アポリア その6
やってきたのは目の下にクマを飼っていそうな司祭だった。
レンシーはその顔に見覚えがあった。
かつての仲間、しかし直接係わったことは殆どなく顔見知り程度に挨拶する仲だった。
彼はレンシーの知る中ではそれほど優秀な者ではなく、いつもサボって迷惑をかけるタイプだった。
教会内部との繋がりがあり、コネで司祭までこぎつけたと言われていたが、真偽は定かではない。
今居るホワイトローズ(教会従事者の町の名前)は司祭たちの聖地であり、世界の中心地と言える場所なのでここで働くことが出来るのは優秀な者のみ。
その彼が居ると言うことは、どこかの幹部の関係者であるかもしれない。
レンシーは久しぶりに見た彼に懐かしさを覚えるが、それと同時に不信感が襲いくる。
「まったく、この忙しい時期に来るなんて聞いてないぞ」
そう言いながら物置部屋の前まで来てぼやいている。
「えーと鍵はっ・・と鍵。あったこれだ。ん?空いてるな。もう来てるのか?」
中を確かめる司祭の姿。
エモ達は小さな声で話す。
エ「なにやってんだあいつは」
レ「少し失敗しましたね。部屋を元通りにしてませんでしたよ」
ニ「どうにかなるってばよ」
ヒュ「あの司祭捕まえて聞き出すか?」
レ「それはちょっと待ってください。これから何が起こるか様子を見ましょう」
少しして部屋の中に入った司祭が出てきた。
その顔には苛立ちが見え、明らかに不機嫌である。
「どこ行ったんだよ畜生、忙しいっていうのに」
司祭はそう言うとまた部屋の中へ入ってしまった。
この様子だと椅子に座って待っているようだ。
レ「困りましたね、どうしましょうか」
このまま待ち続けるとしたらいつ終わるか分からない。
そもそも私たちはオバケの存在を確かめに納骨堂に入ったというのに何をやっているのだろう、とエモは思った。
部屋の中は椅子とテーブルがあり、何かしらの取引現場だと思われる。
現に怪しい司祭が隠れる様に中へ入っていった。
それを調べる為にはどうしたらいいのだろうか。
エ「よし、誰かが囮になろう」
ニ「え?何で?」
ヒュ「エモにしてはなかなかの提案だな。よし、レンシー行って来い」
レ「いやいや、相手は顔見知りですよ。私は無理ですって」
ヒュ「知り合いなら尚更聞きやすくないか?」
レ「逆に怪しまれますって。ここはヒュドラが行くべきです」
ヒュ「いやいや俺やだよ、だってあいつ知らないし」
レ「好都合でしょ。何かあったらどうにかしますから」
ニ「行かないなら私が行きたい」
エ「私も」
レ「ヒュドラどうします?」
ヒュドラはこの二人に行かせる事はしないはずだとレンシーは考えている。
エモとニアスは明らかに場違いな人間である。
その点ヒュドラなら見た目もそれなりに怪しく何か闇を持っていそうな感じがするので適材なのだ。
だが最近のヒュドラはちょっと反抗期のような対応を取ることが多く、まるで子供の様に振舞うのでイラッとすることは心に秘めておいて・・・。
エモとニアスに見つめられたヒュドラは渋々囮になることを選択した。
レ「適当に話を聞きだしてください」
ヒュ「仕方ねーな分かったよ。ったく」
無理難題を押し付けられたヒュドラは部屋の扉に手を掛け中へ入っていく。




