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失われた宝石  作者: 田貫うどん
第十章
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BLIND VENUS その2(第十章完結)

それからまた一か月程過ぎた頃。

これはもう犯人は来ないであろうとエモ達は思っていた。

継続された緊張感は思いのほかダメージを与えていて、レンシーの頭頂部には円形の傷が浮かび上がっていた。

どうしようと考えた末、一旦館長に任せ進展するのを待つのがいいだろうと結論づけた。

その提案を聞いた館長は「仕方ないですね」と残念そうだった。

エモ達の居ない間、宝石をどうするのかというと、本物は盗まれる可能性があるので置いてはおけない、ということでイミテーションの宝石の欠片を制作し、置いておくことにした。

盗まれた宝石が別の場所で見つかる可能性は少ないだろうがこのまま足止めを食らうわけにはいかなかった。

今できることはただ待つだけではなく進むこと、別の欠片を探し情報を待つことにする。

不安はある、もし犯人が現れてまた盗まれた時に偽物だと分かったとしたら。

そうならないように一層の警備強化を館長にはお願いしないといけない。


ヒュ「さて、適当な代用品あるかな?」


レ「そうですね、これなんかどうです?」


エ「あんまり良さそうなの無いね」


代わりの偽の欠片は見つからず、何かから作らなければいけないだろうか。

ひとまず町に出て探すことを提案し、各自の良識に任せた。

数時間後集まって収穫を見せ合う。


エモはそれっぽい欠片を持ってきた。

ヒュドラの持ってきたのはいびつな水晶の塊で形を変えればそのまま使えそうだった。

レンシーも同じようなものを見せ、ヒュドラの物と見比べていた。

そして、ニアスは握りしめた拳を皆の前に差し出した。


エ「ニアス良いの見つかったの?」


猫の毛を丸めた球だった。

流石にこれは無いなとエモは思ったが、堂々と見せてきたので何も言えなかった。


ヒュ「そうだな、これにしようか」


レ「私も賛成です」


エ「それ無いから!よく見て!毛玉!け・だ・ま!」


ニ「これ以上の物は無かったね。仕方ないね」


冗談はさておき、レンシーの持ってきたものを加工しそれなりの物を制作することに成功した。

しかしながら光の当たり具合で偽物と分かってしまうかもしれない。

まぁ本物を知らない人は判断できないだろうが。



ヒュ「さて、そろそろ出発するか」


レ「そうですね、これ以上の進展はありませんからね。時間がかかりそうですね」


エ「私の目的がこの美術館と言っても過言ではなかったのに、今後の目標を見失いそうになってる」



本来の目的は太陽が沈まなくなる世界をどうにか元に戻そうとし、伝承の話通り願いが叶うとされている宝石の欠片を集めをて旅をしているのだ。

欠片が見つからない以上他の可能性を確かめなければならない。

その可能性がなんなのかは分からないが。


館長「期待に添えなくて申し訳ない。こっちでもなんとか調査して見つけたいと思ってます。美術館館長の沽券こけんにかかわることですからね」


レ「全てをお任せするのは心苦しいですが、お任せしますね」


過度な期待はせず、なるようになれと思うヒュドラであった。

展示されていた宝石の欠片が偽物ならばそれはそれで肩の荷がおりるのだが、確認しないことには話が進まない。

答えが出るのはいつなのか。

まだ分からなかった。


美術館を出発し、次の町へ進む。


エ「無駄足だったのかなぁ」


レ「期待が大きかっただけにそう思っちゃいますね」


ヒュ「なるようになるだろ。今は疲れてるからゆっくり休んでから次へ行こうぜ」


順調にいっていた旅も一旦足止めを食らうと目的を見失ってしまうものだ。

だが歩みを止めてしまっては成すことはできないだろう。

困難な道でさえ、少しずつなら誰でも到達できるのだ。

大丈夫、きっとどうにかなる。

エモの心には不安が広がっていく。

終わりの見えない旅はいつまで続くのか。

分からないから、目の前の挫折はより激しく心にのしかかっている。



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