OPTIMAL PERSONA その3
レンシーの差し出す手の上に小さな透明の石があった。
そこらへんに落ちている石ころとは違い丸く持ちやすい形をしている。
二「あ!ああ!」
レ「どうしました?」
二「カニが!干乾びてる!」
ヒュ「まぁ仕方ないよね」
涙目のニアスを横目にヒュドラはレンシーの手にある石を取り上げた。
成程、この石には微弱ながら魔力を感じる。
ヒュドラにかかれば石に魔法を封じ込め他人が使えるようには出来るのだが、面倒なのでやっていない。
それを売って儲けようとしているのは魔法使いとしては邪道なのだが、よく考えたものである。
実際は労力に見合わないので売り手はよっぽどの物好きなのだろう。
ヒュ「これ握って棍棒振ってみな」
レンシーは言われるがまま石を握り棍棒を振った。
レ「ほほう、そういうことなんですね。何やら棍棒が軽いですよ」
ヒュ「ご覧の通り便所石だ」
エモとニアスはピンとこなかったらしい、レンシーは「え?」という表情をするもボケだと分かりため息をついた。
レ「これは便利ですね。もうちょっと買っておくべきでした」
ヒュ「便利なのは確かだが、こんなもんだったら俺でも作れるぞ。面倒だからやらないだけだ」
レ「そうなんですか?今度作ってくださいよ。ってなんですかその手は」
ヒュドラはレンシーに何か(現金的な物)を要求しているようだった。
とりあえずレンシーは無視して干乾びたカニに水をかけた。
二「治るよね?」
レ「おそらく」
エ「この石に掛けられてる魔法ってこの槍に掛かってる魔法と同じやつ?」
ヒュ「ちょっと違うけど似たようなものだよ。エモの槍は軽くなる魔法かけてるだけだから」
エ「へぇ」
レ「ところでヒュドラたちの話はありますか?」
エモ達が得た情報は有名人がいるというだけだった。
それを聞いたレンシーは頷くとそう「簡単にはありませんよね」と言った。
レンシーの持っていた石はしばらくするとその力を失い透明だったものは濁りただの石になってしまった。
効果は短時間だったが貴重な体験が出来た気がした。
「世の中っていう奴は酷いもんでよ、親が偉ければ子も偉いっちゅーわけよ。
この子がな、愚か者だったらどうするよ?ええ?
世の中が壊れちゃうってもんでしょ。
俺はそれがどうしても納得できんさ。
まぁ子には罪がないし、持ち上げる周りの心底が見え見えだよなぁ。
ああ、どうにかならんもんかなぁ」
場所が変わっても人は変わらない。
いつかは同じように収斂していく。
人々は従う以外の術はなく、苛立ちを隠しながら生きていくしかない。
逆らえないのは世が悪いのか、人が悪いのか。
喧噪の中で様々な声が響くが、波や人の足音それに意味もない言葉で消されていく。
水を得た魚たちは息を吹き返し活気づく街は鮮やかで今夜はいつもより騒がしい。
太陽の下だけでなく、月の下でもその姿は異様に映っているのだろうか。
エモ達は夕食を済ませ数多ある宿を探す。
出来るだけ安く、居心地の良い所はないか、節約して悪い事なし。
レ「それにしてもニアスはよく食べますよね」
ヒュ「食わないよりはいいな、見ていて清々しい」
二「腹八分目。ネコも忘れずにたーんとお食べ」
エ「さっき食べてたじゃん。あんまり食べさせると太るよ」
ヒュ「痩せすぎてるよりはいいな、見ていてモコモコだし」
レ「ところで、さっき言ってた有名人ですか?その話題だけしか情報ないなんてどんな人なんでしょうね」
二「カニチャーハン作るのうまい人」
ヒュ「そうだといいね、まぁ俺たちには関係ないけどな」
ふとエモの視線の先には複数の人が忙しなく動いていた。
彼らは変な踊りを?を踊っていて人差し指を立て右に左にと素早く動かしている。
誰の目から見ても奇妙で、近寄らずに見ている若い娘たちは気味悪がっている。
まさか、宝石の影響を受けているのだろうか。
いや、そんなはずはない、あんな奇妙で気持ち悪い太った男たちが素早く踊れる訳がないのだ。
男たち「それそれそーれそれ」
掛け声を合わせ輪になっている。
それに負けまいとヒュドラも「そーれそれっ」と男たちと同じ動きをしていた。
エ「おいアホ、カス、クズ、何やってんだ!」
エモは疲れていたが、その声は天を貫くほどに響き、一瞬間周りが静まり返った。
男たちが振り向くと中心にいたであろう少女がこちらに気付き助けを求めるような目を向けた。
ヒュ「何すんだよ、折角いい気分で踊ってたのに!」
レ「まぁまぁ落ち着いて」
ヒュ「うるせーお前なんて横にしか歩けないくせに!」
カニ「!?」
ヒュ「失敬、お前は関係無かったな」
レ「エモも少し抑えてください」
エ「そんなに大きな声出してないけど」
そんなやり取りをしているどさくさに紛れ、少女は走り去って行った。
レンシーはその後ろ姿を見ていて、ふいに振り返った少女と目が合ったのだ。




