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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第一章
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出発進行 その4

客「最近夜な夜な不気味な声みたいな、なんていうか叫び声みたいのが聞こえてくるんよ」


ほらそこだよ、と指をさした。

曇った窓から見える大きな建物、この町のシンボル的な工場だった。

何の工場なのだろうか。


客「それによ、物々しいんだぜ、前は門番なんていなかったんだ、何か隠しているっぽいしさ」


聞けば聞くほど怪しくなる、これは調べてみるしかない。

礼を言うとそんなことより一緒に飲もうぜと言ってきた。

丁重にお断りし作戦を立てる。

酒場の中から窓越しに工場を眺めていると雨が降ってきた。

少し憂鬱そうで疲れた顔を見せるヒュドラ。


レ「どうしました?」


ヒュ「あ、ああ、ちょっと昔の事を思い出してた」


レ「らしくないですね、でもたまには気を抜くことも必要でしょう」


エ「まだ三日目だよ。気を抜くなんて早すぎない?」


ヒュ「それもそうだな」


レ「早速ですが工場には明日行ってみましょうか」


エ「今から行こう」


レ「今からですか?疲れてませんか?」


まだ体力は残っている、ヒュドラもレンシーも。

しかしもう夕方近くになってしまっている。

ここは休んで明日仕切りなおした方が良いと思っているレンシー。


エ「事件は朝起こっているんじゃない、夜起こっているんです」


ヒュ「事件とは限らないけど、言うとおりだ、これから行こう」


思い立ったが吉日、全ては動き出さなければ何も始まらない。

待っているよりこちらから行くのみ。

さぁ気合を入れろとエモに背中を叩かれたヒュドラはゆっくり立ち上がる。

先程から降り出した雨はゆっくりと地面を濡らしていった。

まだ本降りにはなっていないので小走りなり工場入口へ向かった。



門番「ここから先は関係者以外立ち入り禁止だから帰りなさい」


ヒュ「ここは何の工場ですか?」


門番「加工品だ、って君たちは知らないのか?モスグリーン町の名産品を」


エ「私たちは旅人なもんで」


門番「そうか、まぁ俺も最近知ったばかりなんだがな。はっはっは」


レ「それでどんなものを作ってるんですか?」


門番「ちょっと待てよ、パンフレットある、ほらよ」


ヒュ「なになに・・・ほうほう」


手渡されたパンフレットには新興宗教の胡散臭い内容が書かれていた。


レ「これは酷いですね、どうです、改宗しませんか?」


門番はしまったという顔をして別の冊子を手渡した。

こっちには主に卵や肉、それらを使った加工品などが掲載されていた。

つまりこの工場は食品工場ということだ。


門番「今ならこの壺が50万のところ10万になります!」


ヒュ「おい、それ植木鉢だぞ、さっさと変な宗教やめて改宗しろ、おいレンシー」


無言で棍棒を持つレンシーに怯むことのない門番は腰につけていた剣の柄を握った。

ここでやってもいいんだぜと言わんばかりの眼をしている。狂っているというのはこういうことだ。

きっと頭のおかしくなった奴はこいつだ!宝石もこいつが持っているに違いない。


門番「おいおい、冗談だよ。この宗教のパンフレットここで働く奴から貰ってな、面白いからみんなに見せびらかしてるんだよ。

馬鹿げているだろ、この教祖、ハゲだぜ、ぶはっ」


緊張した空気は一気に解けた。だが、この門番も近い将来ハゲになりそうな毛質なことにエモは気づいてしまった。

それはそれでまたの機会に。


門番「それで、あんたら何か用なのか?」


レ「噂でこの工場から何か悲鳴みたいな声がすると聞きまして」


門番は心当たりがあるように頷き語り出した。

これまでこの工場には門番はいなかったが、最近になって夜間に門番を置くようになった。

偉い人の命令らしいが、それほど人も通らないこの場所に何故門番をと不思議だったらしい。

この門番は不景気の中やっとのことで見つけた仕事だったので何も気にはしなかったが、三日に一回くらいそれは見も毛のよだつ程の叫び声を聞いているという。

ただの旅人一行のエモ達とこんなに長く語っているのは誰もいなくて暇だったからとのこと。

工場の中に入りたいなら明日朝来れば見学できるらしい。

久しぶりに会話して楽しかったよと最後に言っていた。



エ「良い人だったね」


ヒュ「そうか?柄握った時はやらなければいけないかと考えたよ」


レ「変な宗教に毒されていなくて良かったです。教会にこの事例を持ち帰って対処していただきましょう」


ヒュ「そうか?」



エモの腹の虫が鳴ったので何か食べられる店を探す。

旅が始まり早三日、飯ばっかり食ってると思いきや、そうではなかった。

飯も大事だが目標を忘れることなかれ宝石の欠片を全部集める事。

今夜も大事な話し合いが始まるのです。

まずは今晩どこで休むかということから。

なぜならモスグリーン町は宿屋がない。

雨が降っているから野宿は避けたい。

それなら持っている権力を振りかざせばいいだけだ。

あとはよろしく頼んだぞレンシーと二人は言うが、教会は宿屋じゃありませんと答える。

この町にも教会はあった。頼めば泊めてくれるだろう。

しかし、旅も早々教会に頼ることはしたくない。

他の司祭たちが頑張っている中で何をのうのうと教会で寝泊まりなんて申し訳が立たない。

でも私達関係ないしと二人は詰め寄る。


ヒュ「お願いしますレンシー様、神様」


都合のいい時だけ媚びへつらう、ヒュドラの悪い癖です。

しかしどうしたものか、この長椅子ってやつは固いが寝心地がいいぞ、むにゃむにゃ。

寝入ってしまったレンシーを見つめるエモとヒュドラ。


エ「やっぱり屋根があると安心するね」


ヒュ「嫌々ながらも引っ張り出したかいがあったよ」


二人に唆されたレンシーはあれよあれよと教会の方へ向かってしまった。

後に引こうにも何も考えて無かったので仕方なく教会でお世話になることに。

降っていた雨はさらに強く吹き付けていた。

たまに聞こえる変な反射音、それに気づきクスクス笑う。

まだまだ遠足気分は抜けない。

そして気がつけば眠りの中に。

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