SACRIFICE その5
状況を打破する術は見つかったが、行使する方法は見つからなかった。
ブラウン島の司祭がいうレストレーションは高位の魔法であり、彼もまたレンシー同様唱える事は出来ない。
だが動揺していたレンシーはその一言で少しは軽減できるであろうリカバリーと展開し始めた。
レンシーを中心に半径十数メートルくらいの傘を差したようなバリアが広がる。
レ「さぁこっちです」
レンシーの声にエモは反応しないので近くまで寄るが虫を払い落すような行動を繰り返していた。
再び声をかけると我に返って振り向いた。
エ「だ、大丈夫だよ」
ブラウン島の司祭も前線に出ようとするがニアスのカニを放ってはおけない、いや放っておけるんじゃないか?よくよく考えてみたらカニだし?
しかしレストレーションを覚えてはいないので前線へ出て行っても足手まといになるだけだ、まして戦いの場には今まで一度も遭遇したことがないのだから。
だが思い出せ、学徒時代に教わった事を。
ただの弱い魔法でもいくつか重なりあえば強力な魔法になるのだということを。
この平和な時代に活躍の場など無いと頭の片隅に追いやっていた自分を呪いたいものだ。
私もリカバリーを展開し、レンシーと合わさればレストレーションのかわりになるかもしれない。
ブラ「カニは後回しです、行ってきます」
その姿はニアスには神々しく映った。
二「あとで治してね!!」
任せろといわんばかりに親指を立てた。
ブラ「リカバリー!」
ブラウン島の司祭のリカバリーはレンシーのそれよりも小さかったがエモ達を正気に戻すには十分だった。
レ「リカバリーを合わせるとは考えましたね」
ブラ「私だって役に立ちたいですからね、それにいざという時に出来なくて申し訳ありません」
レンシーは今の今までリカバリーの存在を忘れていた。
それを思い出させてくれたブラウン島の司祭に心で感謝している。
この複合魔法の範囲内のみ効果を発揮するが外に出れば悪魔の幻影範囲である。
この範囲内で戦いに挑まなけれればいけないのはとても不利な状態で、もし外に出れば数秒で飲み込まれてしまうだろう。
ヒュ「助かったが、どうする?このままずっと維持できないだろ」
ヒュドラの言うとおり十数分で体力の限界にきてしまう。
それまでに決着をつけなければいけないのだ。
相手の姿は見えない、これ以上どうすればいいのだろうか。
不意をつき鞭が飛んでくる、何とかかわしているが集中力も幻影の影響で長くは持たない。
ここは一気にけりをつけるべきだろう。
ヒュ「埒が明かない、雷落としておくか?」
悪魔は近くまで来ている、今なら当たるかもしれない。
だが一撃で仕留めたい、ヒュドラの魔法も有限ではないのだ。
ヒュ「エモ、引きつけられるか?」
もう一度エモの槍に鞭を絡ませ・・・って槍はもう雷を落とす避雷針として地面に刺さっている。
エモは両手ががら空きであった。
レ「私の棍棒使ってください」
エ「分かった、やってみる」
ヒュ「棍棒に鞭を絡ませたら合図するから手を離せよ、お前まで感電しちゃうからな」
レ「その必要はありませんよ、握る部分には絶縁体のゴムが巻いてありますから」
感電というリスクは多大である。
絶縁体を巻いたとしても本当に感電しないのかは疑わしいものだ。
大丈夫だと思うが安全の為に手を放すべきだろう、しかし足元には海水が撒かれている絶縁体の靴ははたして役立つのだろうか。
辺りは暗く、雲も良い状態で覆っている。
雷はいつでも落とせそうだ。
ヒュ「少し下がるぞ。エモはそこだ、そう、リカバリー範囲から外れるが安心しろ。お前なら大丈夫だ」
レ「期待してますよ」
そう言われて悪い気はしない、自らに危険が及ぼうとしているが、やってやるぞと意気込むエモだった




