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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第七章
82/128

SHADOW OF LOVE その1

エモが見たのはレンシー本人だった。

手にはロウソクとロープ、眼鏡は掛けていないが様子がおかしい。


エ「レンシー!」


声には反応せずゆっくりとこちらへ歩いてくる。


震える男「ひぃ~助けてくれぇ~」


この状況だとヒュドラがいればどうにか対処できるが、今はエモ一人だ、ネコもいた。

ネコは今にも飛びかかりそうで、更に唸り声をあげている。

まさか、これが噂の悪魔の仕業なのだろうか。

普段のレンシーはロウソクやロープ等は鞄の中に仕舞っているはずだし、同時に出したらただの変態だろう。

滴り落ちる溶けた蝋は足下に積み重なる。

これがレンシー本当の姿なのだろうか、でもいつも紳士的な振舞をしているから想像がつかない、たとえばこの対峙している相手がヒュドラだったら迷わず納得できるのだが。

エモの頭の中では色々な妄想が渦巻き混乱しているような状態になっている。


エ「レンシー、私だよ、宝石探索隊の姫だよ?」


レ「・・・」


冗談は通じないようだ。

ヒュドラなら「何を言ってるんだアホが」というだろう、レンシーも何かしら反応するだろうが無言はないだろう。


震える男「あの人は何かに魅入られているんじゃないでしょうか?何を言っても反応しませんし、このままでは私達まで危険じゃないでしょうか?」


確かにその通りだ。

しかし震える男よ、冷静に分析できる頭があるならさっさと逃げればいいものを。


エ「ここは私に任せて、教会へ行ってください」


震える男「わ、分かりました」


震える男はもはや震えてはいなかったが、以後も震える男と表記する。

男は走り出すが、すぐさま倒れ込んでしまった。


レ「・・・」


変態レンシーがやったのか?いや、目の前にはまだ変態レンシーがいるが、動いた形跡はない。

何故震える男は倒れたのだろうか、何故かその時エモは震える女になっていた。

レンシーを探していたが、変態レンシーには出会いたくなくて震えているのだ、たぶん。

ネコは更に唸り声をあげる。



闇より深い影が薄暗い街灯の下で蠢いている。

目を凝らしても人の姿は見えない、だが確実に何かいるのだ。

エモは槍を構える。

忘れている人もいるだろうが、エモは槍を常時持っています。

槍の名手とまでは言わないまでも得意である。

槍にはヒュドラの魔法が掛かっていて一般的に使われる槍よりも軽い。

レンシーに警戒すればいいのか、いつ現れるか知れない見えない敵を待てばいいのか分からない。

だがレンシーは目を閉じている、第三の目で私の下着を見透かしているだろう、なんて変態なんだ!

そう思ったが、赤い何かが目の前に現れる。

咄嗟に槍でガードするが、槍に絡みつき持っていかれそうになった。


エ「あっ、ぐぬぬ」


炎を帯びた鞭、伸びたその先には薄らと輪郭が浮かび上がり、影は徐々に姿を現した。

口元は艶めかしく、月明かりで更に魅了する輝きを帯びている。

露わになる胸元と長い腕とその手に持つ鞭。

ハイヒールを履いた容姿端麗な女性がいる。


エ「え?鏡?」


そんはなずはない、決して。

その姿は絵本で見るような悪魔とは違い、男なら誰でも騙されるような容姿だった。

簡単に言うと悪魔的な魅力を持っていた。


エ「お前がやったのか!」


悪魔っぽい女(以後:悪)「・・・」


エ「何かしゃべれよ!」


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