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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第七章
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Always Need Your Love(第七章完結)

忘れていた記憶を辿る。

幾千もの時間を過ごしたように思える。

ここで生まれここで人々を見てきた。

いくつもの綺麗な汚い言葉を刷り込まれ時には傷つけられた。

私は抵抗もせずそのまま成長していった。

太陽と雲そして雨、私の頭の上から覗き込んだ鳥たちが何回も飛び立ち落ちていく。

いつもと変わらぬ風景、これといって感情は湧き上がらなかった。

雨上がり、指から零れ落ちる滴が誰かにかかる。

「冷たい」と発した声が澄んだ空間に響く。

私の中に悪戯な感情が生まれ始めた。


いくつか時が過ぎ、変わりゆく世界が私にも訪れた。

身を焦がし腕の一部が無くなってしまった。

大丈夫、私は生きているよ、元気だよって。

でもそれを許さない人がいた。

少しして私は成すがままにされ身体を切り刻まれた。

ただどうしようもない悲しみが溢れ出し抑えきれず何かを飲み込んだ。



私は人間だったのだろうか。

いいえ、この地に根を張った一つの木だった。

私の想いは飲み込んだ欠片によって膨らみいつしか動き回る。

恨みや妬みなどの殺意が本当の想いを弾き飛ばし一人で彷徨いだす。

心を持った人形、まるで本物の人間の様に振舞い、姿はまるで悪魔のような・・・。



エモ(以下:エ)「ねぇこれ」


エモが指差すのは焦げた木の割れ目に深く埋め込まれた不思議な色をした欠片である。

埋め込まれたというには語弊があり、それは木と同化しているようだった。


ヒュドラ(以下:ヒュ)「確かにこれは探しているものだろうな」


ヒュドラはこれ以上何も無いと確信し近くにあった石で木を割ろうとした。


エ「それじゃ無理でしょ、ちょっと待ってて」


エモが槍を持ってきて切先で突っつく。



割れた身体は数えきれない程に、ボロボロと剥がれ落ちる焦げた皮の中から輝く宝石の欠片を取り出された。

私は思い出す、死に枯れゆく人々の姿が累々と重なり合い寄りかかる。

繰り返す波のよう歓喜と悲鳴が押し寄せている中で動くことのない手足をどうにかしようとしていた。

私なら慈しみ愛せるだろうと。

種族は違えど無垢で、願いが叶った時にはいつしか真逆の殺意が生まれてしまったのだ。


あの頃人々に愛されていた私はいない。

もう誰も私の事など気にしなくなるだろう、誰にも知られる事無く消えていく。

さようなら、そしてごめんなさい。



エ「やっと取れた」


エモは嬉しそうに欠片を掲げた。

散らばった木片はいつの間にか風に飛ばされ跡形もなくなっいたが、誰も気づかないところで地面の中には小さな種から新たな息吹が生まれようとしていた。

今後どうなるかは分からないが再び目覚める事を願い静かに眠っている。


ヒュ「片付いたか、一体どういうことだったんだ?」


エ「分からない」


ヒュ「戻るか」


エモ達はレンシーの元へ戻り欠片を見せる。


レンシー(以下:レ)「欠片ですか?うーん。木に埋まっていたと?それで悪魔の正体は木だったってことですか?」


植物は人が知らない能力を持っていると言われる、音楽を聞かせれば育ちが良くなり果実をより甘くすることもあるようだ。

木が意志を持ち宝石を取り込んだことにより、悪魔の姿を持ったとレンシーは推測した。

到底理解できない事だ、しかし結果は目の前にあった。


ヒュ「なんだか曖昧過ぎるな。レンシーの偽物もこの宝石のせいなのか?」


エ「たぶんそう。この欠片今までのよりちょっと大きいから余計に悪さしたんじゃない?」


確かに先程手に入れた欠片は今までのより倍以上も大きい。

大きくなるにつれてその力も大きくなるようだ。


ブラウン島の司祭(以下:ブラ)「何やら解決したようですね、まだ夜明けまで時間がありますから一度戻って休みましょう」


ヒュ「そうだな、ところでニアスは?」


ニアスはネコの横でしゃがみ込んでいた。

すっかり忘れていたがカニを見ているようだ。


レ「リザレクションは成功したんですがね、ちょっと副作用が」


エ「あら、おいしそう」


カニは赤く茹で上がった状態をしていたが動き回っている。

