月下麗人 その3
犯人は新人の中の誰かだ!
と決めつけるには早いようで、新人だからこそ内部事情に詳しくないので犯人から除外されることが多い。
内通者がいるなら話は別だ、ということは・・・やっぱり新人が犯人だろうか。
それはエモ達の調査を待ってからも遅くはないだろう。
レンシーの調査対象のLはガタイの良いスポーツマンタイプの人間だった。
警備の制服は己の筋肉が邪魔し前のジッパーが閉まらないので暴力犯罪への抑止力にはなると想像できる。
しかし機敏さはなさそうに見える、ぼーっとしていることが多かった。
「犯人には見えないですね」
レンシーは美術館の中を歩きながら対象の様子をうかがっていた。
館長の提案によりレンシーは警備員に扮して美術館に潜入しているのだ。
一般の警備員は定位置だが、レンシーは警備員の上官という設定にして自由に調査するこができるようになっている。
いきなり話しかけるのは怪しまれる、今日は他の警備員の様子も見ながら調査してみようか。
正直、レンシーには警備員の仕事は分からなかったが、お客の対応と美術品の監視が主で、裏方に行くときには近くの警備員に声をかけ離れることになっているようだ。
これといって不審な点はない、どうやってここから宝石のかけらを持ち出すことができるのだろうか。
閉館時間になると警備員は少なくなり二人体制になるが、やはり双方目の届くところにいるので隙がない。
ただ、交互の休憩やトイレの時には一人になる。
新人のLが夜の時間に警備していたという事実、犯人の可能性は高い。
昼過ぎから夜中まで調査をしていたレンシーは考えをまとめるため、一旦宿屋で休むことにした。
これといった手掛かりは見つからなかった。
Lと他の人物との接点も今のところは不明だ。
もう少し時間をかけないといけないらしい。
ヒュ「お、レンシー戻ってたのか」
レ「ええ。ヒュドラの方はどうでした?」
ヒュ「これと言って特にはな」
別行動していたヒュドラが戻ってきた。
ヒュドラは同じ宿屋にいたHを調査していたのだ。
対象は今日はオフのようで夜遅くまで遊び惚けていてという。
ヒュ「今まで酒場に居たんだけど、ちょっと飲んだ勢いでHに話しかけて色々聞いてきたよ」
レ「それはご苦労なことで」
ヒュ「酒は本性が現れるからな。結論としてはあいつは犯人じゃないと感じたよ」
レ「ヒュドラがそう言うなら間違いないでしょうね」
ヒュ「そっちはどうだった?」
レ「色々怪しい点はあるのですが、様子見の状態で。状況から判断すると犯人の可能性が高いですけど」
決定的な証拠は見当たらなかった。
状況証拠だけでは決めつけられない、どうしたものか。
レ「とりあえず今日はLを就業時間終了から帰宅まで監視してましたけど、おかしな行動はしてなかったですね」
宝石の欠片は持ち歩いていないのか、それとももう手放してしまったのか。
一度手にしたら手放すことは考えにくい。
宝石の怪しげな能力は人々を狂わせ、その力に酔い我を失うのだ。
Lは犯人ではないのか?
ヒュ「ところでエモ達はどうした?」
レ「まだ戻ってきてないですね」
ヒュ「何やってるんだあいつらは」
レ「ちょっと心配ですね」
もしエモ達の対象Eが宝石の欠片を持っていて、宝石の力を使い襲ってきたらと考えると心配になる。
だがエモとニアス、それに狼に猫もいるので大丈夫だと思うが。
探しに行った方がいいだろうか。
無闇に探しに行っても仕方ないのだが。
レ「ちょっと探してきますね。ヒュドラはここで待っていてください。」
ヒュ「俺も行くよ」
レ「酔ってるでしょ、私一人で大丈夫ですよ。残ってもらった方が安心です」
ヒュ「そうか、それじゃ待ってるよ。あとこれ持ってけよ」
レ「なんです?」
ヒュ「簡易な連絡手段だよ。何かあったら放り投げれば俺に伝わるからな」
レ「魔法アイテムですか。こんな物あるなら最初に言ってくれればいいじゃないですか。エモ達にも持たせられたのに」
ヒュ「最近買った本に作り方書いてあったんだよ。試作品として使ってよ」
レ「分かりました。何かあったら使わせてもらいます」




