グリムとクレア
結局、面接は行くことで押し切られ、俺はやっと爺さんから解放された。外はまだ薄暗い。俺はゆっくりと歩いて自分の寝泊りしている家に向かっていた。
「おぉ、ラグじゃねえか!」
「グリムか……」
眠いんだよ絡んでくんなよ……。俺を呼び留めたのは、グリムという男。坊主頭に、顔の半分、正確には目の下まで火傷の傷がある。身長も高いしゴツい。黙っていれば威圧感は異常なまでのものだ。ちなみに、火傷の 傷は肩や背中に及ぶ大きなもの。
ちなみに、歳は俺の5つ上で、もう俺が通う予定の学校は卒業済み。今は集落でのんびり日常を送ってるって感じだ。更にちなみに、グリムも異能者。
「アリアたん見なかったか?」
「今日は見張り役だってミーナが言ってたよ」
ちなみに、グリムとアリアは兄妹。「たん」が付いてるのは気にしたくない事実。
かっこいいのにな、イケメンなのにな、威圧感あるのにな……残念だよな。これが現実だ。
「そうか、じゃあお兄ちゃん特製弁当でも持って行ってやろうかな。アリアたん喜んでくれるかな」
「気持ち悪いからニヤニヤすんなよ」
アリアの話になると異常なまでに頬が緩むシスコンであることが傷であるが、真面目な時は頼りになる奴…… のはずである。はずである。大事なことだから二回……あれ? 大事じゃない?
「そうだラグ、お前学園通うんだって? 面白いところだぞ学園は、アリアたんに会えない時間は苦痛だったけどな」
もう怖いぐらいの兄妹愛ですね、いいことだと思うよ。うん、若干引くけど。
「面白いって言われてもなあ……」
学園に関しては、あんまり乗り気じゃない。ってか楽しいとか楽しくない以前に、興味があるかどうかの話な気がするんだよな……。
「まぁ試しに行ってみるだけでもいいじゃねえか。空気が合わねえならその後辞めればいいじゃねえか」
グリムはそう言ってガハハと笑った。能天気でいいよなあ……。グリムは基本的に楽観的だ。時々言う事が的を射てるのがむかつくけど。シスコンだけど。
「行く前から諦めちまったら面白いもんも面白くねえからな」
「分かったよ、説教じみた事言うな悲しくなるわ」
ただでさえ眠いってのに。そのせいで頭も回ってない気がしてきてる……。
「で、こんな時間にグリムは何してんの?」
説教されるとなんか恥ずかしい気持ちになる。とりあえず全面的にスルーする方向で、俺は新たな話題を切り出した。時間帯で言えば、今は明け方。それも太陽が上がるか上がらないかの時間。こんな時間に起きてるってことは仕事か何かが入ってるか何か……。
気付いたよ、うん。帰りたいのに話題切り出すとか俺バカじゃないの?
「偶然目が覚めてな、そしたらアリアたんが部屋にいないから気になって出て来たところだ」
うん、本当に聞いた俺がバカだった。
「じゃあアリアたんの行方も分かったし俺はもう一眠りするかな、お休みラグ」
「あぁ、お休み」
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俺はグリムと離れ、自分が住む家に帰った。俺の家には俺の他に三人が住んでいる。クレアと、クレアの両親だ。俺の親は……ここにはいない。
「ただいまー」
俺は扉を開けて中に入る。まだ明け方、眠っているようで誰からも返事はない。と、思ったが違った。一番近くの部屋のドアがギィと音を発てて開く。
銀髪の華奢な身体つきの少女が顔を出す。ちなみに俺も銀髪。眠いようで、目をこすりながらだ。
「なんだクレア、起きてたのか」
「今起きたのよ」
「そうか、そりゃ悪かった」
「キッチンに作り置きがあるわ、お休み」
クレアは言葉遣いは冷たいが、根は優しい奴。俺は短く返事をして、キッチンに向かった。クレアは再び部屋 に戻って寝てしまったらしい。いやークレアも可愛いんだけどな、顔とか身体つきとかは。
眠い……けど飯のが大事だ。早く食って寝よう……。
俺もクレアの母さんが作っておいてくれた食事を喉に通し、部屋に戻って眠りについた。