SACRIFICE その4
ヒュ「一旦引け!」
その言葉が届く前にニアスは後方へ倒れたいた。
何が起こったか分からない。
咄嗟にネコが受け止めたが気を失ってしまった。
エ「え?何?」
レ「気を付けてください嫌な感じがします」
エモは目の前にいる悪魔に切先を向けるとにじり寄っていく。
ヒュドラはブラウン島の司祭に後方へ行きニアスの手当てを指示するとエモの加勢に入る。
血は滾る。
目を閉じても居場所が分かる。
何処へ逃げても手が届く場所にいる、逃げる場所など無いのだ。
泣き叫べ震えろ、私の前で惨めに散っていくがいい。
気が付けばどこにもいない。
辺りを見回す、悪魔の姿は闇の中に紛れ込んでしまったようだ。
逃げたわけではないだろう、今のうちに襲ってくる時の準備をしてしまおう。
エモの槍を地面に突き刺し、ヒュドラのサンダー(雷の魔法)の避雷針にする。
以前(第三章Beauty Blood Monstarその4)にも使った事があるが、今回は定まらない相手に使うための下準備だ。
そして槍の辺りに水を引き触れさせ感電させるというものだ。
結構無理があるが今回の為耐電の靴を用意した。
水は海水を使えばいい、風を起こし巻き上げてしまえば簡単な事だ。
だがその策略を許してくれるほど隙はあるだろうか。
エモの槍はそれほど長くはないし周りにある木の方が雷は落ちやすい。
そこはヒュドラの力量次第。
ヒュ「よし、いける」
辺りは雨が降った程度の水浸しになった。
相手の靴が耐電だったら作戦は無かったことになるのはご存じの通り。
それはともかく水に触れるのを待つだけだ。
しばらくして薄らとその輪郭が見えてきた時、目を疑う光景が襲いくる。
無数の大小様々な虫が辺りから押し寄せてきたのだ。
エ「え?何これ」
普通なら居ないはずの大量の虫、不快極まりない。
少しくらいならどうってことないが、よりにもよってその姿はゴキブリそのものだった。
エモの一番嫌いな虫、カサカサと音を立て足元まで来ている。
ヒュドラの目にはその虫がハエに見えていた。
死肉にたかるとても小さく耳障りな。
エ「うわぁ、や、やだぁ・・・」
エモは戦意消失寸前だった。
ヒュドラは打開する為に前方にファイアの魔法を唱えるもハエを素通りし効果は無かった。
それを見ていたレンシーはこれが幻影であると気付いた。
レ「気を確かに幻影に惑わされてはいけません」
ちなみに、幻影によりエモはゴキブリ、ヒュドラはハエ、レンシーの目にはヒルに見えていた。
ヒュ「幻影?そうだったか。だがそれが分かった所でどうすることもできない」
頭で理解するも一度術中にかかってしまうと容易には抜け出せない。
そこでレンシーは聖なる力をもつ司祭の魔法の一つである「愛の棍棒」を使おうと提案するが却下された。
殴って正気に戻すという魔法と言えるのか分からない力技なので味方には使うべきではない魔法だ。
ヒュ「他にはないか?早くしてくれ」
ニアスを解放していたブラウン島の司祭は大声をあげ
ブラ「レストレーションです!」
回復魔法の一つであるレストレーションは体力の回復や傷の修復の魔法とは違い、精神的な影響を通常に戻す事ができる魔法である。
しかしながらそれらを使用する頻度があまりに低いため、普通の司祭は下位互換であるリカバリーを覚える事が一般的である。
レンシーももれずその中の一人であった為、名前は聞いたことがある程度の知識しか持っていなかった。




