真夜中の逃亡者 その1
それは深い闇だった。
ある日を境に全てが黒く染まっていく。
目の前にあった空も、雲も、星も何もかもが同じ色になって。
他に何も望まない、だから・・・。
僕の命を捧げるから、どうか・・・。
もう息をしていない親愛なる人、僕は君をずっと守りたかったんだ。
虚しく響く部屋の中、ただ俯き堪えきれない涙が一つまた一つ吸い込まれていった。
湧き上がる憎悪、それは逆恨みに近い感情だったが誰も知る人はいない。
どうしてなのだ、何故このような目に遭わなければいけないのか。
何か音がした。
誰かが近くにいるのか?
ゆっくり辺りを気にしながら音のした方へと歩いていく。
見つけたのは横たわる人のようなものと大きな獣だった。
その獣は何かを残し去って行った。
去った後様子を見ていたが残されたものは微動だにしなかったので恐る恐る近づいてみた。
そこにはもう息をしていない人があった。
成程、あの獣が殺したんだな。
さて、どうしよう。
誰かに知らせなければいけないだろう、でもどうやって。
知らせる必要があるだろうか、私には関係ないことだし。
しかし、どうしたらのだろう。
今、闇の中で誰かが手を差し伸べている。
行ったら戻ってこれない禁断の地へと。
躊躇う気持ちは最早無かった。
自ら奈落へと落ちていった。
ここまでのあらすじ
トロッコに乗って廃村まで来たエモ達だったが、何も見つける事は出来なかった。
夕方になり休もうとした時にレンシーが監視塔の窓に映る炎を見つけた。
レンシー(以下:レ)「準備はいいですか?」
ヒュドラ(以下:ヒュ)「準備も何もそれ程準備するものなんてないぞ。しいて言うならば腹が減ってるくらいか」
エモ(以下:エ)「少し減ってる、いやかなり減ってるぞ」
駄々をこねる二人を尻目にレンシーは監視塔目指して歩き出す。
ここから監視塔へはそれほど離れていないが高台にある為面倒な道のりだ。
レンシーが一度行っているので難なく行けることは確か。
程なくして監視塔へ到着する。
ただの塔と思うことなかれ、結構大きい。
入口はやはり鎖で固定されているので外さないと入ることは出来ない。
ヒュ「外すのか?俺が?」
レ「魔法でちゃちゃっと外せませんか?」
ヒュ「そんな魔法は無い」
魔法で閉じられた扉なら開ける事は可能だが、頑丈な鎖では不可能だ。
なにかこう、斧みたいなもので思いっきり叩けば壊れるかもしれない。
ヒュ「ここはエモの槍でなんとかしよう」
エ「無理です」
どうしようもないので窓を割って入ることを提案するヒュドラ。
窓と言っても小さく人が入れるかどうか、しかも高い位置にあるので昇るには苦労しそうだ。
レ「別の入口ありませんか?」
ヒュドラは思った、レンシーお前一回ここに来て調べたんじゃねーのかと。
詳しく適当にやってたんじゃねーのか、と。
まぁいいけど。
エ「ヒュドラがロープ持って先行けばいいじゃん。空飛べるし」
ヒュ「えっ!?俺が行くの?エモの槍を地面に突いてしなった反動で届くだろ(棒高跳びのようなイメージ)。レンシーは棍棒立てかけて簡易足場にして行けばいいじゃん」
レ「私ですか?やっぱりヒュドラが一番簡単に行けそうだからヒュドラに任せます」
ヒュ「や、やだね、腹減ってるし、汗で顔が濡れて力が出ない」
レ「どこぞのヒーローかよ」
ヒュ「レンシーよ、ここに来て調べたんじゃないのか?」
レ「調べましたが、中まではちょっと。私が探しているのは草むらとか家と家の間とかですから」
エ「私は家の中まで調べたよ」
ヒュ「俺もだ」
レ「そうなんですか?ヒュドラは寝床探しでしょうが、エモには驚きですね」
エ「無いとも限らないし、絶対って言葉は存在しないからね」
忘れることなかれ、旅をしている理由は太陽が沈まなくなる異常事態を何とかすること。
宝石があれば願いが叶うかもしれないと昔話や伝説で語られている。
無謀にもその宝石を探す為にここまできているのだ。
今回は道を外れて廃村にいるが、エモはもしかしたらここにもあるかもしれないと思っていた。
絶対無いとは言い切れない、この世界が絶対に変わらないとも言い切れない。
レ「ヒュドラお願いします、先に行ってくれませんか?」
そこまで言われたらやらない訳にはいかない。
仕方なく昇る決意をする。
ヒュ「ロープあるか?」
レ「ここにあります。あとロウソクも」
ヒュ「・・・ロウソクはいいや・・・」
レ「そうですか?中は暗いでしょ。あると便利ですよ」
確かに便利だが、今ヒュドラは色々な考えが浮かんだ。
どうしてレンシーはロウソクを持っているのだろうか。
持っていたとしても不思議ではない、旅をするには必需品で滑り止めや耐水性を上げる為に重宝している。
ロウソク単体では何の不思議もないが、ロープと一緒になるとそうはいかない。
レンシー、お前はやっぱり背教者なのかもしれないっ!!
レ「どうしました?行きましょう」
ヒュ「お、おう。ちょっと待ってろ」
ヒュドラはロープを持ち窓がある場所までフライ(空中浮遊)の魔法を唱え浮き上がっていった。
2015.11.2 誤字修正しました。




