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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第三章
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真夜中の逃亡者 その4

目が慣れるまでの間は息を潜め様子をうかがう。

それにしても臭いが一層きつくなっている。この部屋が元凶らしい。

入口から遠く端の方、何かが動いているのが見えた。

何やら人の形をしているようだった。


ヒュ「なんだあれは?」


その声に反応したのかどうかは分からないが、こちらに気付いたようでゆっくり近づいてくる。


「あ~、あ~」


それは声を発している。


レ「あれは、探していた男の人ですよ!」


エ「な、なんだってー!」


レ「よかった無事だったんですね」


安心した様子のレンシーと違和感を覚えるヒュドラ。

何故この場所に、そして暗い中に居たのか。

監禁されていた?

いや鍵など掛っていなかった。

簡単に外に出られたはずだ、それに通常の人間だったらこのような臭いのキツイ場所には居られない。

何故ヒュドラ達が平気に探索しているのかというと、レンシーの魔法の一つであるプリフィケーション(浄化)を使ったからである。

元々この魔法は汚れた物や空間を清める為に使われるのだが、今回は人物に使うことによってその人周辺の空気を綺麗にする効果を持つ。

本来の使い方ではないので効果は微妙。


ヒュ「ちょっと待て、様子がおかしいぞ」


汚れた服、引きずった足そして近づいてくる男は首があらぬ方向に曲がっている。

手には棒切れを持っている。

近づくたび臭いがあふれ出る、ここには居られない程の。


エ「ちょっと、戻ろうよ」


レ「え、ええ。分かりました」


後退り、扉を閉める。


エ「どうしよう」


ヒュ「どうしようもない、今見た奴はもう死んでいるだろう」


エ「でも動いてるし」


レ「アンデッドですよ」


アンデッド、一度死んだ人が死霊術によって蘇った状態である。

一般的にレンシー所属の教会で使われる魔法とは正反対のものであるが性質は似通っている。

死霊術によって蘇った者は一時は意識を保っているが、それも少しだけで、あとは本能の赴くまま行動する。

そして長く現存する事はできない。

高度な技術を持つ死霊術師なら可能だが、それでもいずれ朽ち果てていく。

アンデッドへの攻撃は打撃とも魔法とも無意味に等しいが、頭への直接攻撃なら効果はある。

あと教会従事者が使う魔法も有効である。

この世界のアンデッドとは、かつての戦争で利用されたと記録が残っている。

戦いで死んでいった人を蘇らせ、操っていたという。

熟練者となれば何体ものアンデッドを操ることは可能らしい。

アンデッドの部隊を率いた死霊術師がある相手を攻めた時、この世とは思えない地獄絵図が広がったという。

殺された人々はその場で蘇り、味方目掛けて斧を振るう、その味方も割れた頭の状態でまたも味方を攻撃する。

それはさておき、誰がこのような術を掛けたのだろうか。

アンデッドは自然に発生するものではなく、死霊術師が手をかけなければ生まれることはない。

この近くにいるというのだろうか。


レ「私は何度かアンデッドを見てますが、あれはまだ術が未熟ですね」


理性を無くした生ける死体は近づいてはいるが、そのうち立ち尽くし意味不明な言葉を発している。

もちろん攻撃してくる気配がない。


ヒュ「どうするよ、このまま放っておくか?」


レ「いや、私たちの目的は彼らを見つける事ですが、目の前にいる以上どうにかしないといけませんね」


エ「ここは本職に任せよう」


ヒュ「頼んだぞレンシー」


対アンデッドには司祭の力が最も有効である。

レンシーは鎮魂歌を歌いだした。


レ「さぁ二人とも後に続いてください、ボェ~」


ヒュ「え?知らないし」


エ「私も知らない」


レ「何ですって?前に教えたじゃないですか、ボェ~」


ヒュ「そうだっけ?忘れちまったな。それにしても音痴だな」


エ「く、苦しい・・・」


エモは少しずつ体力が減っていく、ヒュドラは慣れているので気にはしてないが。

目の前のアンデッド(捜していた失踪した男)は苦しみだしその場に倒れた。

レンシーは最後の言葉を発するとアンデッドは安らかな表情になり動かなくなった。


レ「これで終わりです、エモ大丈夫ですか?」


エ「もう駄目かもしれない・・・」


レ「ちょっと、あまりにも酷くないですか?私の聖歌は凄いと評判なんですからね」


ヒュ「それは知ってるが、なんていうか凄いの意味が違うよね」


レンシーはヒュドラの言葉を無視しアンデッドだった男に近づく。

軽く息を漏らす。


レ「もしかしたらと思いましたが、宝石の力によるものではないようです」


捜している宝石はまだ知らない力を秘めているかもしれないのだ。

或るときは人を惑わし、或る時は力を増幅させる。

人を生き返らせアンデッドにする力を持っているかもしれない。

だが今回は宝石の力では無く死霊術師が術で蘇らせたのだと分かった。


レ「終わりました、他の部屋も見てみましょう」


ヒュ「お疲れさん。いやぁいつも凄いね、腐っても司祭だわ」


エ「ささっと終わらせちゃうのが凄いね。正確だし」


レ「二人から見て、私は冷静に見えますか?」


二人は頷いた。

レンシーは目を閉じ深呼吸をする。


レ「私は今も震えているのです。そしてこれが正しい選択だったのかを自分自身に問うてます。

彼は殺されてしまいましたが、死霊術で蘇りました。

最早人とは言えぬ身体をしているとはいえ再び得た命です、自我を失って腐臭を発していますが自ら動いていました。

また命を奪う事が正しかったのかと考えてしまいます。

彼の親族や仲間にしてみれば彼が動いているのならアンデッドでも嬉しいだろうし、私がその立場だったらとても苦しいく悲しい。

これも司祭になった運命なのでしょうか、人の死というのは遠いようで近いものになってしまいました」


ヒュ「え?あ、うん、そうだね。人が死ぬんだもん悲しいよね」


エ「ごめんなさい」


レ「まぁ私だけが考えていればいいですけどね、それじゃ先を急ぎましょう(少々しんみりしちゃいましたか)」


男はこの場へ残し他の場所を探す。

夜は更け、別の部屋ではまた何か音がしている。

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