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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第五章
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アポリア その5

目の前は暗く、走ることは危険である。

何度か曲がり角があり気づいた時には目の前に壁があって頭をぶつけてしまった。

教会からの脱出口とするなら、道を真っ直ぐにしておけば暗闇でも簡単に進むことが出来る。

そうはしなかったのは何か理由があるのだろうか。

納骨堂と教会の位置関係を見たなら特になさそうだ。

直線で結ぶには障害物が多いのだ。

それはともかくついに終点が見えた。

角を曲がって直ぐの場所に階段があり、その先の天井から光が漏れている。


レ「やっとですね、慎重にいきましょう」


階段の先には梯子があり、上には扉があった(マンホールみたいなイメージです)。

神経を集中させ扉の向こう側に誰かいないか気配を探る。


ヒュ「いないようだな、開けてみよう」


扉を持ち上げてみたが、鍵(錠前)がかかっているようで開かずガチャガチャという音だけが響いた。

思いっきり突き破ってみようか、それとも鍵を壊す方法を考えるか。


エ「鍵掛かってるの?それならこれを使ってよ。簡易ノコギリ!」


ヒュ「でかした」


レ「準備がいいですね」


エ「レンシーの鞄をいつか開けちゃおうと思って買っておいたのが功を奏した。小さくて持ち運びやすい優れものです。お手頃価格でした」


レ「褒めたのが間違いでしたし、私の鞄には鍵かかってませんから」


エモはヒュドラにノコギリを手渡したが、狭かったので扉の隙間にうまく入れる事ができなかった。


ニアス(以下:ニ)「ふっふっふ、ここは私がやりましょう」


ヒュ「そうだな。本職に任せよう」


ニアスは小柄で、仕事は専ら左官職人こね太郎なのでノコギリの扱いはお手の物。

本職は猛獣使いなので忘れずに。


ニ「よいこらしょー」


あっという間に鍵を壊してしまった。

そして扉を持ち上げ頭を出した。


ヒュ「おいニアス、様子はどうだ?」


ニ「何にもないよ」


どらどらと他の三人が這い上がってきた。

確かに何も気になったものはなかった。

今居る場所はどこかの物置のようで、縛られた書物や値打ちのない壺等が置かれていた。

椅子もありテーブルもある、壁には色褪せた紙が貼られている。

ほこりまみれになりそうだが、これといって汚れてはいない。


レ「外はどうなってるんでしょうか?」


それが今一番の問題だった。

話し合いする為の椅子とテーブルがある、ここで麻薬取引が行われている可能性は否めない。

ヒュドラは部屋の上部にある通気窓をフライ(空中浮遊)の魔法を使い覗いていた。


ヒュ「あらら、これは見事な景色だこと」


エ「何?どんなの?」


レ「開けましょうか」


外へ通じる扉も鍵がかかっていたが、内側からなので開ける事はできた。

錆びついた扉は音を立てる。


レ「ここは・・・教会の敷地ですね。」


レンシーには見慣れた光景だったが、教会の端の端にある教会関係者も近づかないような場所だった。


ニ「おお、ここが教会か。初めて見た」


エ「私も初めて見た」


ヒュ「お前ら嘘つきだな、おっと、早く便所を探さなければっ」


エ「膀胱は破裂しないこと知ってるぞ」


ニ「ヒュドラも嘘つきだった」


レ「教会の中にはありますが、そこの木陰でしたらどうです?」


ヒュ「あれ?聖職者がそんなこと言っていいのか?だが、俺はそんなことはしない、だってここには美味しそうな草がいっぱいだからな!」


レ「良い肥料になりますよ」


ヒュ「そ、そうか?それじゃ行ってくる。見るなよ、絶対だからな!」


ヒュドラは走って行ってしまった。

レンシーはヒュドラに便所の場所を教えることよりも今置かれている状況を考える事を優先した。

少し歩き見回す、これといって気になることは無いのだが心に何か引っ掛かる。

ヒュドラが戻ってきて、帰ろうと言いだした。

しかしその直後、何かの気配に気づいた。

誰か近づいてくる。

ニアスの猫は肩から降り警戒している様子だ。

ここは教会の敷地、司祭であるレンシー達とその仲間が居ても何の問題はない。

だがこの教会の誰も寄りつかない場所に来ること自体が問題なのだ。


レ「隠れて様子を見ましょう」


そう言われるまま物置部屋の陰に隠れた。

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