BLIND VENUS その1
それから数日後・・・
〔伝説の宝石の欠片 本日より展示再開〕
と、大々的に宣伝をする。以前のものとは違うが人々はそんなこと覚えてはいないだろう。
神々しく輝いて見えるエモが持っていた欠片を展示して獲物をおびき寄せる。
新たに別のものを置くのでいままで使っていた展示台を倉庫にしまい、エモの欠片専用の台も用意した。
いつ犯人が来てもいいように準備は整えたつもりだ。
客足の少なくなった美術館に再び活気が訪れる日はもうすぐだろう。
ニアスの接客も様になってきているし、レンシーはより眼光鋭く見張りを続けていた。
エモとヒュドラの作戦でやっとこの日を迎えることが出来た。
が、一週間経っても犯人は現れることなく気が緩んできた頃、しびれを切らしたニアスがウサギを小脇に抱えヒュドラの元へやってきた。
ニ「楽しいんだけどさ、こう何もないと目的忘れちゃいそう」
ヒュ「何にもない、変わりがないってことは幸せなんだよ?」
ニ「二度とは戻れないのか・・・泥団子でも作ろうかな」
作戦の為に用意した油と薬品入りの溶液を土にそそぎ始めたニアス。
この水はもちろん自然に戻ることができる天然素材、お子様が口に入れても安全ですが苦いです。
それはそうと、作戦は失敗だったのか、まだそう考えるには時期尚早な気もする。
水は長時間で涸れ、継ぎ足しながら使用してるのでそろそろ補充するときかもしれない。
館長「レンシーさん、状況はどうです?」
レ「全く異常なしですね。まだ一週間ですからね、気を抜かないようにしています」
館長「犯人は現れるんでしょうか?」
レ「なんとも言えません」
相手が分からない、こっちとしてもさっさと犯人が現れて解決したいと思っている。
宣伝が足りないのか、それとももうどこかへ行ってしまったのだろうか。
誰かの手にあるのは間違いない。
本当に間違いがないのか?
もしかしたら別の原因があるのでは?
心に何かひっかかりがあるが、それが何か分からないレンシーは考え込んでしまった。
ヒュドラとエモは美術館の入り口近くの飲食店の窓際を間借りし、交代で見張りを続けていた。
一人は見張りでもう一人は美術館の内部での情報交換と町の見回りをしていた。
ヒュ「あー!もう何の進展もない!飽きてきたな」
エ「気が抜けちゃうね」
ヒュ「ああ」
エ「ところで、本当に水の中を移動できる魔法能力ってあるの?」
ヒュ「あると聞いたことはある」
改めてエモに問われると少し不安になるヒュドラであった。
聞いたことはあるが、実際に見たことはない。
眉唾物であることは確かだ。
犯人は水の中を行き来できる能力の持ち主だと思い込んでいたが、実は違ったのだろうか。
もし違うとなると今までの苦労が台無しになってしまうので、ヒュドラもレンシーと同じく心に引っ掛かりながら行動をしてきた。
間違っていないわけでもない、水移動は一つの可能性なのだ。
他に何か手掛かりがあればいいのだが、無い。
エ「逃げられちゃったのかな?それともまだ近くにいるのかな?」
エモは思いつくままメモ帳に何かを書いていた。
●水の中を移動して盗む→水が繋がっていれば逃げられる→本当に繋がっていた?
●無くなったのは?→数日前→私たちが到着する少し前
●警備員が居るのに目撃者がいない→水の中を犯人が移動した?→移動していなかったなら盗まれていない?
●移動できなかったら→盗まれていない→でも無くなっている
●盗まれた?→盗まれてない?
エ「ねぇヒュドラ、もし宝石が盗まれてなかったとしたらどこにあると思う?」
ヒュ「あ?無くなってるんだから盗まれてるだろ。アホか」
エ「そうですよねー・・・」




