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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第一章
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扉の先 その3

急に静まり返った空間の中、鋭い眼光はエモの方を見て、手斧を肩に担ぎ、襲う準備を整えていたかのように静かに息をする。

にやりと笑う口元、そして大きな雄叫び。

こちらを怯ませようとする手斧の男。

もうレッグロックの効果は切れる寸前だ。

ヒュドラは注意しようとエモの方を向いた時、男がヒュドラの方へ斧を投げてきた。

まずい、避けられない!

血の気が引いた思いをした。

しかし、もうお分かりだろうか、エモの槍が投げられた斧を叩き落としたのだ。

呆気にとられた男、そしてエモのキツイ一発が男を捉えた。

格闘家がマットに倒れるかの如くうつ伏せに倒れた。

腕だけ強化してあるだけで胴体には特に強化は無い(獣人を押さえつけるだけなので)。

そこを見抜いたエモに拍手を送ろうか。


ヒュ「助かったよ、だが俺の事は気にするな、避けられはしないがこの杖でなら飛んできた斧でも落とせるからな」


エ「次からそうするよ」


レ「皆さん早くこちらへ!」


すっかり忘れていたレンシーの存在、獣人は横たわったまま動こうとしない。

もう限界だろう、レンシーの回復する力も底をつきそうだ、そして獣人も。

大丈夫、助かるから、と言葉に出そうとしたエモ。

それは明らかに無理のある言葉だった。

どう見ても大丈夫ではない、助けられない。


レ「私にはもう命を繋ぎとめる事はできません、力不足です」


申し訳なさそうにうなだれるレンシー。ヒュドラも無言のまま俯いた。

獣人は言葉を理解していないかもしれない、でもこう言うしかなかった。


エ「ごめんなさい、あなたを助けることができなかった、ごめんなさい」


手を握り言葉をかけた。

獣人はゆっくり目を開けた。


獣人「あ、りガトう・・・たすケてくれテ・・・」


言葉を残すと獣人は息をしなくなった。

やるせない気持ちが溢れだす。

もう少し早く来ていれば、この獣人は死ななくて済んだのかもしれない。


レ「今の私には祈る事しかできません」


エ「レンシーは、人を生き返らせることが出来るんだよね!?」


ヒュ「無理を言うな、この状態じゃできないんだ」


鍛錬を積んだ司祭の中には人を生き返らせる能力を持っている。

それにはいくつかの条件下でのみ可能になるのだが、それでも必ず蘇生できるものではない。

これについては今のところ必要ないので割愛。


ヒュ「俺たちにはまだやる事残ってるだろ」


男たちは何かに洗脳されているようだった。

もしかしたらそれが探している宝石の影響かもしれないと、ここまで来たのだ。

最悪の状況だが探さないといけない。

倒れている三人の男を調べることにする。


ヒュ「気をつけろ目を覚ましてるかもしれないからな」


いつでもヒュドラは慎重だ。結構キツイ一発食らわせたから大丈夫だとは思う。

ヒュドラが男の持ち物を探る、エモとレンシーは後方で見守っている。

最初にナイフを持っていた男の持ち物から異様な力を感じる。

胸ポケットの内側に硬いものが縫い付けられていることに気付いた。

落ちていたナイフでそれを解くと中から宝石の一部と思われる欠片が出てきた。


ヒュ「これだな、例の宝石ってやつは。何か知らんが魔法がかけられているみたいだ」


今まで見た事のない色をしていた。赤、いや青い?角度を変える事で様々な色に変化している。

そんなことより、夢にまで見たあの宝石がここに存在している。

エモはこれを見つける為に旅を始め、短い期間で見つけることになった。

宝石が存在すると確信していたとはいえ、目の前にすると感動ではない別の感情が湧きあがってくるのを感じた。

何よりも欲していたのに、嬉しく無い。

溢れる悲しさ、無力さを知った、何故私はこんなことをしているのだろうか。


レ「とりあえず、この場をなんとかしましょう、ちょっと門番の所へ行ってきますね」


ヒュドラは宝石の欠片を手にするとエモを連れて階段まで来た。

倒れている三人は放っておいて、レンシーが誰かを呼んでくるまで待つ。

中は正直長居するには気分が悪くなる。

そして階段の上から差す月明かりに宝石の欠片を反射させ覗き込む。

こんなものが人を狂わせてしまったのか。

欲望は取り込まれ増幅し、その影響で他人も巻き込む、恐ろしいものだ。


ヒュ「おい大丈夫か?」


問いかけにエモは首を振る。

そうだろうな、誰も最期を看取ったら気が沈んでしまうものだ。

だが、この先もこの調子でいくなら旅は続けられないだろう。

今回は運が良かっただけだ。


ヒュ「エモこれはお前が持っていろ」


宝石の欠片を握らせる。

そしてエモは手のひらにある宝石を見つめた。



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