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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第三章
32/128

斜陽の緋 その4

鉱山で取れた鉱物を加工していたこの廃村。

今では彫りかけの塊が汚れて割れていた。

そこかしこに同じような風景、この家屋の前にも一つ、更にその隣には二つと。

ここの住民がこの地を捨てた理由は、戦争による被災が主だった。

復興はしていたのだが、見切りをつけた住人は隣町ブラックベリーに移住していく。

元々この村へ行くにはトロッコか徒歩くらいしかなく、馬車では行けないので必要資材を持ち込むには不便過ぎた。

現在、村で加工品を作っていた人はブラックベリー町で生活をし生産している。

そんなことはどうでもいい、各々好きなように行動を始めた。


雑草が繁茂し背丈が高くなっている場所がいくつも家と家の間にある。

一つ一つかき分けて入ってみる。

もう誰も近寄ろうとはしない場所を調べることは気分的に嫌なものがある。

その先には何も無かったりかつて使っていたであろう大小の金具や食器の欠片などが散乱していたりするのだが、小さな人形があった時は鳥肌が立った。

なんの変哲もない人形が妙に心をざわつかせる。


レ「ふぅ、無いですね」


捜しているものは無い方が良いのだが。

手がかりになるものは見当たらない。


エ「おぉ、びっくりした。レンシーがいた」


捜索中の鉢合わせ。

何事かと咄嗟に身構えたレンシーは緊張を解いた。


エ「ちょうど良かった、向こうで靴見つけたんだけど来てくれない?」


レ「分かりました」


エモの見つけた靴はほこりまみれになっていた。

これはかなり昔の物で、ここに住んでいた人が残した物だと思われる。


レ「これは違うみたいですね」


エ「そうか、こんなものがいっぱいあって何が何だか分からないよね」


元々は人が住んでいた場所、荷物をそのままにして去って行った人も多い。

その中で捜すのは難しい。しかもこの廃村にあるという情報は全くない。

三人だけで捜すには広すぎる、少しでも情報があれば変わるだろうか。


ヒュ「お、揃ってるな、もうじき日が暮れるだろうから中断しようぜ」


エ「もうそんな時間なのか」


ヒュドラは疲れた様子で腰を下ろした。

気づけば日は傾きかけていた。


レ「ヒュドラは何か見つけました?」


ヒュ「いや全く。あの塔っての?あそこまで行ってないんだけど気になるね」


エ「あのでかい奴ね」


ヒュドラの言う塔と言うのは監視塔のようなもので、この村を一望できる少し大きい建物。

崩れているが住居がある場所より一段高い場所にある。


レ「あそこは扉が鎖で固定されてましたよ。周りにも特に気になるところはありませんでした」


ヒュ「行ったのか。まぁ目立つもんね。とりあえず今日は終わりにしよう、腹も減った」


エ「疲れたなぁ。布団で寝たい」


ヒュ「布団は無いが良い場所を見つけておいた。それとここには沢山の野草が」


レ「またですか。もう終わったと思ってましたよ」


野草については[出発進行 その1][宝石の真偽 その2]を参照を。


ヒュ「いや、今度のは違うんだって、これは薬草だよ、この村の人が育ててたのが自生したんだろう、沢山あった」


エ「マヨネーズはあるよね?」


ヒュ「もちろん」


レ「はいはい分かりましたよ、薬草はヒュドラに任せますから勝手にやってください」


やる気満々のヒュドラはエモを連れだって薬草を採りに行こうとした。

生暖かい目で見送ろうとした時、レンシーは悪寒を感じた。

どす黒い何かがこちらを見ているような。

レンシーは振り向き監視塔に視線を送る。

そしてその窓の一つに真っ赤な炎が映っているのを見た。

太陽の光が反射しているわけではない、何かが燃えているようだった。

その後すぐに消えてしまった炎、言いようのない不安が襲ってきた。


レ「待ってください」


ヒュ「どうした?」


レ「い、今あの監視塔の窓に炎が映ってました」


ヒュ「レンシー、あなた疲れているのよ」


エ「幻覚じゃない?薬草食べれば治るよ」


レ「そんなはずはありません、見たんです。何かありますよあそこには」


ヒュ「さっきは何も無いって言ってたよね?」


レ「言いましたけど、中までは確認してません」


エ「・・・そう言われると気になるね」


ヒュ「明日にしようぜ」


レ「え?この状況でですか?」


ヒュ「だって俺見てないもん」


レ「見てないかもしれませんが、私は今すぐにでも確認するべきだと思います」


切羽詰っている様子のレンシーを見てヒュドラは察する、これはヤバイやつだ。

どうにかやり過ごそうとも避けられない。


ヒュ「仕方ないな、エモ準備しておけ」


エ「え?お、おう」



太陽は沈みかけ、窓に映る緋色。

夜はもう近くに迫っていた。


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