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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第三章
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キラメキの中で...その4(第三章完結)

しばらくすると少女の顔に赤みがさしてくるのが見て取れた。

本当に、蘇生が上手くいったのか?

まだ分からない。

強く呼びかける青年、戻って来てくれと何度も繰り返した。

それでも目を覚ますことは無く、やがて青ざめたように血の気を失っていく。


ヒュ「畜生!どうにかならないのかレンシー!」


レ「もう手は尽くしました。これ以上は・・・」


口ごもるレンシー、ヒュドラも自らの力ではどうにもならない無力さを感じていた。

青年は更に声を上げ、泣き叫んでいる。


青年「僕を!僕を置いていかないで!

もう・・・一人は嫌だ・・・」


無情にもその願いは届くことはなく、蘇生という望みは叶わなかった。

誰もが呆然と立ち尽くし、脱力した。

しかしエモだけは信じないという思いで更に叫んだ。


エ「そんな!ダメぇぇぇぇ!」


その叫びは部屋の壁に吸い込まれ辺りは静まり沈黙が流れた。

どう表現したらいいのだろう、このやるせない思いを。

期待させておいてこの失態は痛恨だった。

レンシーは誰も死なせたくはない一心で覚えた蘇生の魔法。

その魔法も必要な時に役立たない事は考えていなかった。

決して自信過剰などではない、失敗前提で物事を考える者などどこにいるというのだ。

いるはずはない、いるはずなどない・・・。


不意に、エモはあの給食袋(第一章「扉の外」参照を)にしまっておいた宝石の欠片が発熱しているのに気付いた。

何だろうこの温かな気分は。

欠片を取り出すと光を放ちきらめいているではないか。

すると少女の胸にあった欠片も光を出している。

赤く魅入ってしまうくらいの赤色せきしょく

エモの持つ欠片の光は少女に向かって行き吸い込まれていった。

少女の欠片の光はその後に一度だけ大きく弾け暗かった部屋を明るくし、

まるで雪に反射した太陽の光のように目をくらませた。


ヒュ「くっ、何が起こったんだ?」


レ「光で、目が・・・」


青年も何も見えず目を抑えている。

エモも見えていなかったが何が起こったかを知っていた。

手を握り返してくる小さな感覚を。


エモ「ありがとう、戻ってきてくれて」


エモは少女を抱きしめていた。




目が慣れてきた一同はエモが少女を襲っている姿を見た。


ヒュ「お、おいエモ何やってんだ」


エ「だって、嬉しくって・・・」


レ「私の力不足です・・・もうなんと言ったらいいのか」


ヒュ「何も嬉しいことなどない。もう戻らないんだぞ」


その声を聞いた青年はすすり泣きしている。

エモは泣き笑いを浮かべ否定する。


エ「何言ってるのさ。生き返ったんだよ」


ありのまま 今起こった事を説明するぜとエモ。

その説明では何を言っているのか分からなかったが、エモ自体も何が起こったのか分からなかった。

結局は宝石のせいなのね、そうなのねということで無理やり納得させた。


レ「ちょっと様子を見せてください。成程、眠っているようですが検査が必要でしょう。早く町に戻りましょう」


青年「ほ、本当に生き返ったのか?」


ヒュ「みたいだな。良かったな」


青年「ああ、夢みたいだ」


またしても泣きだす青年。

それはともかく、ここから出なければいけない。

レンシーは疲れ果てているのでヒュドラが少女を担ぎ、エモは青年に肩を貸す。

やっと外に出られた時は夜明け前だった。

このまま休まずトロッコで町まで行こう。

だが定員オーバーだった。


ヒュ「マジか。こんな時に限って!」


エモ「予備のトロッコ見つけたよー」


ヒュ「でかした」


もう一台のトロッコを連結する。

これで準備は整った。


レ「燃料がもう少ないです」


エ「それならここに」


ヒュ「お前は何でも持っているな。あと安心したら腹減ってきたな」


エ「私も」


レ「え?何で私を見るんですか?」


エモとヒュドラはレンシーを見つめ何かを欲していた。


レ「いやいや、ありますけども。今の流れはエモが何か出すべきでしょう。ともかく早く行きましょう」


エ「ひもじいよう・・・すやぁ・・・」


エモはその言葉を最後に寝入ってしまった。


ヒュ「んー、まぁいいか。行こう」



トロッコは走り出す。

太陽が昇り始め、暗かった線路の先も見えてきた。

監視塔の中では絶望的だった心も今では晴れ間が見えてきたが、死んでしまった人を考えると心が痛い。

間違った知識のせいで再び苦痛を与えてしまった青年の罪は重いだろう。

一度汚してしまった手は二度と綺麗にはならず、自らの罪を認め償うことで次第に浄化されていく。

純粋だったからこそ犯した過ち、何事もなければ起こらなかった心の変化。

現実とは残酷だ。

だが、失う事ばかりではなく得る事があるのは唯一の救いだろう。

青年はこの後ブラックベリーの町の司祭の元で人々を助ける勉強をするそうだ。

実際に彼が犯したのは人殺しではない。

だが許されるべきでもないので少しずつ償っていくだろう。

覚えたての死霊術も才能があるからこそここまでの行いが出来た。

もしかしたら人を癒す聖なる力も備えているかもしれない。

死霊術と司祭の魔法は表裏一体と言える、どちらに転ぶかは自らの考えに任せるとする。


監視塔のアンデッドは町人により回収され丁重に葬られた。

原形を留めていなかったが遺族は発見を喜んだ。


レンシー「やっと終わりましたね」


遠くに上がる煙を見つめしみじみ呟いた。

トロッコに乗り町に着いた後はいろいろと忙しかった、詳しいことは省略する。


ヒュ「そうだな、なんか色々な事があった気がするよ」


エ「でも少し気分が晴れたよね」


レ「ええ、そうですね。やることが沢山出来ましたよ」


エ「それにほら」


エモの手には少女が持っていた宝石の欠片がある。

これは目を覚ました少女から貰ったものだ。

青年は妹にもう二度と同じ思いをさせないと誓い、これは必要のないものだとしてエモに渡したのだ。


ヒュ「やることって何があるんだ?」


レ「色々ですよ」


エ「気になるな。教えてよ」


レ「秘密ですよ。それよりご飯食べに行きましょう。その後は次の町へ行きますよ」


ヒュ「そうだな。そうしよう」


エ「行こう行こう」


英気を養い次の町へ歩き出した。

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