その3
レ「どもこんばんはー」
ヒュ「おう来たか。それじゃ酒場に行こう、飲めるだろ?」
レ「もちろんです」
三人連れだって近くの酒場へやってきた。
情報収集といえば酒場だろ、と思いきや最近の酒場は衝立が多くて他者とのコミュニケーションが取れないことがある。
しかしこの酒場、流石に中継点にある町ということで衝立は一切なく、人々の顔が見渡せる。
空いている場所を探し各々好きな物を注文し話を切り出す。
ヒュ「おつかれさん、元気そうでなによりだ」
レ「そういう二人もお変わりなく」
エ「ところでさ、教会離れるってどういうこと?」
いきなり核心をついてきたエモの言葉にレンシーは驚きもせず答える。
レ「ちょっと思う所がありましてね、少し旅に出ようと思ったのです」
エ「!?ちょっと聞きました奥さん!?」
ヒュ「ええ聞きましたとも」
意外や意外、この真面目な司祭が旅にでるなんて思ってもみなかった。
その真面目さから、どこかの町へ行って職位が上がって長椅子にでも寝るんじゃないかと思っていた。
レ「そう驚くことじゃないですよ。ここのところ教会本部では昨今の非常事態(太陽が沈まなくなる状態)に対して行動を起こしているのです。
知っての通り全国に教会はありますけど、司祭の中堅くらいの人たちが各自で行動を起こすよう言われていましてね」
ヒュ「だから新しい司祭が来て引き継ぎをしていたのか」
レ「そうです。いわゆる新米の司祭が町々の教会に配属され、私みたいにちょっと長く務めた司祭が旅だっているのです」
エ「なるほどね、それなら話は早いじゃん。一緒に行こうよ」
レ「そうですね、行きましょう」
ヒュ「ちょっと待て、俺たちの話も聞いてもらわないと」
エ「だってこれからやろうとしてる事は大体同じでしょ、もう疲れちゃったし」
ヒュ「待て待て、今日出発して今日この町に着いたんだぞ、疲れるてるって、ただ歩いただけじゃないか。
ああ、この先が思いやられる」
レ「まだ夜は長いんだし、ゆっくり聞きますよ。久しぶりに会えたんですから楽しくいきましょう」
三人は現在の状況のついて話し合った。
中でもエモの両親が亡くなったことについては非常に残念がっていた。
所謂レンシーの恩人なわけだが、話は割愛。
ヒュ「全く本当にあるのか分からない宝石なんて見つかると思うか?」
酔っぱらったヒュドラが絡みながら話す。
レ「確かにその話は昔話ですからね、無いかもしれませんが。
しかし教会本部が各自で何かしろって曖昧な事しか言ってこないし、私もこれからどうするか迷っていた所です。
その宝石探すの手伝いますよ。一人で旅するよりよっぽど楽しくなりそうですからね」
レンシーはいつも冷静だ。酒が大量に入っているのに素面でいる。
以前ヒュドラはレンシーと共に旅をしていたことがあった。二人は信頼し合っていると言ってもいい、と、この話は割愛する。
そこに新たにエモが加わり旅をすることになった。
レ「さて、そろそろ行きましょうか」
ヒュ「ああ、エモは寝ちゃってるし、って話し合っただけで情報集めてないじゃん」
レ「それは明日にしましょう、酔っていると重要な話も忘れてしまうものです」
ヒュ「それもそうだな、それじゃ宿に戻るわ。明日またこの酒場にきて情報を集めよう」
エモを抱えたヒュドラは宿へ向かう。
夜は深く、街灯で照らされているが通りを歩く人の顔はぼやけて見ることが出来ない。
栄えてるとはいえ中心部からはかなり離れている、夜になれば人もそれほどいない。
夜・・・夜が来ないってどういったことなのだろうか。
話に聞くだけで実際見てはいない、教会が動き出すほどの非常事態、この先いつこの地域に到達するかさえもわからない。
生きているうちに来ないかもしれない、それまでに全ての欠片を見つけられるのか?
不安で仕方がないが、決めた事に後悔はしたくない。
未来だけ、いや明日だけ見ていよう、何か、きっと、漠然としたことしか思い浮かばないけど、今はそれでいいはずだ。
大丈夫、大丈夫だ。
ヒュドラは宿に到着し、エモを寝かせると、また色々考え始めた。
しかし頭の中で渦巻く考え事は深い眠りに遮られてしまった。
目覚めは爽やかに、朝が来る喜びを今日も一日良い日でありますように。
レンシーは手早く準備を済ませ教会に行った。
レ「おはようございます」
司祭「おはようございますレンシーさん、早いですね」
レンシーはこの若い司祭に全てを任せることは不安であったが、思いの外優秀だったので今は安心している。
これから旅に出る事を若い司祭に告げる。
分かりました、ここは任せてくださいと答える。
彼もいつか私みたいに旅に出ることになるでしょう。
しかしできれば私達だけが苦労すればいい、コロコロと司祭が変われば住民は心配になるだろう。
誰かの安らぎを害してはいけない。
さぁ頑張らなくては。
レンシーは自分に言い聞かせると酒場へ向かって行った。
酒場の前には二人の姿があった。
エ「こっちこっち」
ヒュ「まずは情報収集からだな」
エ「情報ならあるじゃんこれだよ」
手に持って見せるあの本≪宝石の秘密≫だ。
ヒュ「美術館だったな、だがいきなりその場所に行くにしても遠いし、まずは近場から探していかないと駄目だ」
レ「案外近い場所にあるかもしれませんよ」
エモを納得させ酒場で情報を集める。
やはり聞いてまわっても昔話として知っているだけで情報は何も無かった。
ヒュ「エモ、これを何度も繰り返すんだ、お前は旅に慣れてないから知らないだろうが、情報ってのは何度も足を運んで得るものだ。
これで面倒だと思っていたらこの先旅を続けられないからな」
エ「分かってるって」
レ「私は最近まで酒場で情報集めてたんですがね、やはり何も得るものがなかったんですよ。
ここは次の町まで行ってみるのはどうですか?」
ヒュ「そうだな、ずっといたレンシーでさえ情報がないんじゃここにいてもしょうがないな」
エ「よし行こう、ってレンシーその手に持ってるのって何?」
レ「え?棍棒ですよ、旅の必需品です」
レンシーは片手に持っていた棍棒を大きく振って見せた。
殴られたらひとたまりもない。レンシーだけは怒らせないよにしようと心に決めたエモだった。
ヒュ「やっぱり背教者だな・・・」
レ「何か言いましたかヒュドラ?」
ヒュ「何も」
三人が他愛もない話をしながら次の町を目指した。