生きているが真っ赤で元には戻りそうにない。


二「なんかさ・・・強くなった気がするよね」


ヒュ「・・・う、うん・・・」




次の日、教会で暫しの休息をとった後、ブラウン島の司祭との話し合いの結果、犠牲になった男は状況証拠によりレンシーが殺していないと判断した。

エモ達はホッとしたが、死んでしまった人はもう戻ってくることはなく複雑な気持ちは続いている。

せめて祈りだけは続けようとレンシーは思った。


レ「実際に私が手を下したも同然です」


自らを責め続けるレンシーにブラウン島の司祭は言う、


ブラ「後悔よりも先を見続けましょう、きっとそれが彼への弔いとなります」


レ「・・・そうですね」


ヒュ「司祭さん今回は助かったよ、レンシーが変になった時はダメかと思ったよ。滅多にいないよこんな有能な司祭は」


ブラ「お役にたってて光栄です。これが私の役目ですから」


レ「耳が痛い」


エモは話をぶった切り昨夜手に入れた宝石の欠片をブラウン島の司祭に見せる。


エ「ねぇ、今私たちはこれを探してるんだけど、どこかで見た事ない?」


ブラ「これは何です?」


簡単に宝石について説明する、前に聞き込みに来た時は人が襲われていることで解決に躍起になっていたので初めて聞かせる話だった。

しかしブラウン島の司祭は宝石については何も知らなかった。


ヒュ「今回ばかりは知らなくてもこうして手に入れられたんだからいいかな。また地道にいこうぜ」


エ「まぁいいか」


ブラ「お役にたてず申し訳ないです。あ、今回の事件のお礼がまだでしたね、ありがとうございました」


ヒュ「よし、行くか、ってニアスはまだ寝てるのかよ」


レンシーからニアスを守る為再び大きくなったネコの上で眠っていた。

その上にウサギとカニもいる、なんだこれ移動動物園かな?

自由過ぎるのも考え物だがこうして欠片を手に入れ次へ行けるのだからそれもいいかもしれない。


レ「本当にありがとうございました。私から本部へ活躍を伝えておきますね」


エ「ん?レンシーは偉いの?」


ヒュ「偉くは無いぞ、伝えてもいいがレンシーの無様な武勇伝も一緒に話さないといけないぞ」


レ「それは困りものです」


ブラ「お気になさらずに」


短いが楽しい時間が過ぎ、次の町へ向け出発しなければいけない。

ずっとこのままこのブラウン島に住み着きたい気持ちが大きい。

海に囲まれ飯が美味い、それだけで何も必要ないじゃないか。

しかしエモ達にはまだやることが残っていた。


ヒュ「また船に乗るけど、その前に少し聞き込みしておこうか」


レ「そうですね、戻るにはお金と時間がかかりますしね」


二「・・・ん・・・?お腹へった」


ヒュ「口を開けば腹減ったか、まぁいいか、俺も少し減ってるからあの店いくか」


その店は初日に降り立った時に行った店だった。

各々好きな物を注文した。


二「カニチャーハン」


ヒュ「ニアスよそれはどうかと思うぞ」


店のオヤジ「うちのカニチャーハンはここいらじゃ一番うまいぞ」


ヒュ「そういう訳ではなく」


レ「別の物にしましょう今回は、カニ好きなのは分かりますけどね」


何を考えているか分からないニアスにはラーメンをすすらせた。


二「ズルズル」


店を出、情報を集めるも成果なし、船に乗り来た道を戻るため歩き出す。

無駄と思える旅路も無駄ではなく、小さな出来事から大きな成果を生むことがある。

全てが複雑に絡み合い一つの結果を生み出す。

正しいことか間違いなことか誰にも分からない。


エ「おっと、何かにつまずいた!」


ヒュ「不安だな」


エ「何だこれ、変な形だな」


エモは木屑を拾い上げた。

それは「大」の字に見える木だったが、何故かエモはそれが気になり懐へ入れた。


ヒュ「そんなもん捨てちゃえよ、邪魔になるだろ」


エ「何か持って行ってって語りかけるんだよね、なんでだろ」


レ「燃やしましょう、いい事ありませんよ」


ロウソクを取り出そうとしたが、公衆の場であるヒュドラが止めた。


ヒュ「そんなことよりもうすぐ出発だそうだ、船内へ行こう」


二「うい」



近くて遠い場所で誰かが静かに微笑んだように、背中に温かい潮風を受けた。

エモは振り返ると誰もいない港へ手をあげた。


エ「行ってきます」


家を出て旅立った時にも発した言葉、あの時は不安が混ざっていたが今は胸が熱くなっている。




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