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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第五章
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白く染まれ その4

エモ(以下:エ)「ところがどっこい」


ヒュドラが押さえていたがエモは隙を見て喋り出した。

やれやれといった表情のレンシーは改めて説明を始めた。


レンシー(以下:レ)「まず、私は上司から麻薬取引をするよう言われています。それに関係のある人物の名前も言っていますのでその方たちを問い詰めれば分かる事でしょう」


上司「でたらめな事を」


レ「でたらめではありません。ですよねシンガ?」


シンガ(以下:シ)「ええ、そう仰ってました」


上司「司教、この者たちの言うことを信じるんですか?嘘八百並べて私を陥れようとしているのです!」


上司(上級司祭)は少々狼狽えながら声を荒げた。

目線はさ迷いながらも司教の顔を見ている。


司教「そうですね、あなた達は上司を糾弾しえる材料をもっているのかね?」


上司「持ってるはずがない。全てが嘘なのだからね」


上司はニヤリと笑う。

その不敵ともいえる笑みはこの後凍りつくことになる。


レ「これに見覚えは有りませんか?」


上司「それは?な、無いな、見た事など無い」


レンシーの出した物はシンガの持っていた麻薬が入っていた袋である。

上司がそれを見た時動揺したのだ。


司教「それは何ですか?」


レ「これには麻薬が入ってます。彼から預かりました」


シンガはレンシーの顔を見て頷く。


シ「これは間違いなく上司から売りさばけと渡されたものです」


上司「なっ、シンガ、お前・・・知らん、私はそんなものなど知らん」


レ「白を切るつもりか上司、罪を認めろ」


司教「どうなのだね上司?」


上司「司教まで私を疑っているんですか?でっち上げです。私は何も知らない」


司教「そうですか、聖職者であるものは常に正直でなければいけないものです。これを聞いてもまだ知らないと言えますか?」


上司「え?」


司教の言葉の後にヒュドラが一歩前に出て魔法を唱える。

先程交されたレンシーと上司との会話のやり取りが目の前で再現される。



レンシー「今日は良いお芋が買えました。エモ喜びますかね。ヒュドラにはこの唐辛子を買っておきましょう」



ヒュ「あ、間違えた」


レ「ちょ、ちょっとヒュドラこれはなんですか?」


ヒュ「いやぁ、自由行動の時に何やってんのかなって。興味あるじゃん」


レ「それはありますけども・・・って酷いじゃないですか!」


ヒュ「仲間思いなんだなって感動しちゃったよ」


レ「そんなことより真面目にやってください。今大事な場面なんですから!あ・・・場が白けてますね・・・」


司教「さっさとやってくれたまへ」


ヒュ「はい・・・」


調子に乗って怒られたヒュドラ。

少しくらいいいじゃないかと思ったのだ。


レ「二度目は無いからな」


今度はちゃんとやろうと思い直したヒュドラだった。

魔法で再生された言葉、そこには麻薬取引をさせようとする上司の言葉があった。


上司「くっ・・・」


司教「正直貴方には失望しました」


上司「司教これは何かの間違いです!」


叫べど虚しく響く言葉。

この空間には最早誰も味方などいなかった。

抗う事はその肥えている巨体のせいで出来ず、ただブツブツと現実逃避をするように口を動かしている。


ヒュ「おい、さっさと捕まえておこうぜ。逃げられると厄介だからな」


レ「ええ、そうですね。司教お願いします」


司教が手をあげると入口からずらずらと警備隊がやってきた。

手際よく上司を椅子から引き離し連れて行った。


レ「あとは関係者を捕まえるだけですね。証拠隠滅される前に一気にやってしまいましょう」


司教「そうだな、ありがとうレンシー。麻薬取り引きについては噂は有ったのだが誰が関係しているかが分からなかったんだよ」


レ「今回ばかりはエモとヒュドラのおかげですね」


ヒュ「お前が司祭で良かったぜ。こうも簡単にいくとは思って無かったよ」


エモは上司に一発殴らないと気が済まないような顔をしていたが、それもやっと落ち着いてきた。


司教「少し話したいことがあるから皆で私の部屋まで来なさい」


レ「ええ」


司教が部屋から出ていこうとするが、ヒュドラがそれを止めた。


ヒュ「そうそう司教、すっかり忘れてたけど」


司教「なんだね?」


ヒュ「シンガも連れてってよ。麻薬売買の主犯格だぜ」


不意を突かれたシンガ。

え?俺?ってな顔をした。


レ「ああ、すっかり忘れてましたよ。お疲れ様ですシンガ」


シ「え?ど、どういうことです?」


ヒュ「まだ分からないか?反省房行きってことだよ」


シ「そんな、約束が、約束が違う!」


レ「理不尽だと思いますか?騙されたとでも?」


言い返せないシンガだった。

協力すれば麻薬売買については見逃すと言っていたレンシーだったのだが。


レ「私達にしたことは見逃しますけど他の人達に売ったことは見逃せるわけありませんよ」



真っ白な心に一つの暗闇が差し込むとき、白かったものは次第に黒く汚れていく。

どんなに拭おうとも一度ついてしまったら最後、もう二度と白い心に戻ることはない。

どうしたら元通りになるだろうと考える、あの時あの場所で別の選択肢を選んでいたのならと。

分かっていながら変える事が出来ないのは楽だからで、誰かの介入が無ければそう簡単にはいかない。

犯してしまった罪は消える事がなく、忘れていても事あるごとに思い出される。

無かったことにはできず、真っ白であった日を夢見て後悔するのだ。



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