空蝉 その1
ホワイトローズの町から途中野宿をしエモ達は小さな船着き場に到着した。
ここから先は船で進み、孤島の町へと行くことにした。
宝石の欠片が展示されているという美術館へは遠回りになってしまうがレンシーの提案だった。
美術館へ急ぐのが好ましいが、急いで向かう必要はないだろう、それだったらここから近場の町へ行ってみるのも一つの道だと。
確かに美術館へ行くしか今のところ無いエモ達であるが、先に近い島へ行って何かしら情報でもあれば旅の終焉へとより近づけるのである。
レンシー(以下:レ)「実は私の調べた情報によると食べ物が美味しいらしいんです」
エモ(以下:エ)「本当?楽しみだな」
真面目に一本道を行くでなく、何かしらの娯楽が無ければ旅が辛いものとなるだろう。
ヒュドラは道草が好きだが、エモは直進していく性格なので周りがフォローしないとすぐに潰れてしまう。
因みにニアスは気のまま好き勝手に、レンシーは真面目だが周りを気にして行動するので逐一考えている。
ヒュドラ(以下:ヒュ)「船はあるかな?」
これから行こうとしている孤島の町はちょっとした娯楽施設もあるリゾート地である。
孤島にあるが大きく、人も沢山いる。
その為行き来する船は沢山あった。
ニアス(以下:ニ)「無ければ飛んでいけばいいじゃない」
ヒュ「お前までそういうか?」
ニアスはヒュドラをなんでもできる魔法使いという認識を持っている。
実際には大概な魔法使いなのだが。
(エモがヒュドラに言った飛べについては「第二章 宝石の真偽 その2」を参照を)
レ「船はもうすぐ出発するようです。急ぎましょう」
船着き場にいた船員は急げと手を振った。
ニ「あっ!カニがいる!」
ヒュ「放っておけ、もう出るからな急げよ」
ニ「カニ!捕まえる!」
エモ(以下:エ)「多分行く先にもカニいるからそこで捕まえようよ」
レ「早く行きましょう」
ニ「そうする」
太陽が沈まない世界がもたらす狂った日常は徐々に人々の生活を脅かし、或る者は暗闇を求め家に引きこもり、或る者は抵抗しようと足掻き叫んでは力なく息絶える。
周りにいる人たちもこの現実からは目を背けるが、それが陥落するのは時間の問題だった。
しかしまだ一部、されど一部、成す術もない人々はさ迷い逃げ惑うばかりだった。
自体は一刻を争うのだが未だ打開策は見つかっていない。
エモ達は旅を続けているが、実際に太陽の沈まない地域は見ていない。
そればかりか情報だけが世間を騒がし、本当の事なのかさえ分からない人々も多い。
確認することが出来ない人たちは何事もなかったかのように今を生きている。
船に乗って数時間、島にはまだ着かない。
ニアスとエモは眠りヒュドラとレンシーは船内のラウンジに居た。
酒を酌み交わしこれまで旅を労う。
レ「ヒュドラには色々聞きたいこともありますが、どう思いますかこの状況を」
ヒュ「子連れ旅みたいだな」
レ「そういう意味じゃありませんが、信心深いヒュドラがよくここまでついてきているなと。目で見たものしか信じないじゃないですか」
ヒュ「確かにそうだけど。エモを一人で旅に出すのは危険だと思ったんだよ。それに宝石を探すと言った。俺が出ない訳にはいかない」
レ「私には何も話してくれませんが、宝石について何か知ってるんですか?」
ヒュ「俺もあまり知らないけどな。いや本当、エモを一人には出来ないだろ?」
レ「そうですけど」
ヒュ「半信半疑なんだよ今も、本天変地異なんて起こってるのかって。でもお前が旅に出るっていうから本当なんだろうな」
レ「私も見たわけじゃないですから」
他愛もない話はいつまでも続いた。
レンシーはもうちょっと深いヒュドラの思っている事を聞きだしたかったがうまくはぐらかされてしまった。
しかしヒュドラは何か隠している事がある、長い付き合いだ分かる。
言いたくはないのだろう、尻尾は隠れて見つける事はできなかった。




