その2
次の日、朝早くドアをたたく音を聞いた。
朝食を食べ準備万端だったヒュドラは少し大きめの鞄と愛用の杖を持ち腰を上げた。
ドアを開け一言、
ヒュ「やぁお待たせ」
エ「さぁ行こう」
今にも走っていきそうなエモの後に続き出発する。
この町の景色とも当分会えないだろうな、そう思うとしんみりしてきた。
町の門まで到着する。この先はモンスターが沢山いるだろう、だがそれほど恐ろしいものではない。
普通の動物もいれば少し異形の動物だっている。どうにかなるだろう。
ヒュ「さてこれからだが、まず最初に行っておきたい場所があるんだ」
エ「ほう、いいよそこに行こう」
ヒュ「隣町に、といってもかなり離れてるけどそこに知り合いがいるんだ、まぁお前も知ってるけど」
エ「隣町というと・・・ああ、あいつだな」
いざ行かん、さらば故郷。
軽い足取りで歩き出した。
町から町への移動手段は専ら徒歩だが、馬車など動物を使ったものも選ばれていた。
都市には魔法の力を使ったテレポートセンターがあり提携している町との移動が一瞬で終わるというものもある。
だがこれには多額のお金が必要になるので常時使用することは一般人にはできなかった。
隣町への道は商人や旅人がよく通るのでそれほど危険ではない。
いつも見慣れていると思っていた景色はやたら新鮮に見えた。
手を伸ばして花の一輪でも摘もうものなら「なにやってんだ」とエモ言われる始末。
周りが見えていないのか、確かにヒュドラと違ってこの町から殆ど出た事が無かったはず。
周囲の人たちがモンスターが出るから外に行きなさるなと言われていたからだろう。
とにかく3時間ほど歩いたところで隣町に到着。
ヒュ「久しぶりに来たな、別段用事もなかったし」
エ「私は5年ぶりくらい」
5年前といえばエモの両親が研究調査中にモンスター襲われた時期と一致する。
しかし死んだ原因はそれから2年後の流行り病なのでモンスターは関係なし。
隣町は最初の町(エモとヒュドラのいた町)と同じように農業で生計を立ててる人が多い。
だが商店と宿が多くこの町から続く大都市への中継点としてある程度栄えている。
エ「えーと、どこだっけ」
ヒュ「こっちだ」
ヒュドラの指差す場所に小さな教会の一部が見える。
ここに知り合いがいる。
旅に必要な物を買いながらその教会を目指す。
教会の中は人が溢れかえっていた。
エ「混んでるな、なんでだ」
ヒュ「ここのところ不景気だろ?神様にでも頼んでどうにかしてもらうんじゃない?」
エ「いつもは熱心な信者じゃないのに不思議だね、困った時だけ拝んじゃって」
話し声が聞こえたのか、中にいた数名がこちらを睨みつけた。
怖ろしい顔、確かにこの面だったらもっと拝まないと良いことが起きないだろうな。
妙に納得していたヒュドラの横を司祭が通り過ぎて一言。
「誰でも思えば必ず通じるものです。それが一回きりだとしても」
確かにそうかもしれない。実際この旅を始めるきっかけってのはエモの一途な思いだったはず。
それを今更忘れていたとは少し反省しなければいけないヒュドラであった。
ヒュ「なぁ、どうしてこんなに人が多いんだ?」
「今日新しい司祭が来てるんですよ」
ヒュ「新しい司祭か・・・ってレンシーお前は司祭だよな?」
「ええそうですよ、ヒュドラ」
そう答えたのは司祭のレンシーだった。
ヒュドラ達は彼に会いに来たのだ。
レンシー(以下:レ)「お久しぶりですねヒュドラ。とエモもですか」
エ「やぁ」
ヒュ「新しい司祭が来たってことはレンシーは背教者になったって事かな?」
レ「いやいや、少しばかりここを離れることになりましてね、新しい司祭に任せることにしたのです」
エ「つまり左遷ってやつかな?」
レ「それも違いますよ」
レンシーはやれやれといった顔で答えた。
レ「ところで皆さんはどうしてここに?」
ヒュ「ちょっとレンシーに話したいことがあってね」
レ「そうですか、引き継ぎがまだ残っているのでその後でなら。そうですね今夜時間を作っておきます」
エ「わかった。それじゃまた後で」
ヒュ「この通りの先にある十字路の角にあった宿に居るから来てくれ」
しばしの別れを言い、宿に向かう。
夜まで時間がある、色々買ったものを整理をすることにした。
ヒュドラは強面だが、意外と几帳面なので鞄の中は綺麗に整理されていた。
鞄には魔法がかけられており、見た目以上に物を入れる事ができる。
それに比べエモの方は少々ガサツだ。
ヒュ「その鞄ちょっと見せてみろ」
エ「ほい、何かいれてくれるのかな?お菓子かな?」
渡された鞄を撫でながら魔法を唱える。
そうこうしているうちに入れられるものが少し増えた。
ほれっとエモに鞄を返した。
エ「あれ、中に入ってた物が減ってる」
ヒュ「減ってねーよ、入れる場所が増えたんだよ」
エ「ああ、そうかサンキュー」
そうこうしているうちに時間が過ぎ夜になった。
そしてレンシーがやってきた!




