第1章 見習い魔法師の魔法学校 05
忍者。それは忍法使いである。忍法とは、簡単に言うならば古代魔法の一種であるらしい。主に身体強化系の魔法、そして、光系統の魔法を使える。古代魔法と星刻印の違いはあまりない。強いて挙げるならば、二つだ。
まずは刻印の場所。これが手の甲に無い場合が多い。理由は何故? と問われても不明である。
次は遺伝によるものであることだ。星刻印は突然変異に近い形で現れるが、古代魔法は遺伝によるものが大きいらしい。
らしい。や、分からないことが多いのは、古代魔法を使える人間は少数であることや、そもそも日本における忍法使いは知られることを得意としない。そういう特徴もあるからだそうだ。
しかし、中には例外もいる。
◇ ◇ ◇
白を基調とした若干殺風景な学園内を歩き、すぐに教室に着いた。
「ここが黒菜さんの教室になります」
「2-Eか。俺の教室ってことは、シロは違うところになるのか?」
「あ、はい。2-Aです。教育係なのに遠いクラスというのは、神門先生は一体何を考えてるんでしょうね」
シロの若干の苦笑い。まぁ、言わんとすることは分かる。教育係だというならば、同じクラスのやつを任命すべきだというのに。というわけだろう。
そうだ。同じクラスといえば。
「春日蒼って、どこのクラスか分かるか? ほら、今朝俺と一緒にご飯食べてたやつ」
「春日さん。あぁ、彼が春日さんだったんですね」
念のために聞いてみたのだが、どうやらシロは蒼のことを知っているようだ。あっちは知らなかったというのに。
「春日さんはE組のクラス委員長です。困ったことがあったら、クラス委員長に聞いてください。と、神門先生が仰ってました」
なるほど、だからシロが蒼のことを知っていたのか。
「何から何まで悪いな」
「あ、いえ。こちらも任された以上責任を持ってやらなければと、勝手にしたことですので。あ、先生がいらっしゃいましたね。先生に着いて行って軽く自己紹介などをして授業を受けてください」
ん? 何か今聞き捨てならない言葉が……授業……そういえば俺は……
「……やべ、時間割聞いてなかったから何も持ってきてない」
「えー?! と、取り敢えず先生に事情を話して隣の席の人に教科書を見せてもらって……」
俺のカミングアウトにあたふたし始めるシロ。このままでは二人とも遅刻してしまいそうな勢いだ。俺は取り敢えず冷静にシロに話しかける。
「分かったよ。大丈夫だから、シロも早く自分の教室に行きなよ」
言われてから時間に気がついたシロは、わ、分かりました! と、慌てながらも一礼して自分の教室へとかけていった。俺は後ろで待機していてくれた先生に事情を話し、教室内へと。
クラスの人たちの視線が集まる。
「えっと、本日付けでEクラスに転入することになりました。暁黒菜です。気軽に黒菜と呼んでください。あ、ちなみに六月という微妙な時期に転入して来ましたが、別に魔法が上手いわけでもなく研究生徒なので色々と教えてもらえたら嬉しいです」
久々な長文演説だったが、何とか噛まずに済んだ。シロのご飯演説ぐらいに上手くならないとなぁ。
極普通に、平々凡々に挨拶も終わり「じゃあ、あの席ね」と先生に指差された席へと向かう。窓際の一番後ろ。何とも素晴らしい席だ。光り輝く太陽の日差しを浴び、そして、風によって揺れるカーテン。その心地よさは眠気を誘い……ん? 待ておかしい。
「今、何か……」
もう一度確認しよう。カーテンが揺れているのに、窓は開いていない。そして、外は曇っているのに俺の席だけ日当たり良好。そして、もう一度、もう一度カーテンを見直してみよう。
「……先生。カーテンに変態がいるんですけど?」
俺が手を上げて先生にヘルプを求めると、カーテンが大きく揺れ、それは姿を現した。
「どうもっす。暁黒菜さん。自分は忍法使いの月島翡翠っす。隣の席なんでよろしくお願いしますね〜」
礼儀正しいのか、正しくないのか微妙な口調とやけに間延びした声が特徴の女性であった。