SHADOW OF LOVE その4
ヒュドラの叫び声は宿屋中響いた。
まさか、襲われた?
エ「ニアス!大丈夫か?」
近づいて確認するが目を覚ます気配はない。
だが、まだ息はあるようだ。
ニアス(以下:二)「すやぁ・・・」
ヒュ「・・・おい起きろ!起きてくれ!」
肩をゆすり声をかけ続ける。
しばらくするとううんと唸り声をあげ、とニアスはゆっくり目を開けた。
二「あれ?ヒュドラ帰ってたんだ、どうだった?」
ヒュ「どうだったってお前、その血はどうしたんだよ」
二「血?なにそれ。って、なんじゃこりゃあああああ」
エ「うわぁぁぁぁぁあ」
ニアスは血の付いた自らの手を見て驚愕する。
顔に触れ血で固まった皮膚がうまく伸びず強張った表情をする。
エ「怪我はないの?」
二「怪我は・・・ないよ・・・へっへっへっくち」
くしゃみをしたニアスを見て不安を覚えるがとりあえず一安心するエモとヒュドラ。
何故ニアスが血まみれなのかは不明であった。
ヒュ「何があったんだよお前は」
二「うーむ、ちょっと待っててね考えるから」
考え出すニアスと血をふき取るエモ、ヒュドラは扉の外で他の宿泊客に軽く謝罪をしていた。
二「整いました」
ヒュ「おう、早く話せ」
ニアスはウサギを抱えながらしゃべり始めた。
二「休む前にこのウサちゃんの匂いをかいでたんよ。そうしたら落ち着くなーって。でも私ウサギアレルギーなの知ってるでしょ?それでくしゃみと鼻水止まらなくなっちゃって」
ヒュ「ウサギアレルギーなんて初めて聞いたぞ」
エモも頷いた。
おかしいなと首をかしげるニアスだったが、そのまま続けた。
二「ずっと洟をかんでたら鼻血が出ちゃって、止める為に鼻に紙突っ込んだ疲れからか頭がボーっとしてきちゃって寝ちゃったんよ。よくあるよね」
エ「あるある」
二「たぶんその紙が取れて血が流れてこんな参事になってるんだと思うよ。名推理だねこりゃ」
ヒュ「まぁいいけどさ、とりあえずこれまでの事を話しておくよ」
人騒がせなニアスの話は置いといて、ヒュドラはレンシーが変態になって鞭を持った女が現れたというような話をした。
大体説明したがよく分からない事が多いと付け加えた。
二「ニャンちゃんは役立った?」
ヒュ「もちろん」
エ「今日は休んで明日対策たてようと思うんだ、ニアスも今日は大変だったでしょ?」
二「そうでもないよ」
ヒュ「早く寝て朝一で行動するか。それじゃおやすみ」
ヒュドラはそそくさとベッドへ入った。
何が正しいのか誰も知ることは出来ない、ただ罪のない人が被害を受ける事はあってはならないのだ。
ただそれだけが悔しくて、レンシーもきっと落ち込んでいる、自ら死を選ぶ程だろう。
あの時のただ突っ立っていただけの何の意味もないと思われる行動でもサインが出ている可能性がある。
受け取り方を知らなかった、どうすることもできなかった、それは知らない事が罪であると証明する。
不意に残された方はどうにかしようと苦心する。
どうやっても覆そうにない事でも希望を捨てる事は見捨てる事になる。
過ぎた時間は必ず過去になり、未来はまだ見ることが出来ない。
ずっと変わる事のない事実だが、未来だけは変えられる可能性を持っている。
捻じ曲げることではない、信じれば報われる時がくるかもしれない。
誰も信じてくれなければ心が折れる、ヒュドラとエモはレンシーを信じている、ニアスはどうか知らないが。
夜の優しい光、繰り返すかくれんぼ、月はいつまで空で照らしてくれるのだろう。




