第1章 見習い魔法師の魔法学校 04
魔法学校の生徒には、二種類ある。通常の生徒と、研究生徒。である。
研究生徒は文字通り、研究の生徒だ。前回話ししたように、魔法はトライピースから使える。故にその前の一つ、二つの星刻印持ちは研究生徒と呼ばれている。因みにだが、シロはフォースピースである。故に、通常の生徒。
そして、暁黒菜は……
◇ ◇ ◇
翌る日の食堂。当たり前ではあるが、シロと部屋が同じなわけが無いので俺はそこで教育係の人間の姿を探す……が。
ーーまぁ、そりゃ簡単に見つかるわけないわな。
朝も小中高で時間割されているが、夕方とは比べものにならない人の数だ。当たり前だか、時間的に最後の高等部組は遅刻ギリギリになってしまうのだ。このシステム見直した方がいいよ。マジで。
券売機の列に並んでいると、俺の番が来た。そして、俺は昨日と変わらず鮭定食を押すと、
「朝から時間がかかる鮭定食とは……貴様は勇者か……!?」
後ろから話しかけられた。正確には話しかけてきた訳では無いだろうが、俺の動作に反応した発言だとは理解できる。
「勇者かどうかは分からないけれど、別に鮭の骨なんてそんなに手間がかかるわけじゃないよ」
食券を取って、俺は後ろを振り返った。
「お前さん、見ない顔だな」
「そりゃあ、転校生ですから」
身長はぱっと見百八十超え、髪は短髪、魔法師というよりスポーツ選手のような体格。
「転校生か、そりゃ、知らないわけだ。俺は研究生徒の春日蒼だ。よろしくな」
「暁黒菜。一応俺も研究生徒だ」
差し伸ばされた手を握り、握手をする。今日はこいつと朝飯になりそうだ。
そして、俺の予想は的中し俺と蒼は相席という形で朝食を頂くことになった。
「黒菜も研究生徒かぁ〜、一応聞くけど刻印は何個なんだ? 一個か? 二個か?」
「二個だよ。そいう蒼は?」
「同じく二個。物質固定と振幅増減魔法の刻印らしい。どっちも利用度ランクがDだから、三つ目でいいのが出なきゃ俺には良い先生が付かなそうだ」
利用度ランク。ようは魔法の格付けのようなものだ。EからAまで存在し、基準は生活に利用される必要度が目安だ。Cあれば、通常で使うレベルに達するので、そこが最低ランクとも言える。
「利用度ランクDか……まぁ、物質固定は大工さんとか、ニッチな人間に喜ばれそうだけど……振幅増減って……」
「ギタリストとかが喜びそうだろ?」
「ははっ……自虐ネタにしては面白いね」
「笑うなよ……」
まぁ、一概にランクが大切とは言えない。ランクが低くとも、使えるものはある。時と場合によるが。そして、蒼の魔法だが……
ーー利用度ランクならば低いかもしれないが、戦術ランクなら高いかも知れないがな。
と言っても、固定の力や増幅の力が微々たるものならば戦術ランクには該当しない。利用度ランクは魔法そのものの評価に対して、戦術ランクは魔法と魔法師セットでのランクなのだ。蒼の最大魔力出力値によっては使えるものではある。
「てか、お前さん本当に飯食うの早いんだな」
「ん?」
自分の鮭定食を見てみると、ほぼ完食。対して蒼のチキンバーガー特盛ラッキーセットはまだ残っている。そして、現時刻は、
「蒼。後二分で予鈴だぞ?」
「ゲ……マジかよ……」
俺は周囲を見渡す。そろそろ人も疎らだ。これぐらいならば、お、居た。不安そうに周りをキョロキョロと見渡すシロ。だが、すぐにこちらを見て顔に安堵が浮かぶ。
「黒菜さん。どうやら、朝食は済んだみたいですね。でしたら、教室に案内するので着いてきて貰えますか?」
「ん? 黒菜。こいつは?」
「シロだよ。俺の教育係なの」
軽く説明して俺はお盆を持って立ち上がる。
「んじゃ、蒼。また後でな」
「おう、またな黒菜!」
挨拶も済ませ、シロと共に食堂を後にした。