アポリア その2
納骨堂は地上部と地下に分かれているカタコンベと一般的には言われていた。
地下の壁は石などで補強されていて思っているよりも広く、迷うことのない一本道だった。
ヒュドラを先頭に中へ入っていくことになった。
現在、亡骸は火葬されて壷に入れて安置されているが、一昔前の亡骸はミイラとして保存されている。
一歩足を踏み入れると抜ける風が不気味に背中を撫でる。
誰でも入れる場所なのだが気味が悪い。
今回は前の棍棒に布巻いて燃やす事はせず、簡易ランプを持ってきている。
炎で納骨堂を痛める訳にはいかない、煤けることは避けなければいけないのだ。
ヒュ「中は暗いけど特に何もないよ」
一番奥まで来てみたが何もおかしい所は見当たらない。
ひび割れっている場所もあるが補強されている。
様々な場所に描かれている壁画は美しく、そこに施された装飾は見惚れる程。
天井は低い場所も高い場所もあり、高くなってるところにはコウモリがいる。
ニ「ちょっと待って」
ヒュ「どうしたニアス」
ニ「あのコウモリ飼いならしたい」
エ「ナイスアイディア」
レ「今ですか?先にやる事あるでしょ」
ニ「あったっけ?」
エ「ないよね」
手のかかる子供が増えたようでレンシーの頭はいつも以上に痛みを感じていた。
今後もこのような事が続くようであれば何か対策を考えなければいけないだろう。
ヒュ「お前らな、ちょっとは真面目にやれよ。俺だって少し怖いんだぞ」
ヒュドラも大概だった。
それはともかく、ニアスが連れている猫が何かに反応し肩から降りた。
辺りを見回しニャーと鳴いている。
人と動物では感覚が違うのはご存じの通り、嗅覚も聴覚も感度が違う。
エモ達が何も無いと思っていたところでも実は何かあったりするので猫が今後どのような行動をとるのか注目していた。
ニ「ふむふむ、なるほど。あっちに何かあるみたいよ」
レ「ニアスは動物の言葉が理解できるんですか?」
ニ「ちょっとは出来る・・・かな?」
エ「本当?凄い、これが何考えているか教えてよ」
エモはヒュドラを指差し笑っている。
これ呼ばわりされたヒュドラはイラッとしたが無視して進もうとしていた。
ニ「えーとね、今は不機嫌みたい」
エ「やっぱり、私もそう思った」
猫が進み、そして止まったのは通路のど真ん中だった。
ここに何かあるのだろうか。
ヒュ「おい何て言ってるんだ?」
ニ「わからない」
ヒュ「言葉理解できるんじゃねーのかよ」
ニ「流石にニャーだけじゃ・・・」
とりあえず辺りに何か無いか探してみる。
石が積まれた壁で隙間などない。
エモがナイフを石と石の間に突っ込んで、
「見て見て、ナイフが入らない程ぴったりしてる」
とか言うもんだからレンシーでさえ呆れていた。
えいえい、とエモはナイフを突き立てながら隙間を探っている。
本当に何もない。
今度ばかりはヒュドラもレンシーもお手上げでため息をついた。
エ「ホント、何にも無いね。・・・・あ」
ナイフが隙間に挟まり抜けなくなってしまった。
ヒュ「何やってんだよ」
ニ「ここには何もないんじゃない?出ようか」
エ「あ、ちょっと待って、ナイフが抜けないっ」
レ「引いてダメなら押してみたらどうです?」
エ「よし、やってみよう、グリグリ」
カチっという音が鳴った。
エモのナイフが何かに当たり、壁全体が横にスライドできるようになった。
でもナイフはまだ抜けなかった。
ヒュ「なんだこれ、エモ何やらかした?」
エ「ナイフ抜こうとしてた。抜けないからナイフ押し込んだらこうなった」
運がいいのか悪いのか。たぶん運がいいのだろう。
墓地には隠し部屋が付きものだ、見つけてしまったからにはこの中になにがあるのか調べなければ気が済まない。
他人が作った秘密を知りたいのと同じように。
だがそれは知らなければ良かったと後悔する事も心のどこかに置いておかなければいけない。




