晴れた終わり その2
魔法使いというのは一般的に人間とはかけ離れた能力を持つ人が多い。
それは大体が生まれ持ったものであり、後からなろうとしても困難を極める。
ヒュドラの場合は生まれ持ったものではなく努力の賜物なのだ。
それだけの才能があった訳ではなく、時間をかけて今の地位に至っている。
誰からも信頼されるような魔法使い、それは望んだものではなく本人は煙たがっている。
さて、ヒュドラが知ることが出来た麻薬、見ただけで判別するのは一般人にはほぼ不可能だ。
魔法使いであっても難しいのだが、それらの物質には目には見えない色がついている。
精神を集中させそれが危険なものや安全なものを区別する事を可能にしている。
例えば安全なものなら青色に見え、危険なものなら赤く見える。
ヒュドラには麻薬は赤に近い色に見えているようで、危険を及ぼすものとして認識している。
ヒュ「成程ね、で、いくら?」
「結構な代物でして、通常の二倍といったところでしょう」
通常価格ってどれくらいなんだろうか。
そういえば俺お金持ってない。
いや持っていても買ったら俺が罪人になってしまうのでは?
ヒュ「ちょっと考えさせてくれ。ふぅ。あ!財布が無い!さっき外行った時落としたのかも!ちょっと見てきますね」
ハゲ司祭はため息をつきながら顎で指図した。
ヒュドラはチャンスを得た。
これでこいつを捕まえる事が出来ると。
だが、単に捕まえるだけでは面白くない、レンシーが言うように教会幹部と繋がりをこれを機に知ることが出来れば楽しいことになると思っていた。
ヒュドラは外に出てレンシー達を探した。
それに気づいたエモは手招きをし呼び寄せる。
エ「どうだった?」
ヒュ「あいつは黒だ。麻薬の取引場になってるよ。で、どうする?」
レ「そうですか。私は捕まえて断罪するべきだと思います。」
ヒュ「レンシーも結構きついこと言うね。まぁ俺もそれがいいんだけど」
レ「他に案はありますか?」
ヒュ「どうせなら泳がせて黒幕を引きずり出そうぜ」
レ「それはヒュドラに任せても大丈夫なんですか?私は顔を知られているので」
ヒュ「いやいや、レンシーが居ないと話にならんよ。知り合いだからこそ脅かせるんじゃないか」
その言葉に考え中のレンシーだった。
教会内部の不正や癒着は見過ごすわけにはいかない。
元々一般人が知らないような犯罪が教会内には溢れているのは百も承知、もみ消すなんて簡単に出来るのだ。
今が暴くのにちょうどいい機会なのだろうか。
いや、今はハゲ司祭だけ吊し上げればそれでいいのではないのか。
結局のところこのままで良いと思う心と、変わらなければいけないという心が対立しているのだ。
ヒュ「なんだ、考えてるのか?迷ってるなら俺に従え、間違った事は言った事ないだろ?」
レ「・・・いや、間違いだらけですよ」
ヒュ「そうだっけ?まぁ楽しい方を選べよ」
ニアス(以下:ニ)「参加した方が楽しいんじゃない?」
エモ(以下:エ)「レンシーは見逃す事できるの?」
レ「それは・・・」
レンシーは即答できず黙り込んだ。
正しいことをやらず、見て見ぬふりをする。
今レンシーは葛藤していた。
少なからず教会に保護され自由に行動できているが、もしもこれが失敗に終わればどうなるか分からない。
自分の地位を失うことは怖いが、それ以上に仲間といられなくなることを怖れている。
だが、分かっている、間違いを正すチャンスは今を逃せば得られないことを。
千載一遇、悩んだ末に答えをだした。
レ「私は、やりますよ。正直者が馬鹿を見る世界など見たくありませんからね」
大丈夫、大丈夫だと自分に言い聞かせヒュドラに頷いた。
ヒュ「それじゃ行こうか」
ヒュドラは嬉しそうに口角をあげた。




