうから。部屋に帰って休んでなさい」


 美々はそう言うが、葵はそれに従わなかった。


「嫌です! 私は負けるのは大嫌いなので、こんなところで引いてたら、監視なんて続けられません。それに、私も今日から監視官ですから!」


「そう。なら行きましょうか」


 美々はそう言って、葵と共に駆け出した


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