第五話(cinque)
暗い道。怪しい電灯が着いたり消えたりする小道に少年が1人。
彼は時田裕司。
罪を背負いし悪魔の一人ーーー。
オーディンの話を聞いてからずっと悩んでいた。
オーディンは言っていた。この戦いの勝者は願いを一つ叶えられると。
だが、そこまでして叶えたい願いとはなんなのだろうか?
富か名声かそれとも権力。
正直それらの物は時田の欲望を満たさなかった。
「叶えたい夢かぁ…」
時田はとぼとぼ歩きながら考える。
ーーひとつだけあった。時田の夢が。
それは、雪ノ上由紀と共に暮らすこと。
『雪ノ上由紀』
それは実在する人物ではない。
本の中の架空の人物。
通常『ライトノベル』と呼ばれるその本に時田ははまっており、その本のヒロインに…時田は恋をしたのだ。
「ぐふふ、ゆきちゃん…」
時田は毎日、由紀のことを考えていた。
本、漫画、ポスター、ストラップ、フィギュア。
集められる物はすべて集めた。
そして、最後に時田が望んだこと。
それは由紀に会うこと。
その時だ。悪魔のチカラが宿ったのは。
色欲『アスモデウス』
由紀に会いたいという欲望からできたその能力。
それは『空間を操る能力』。1次元から11次元までありとあらゆる空間を捻じ曲げ、創造し操る能力。
それにより時田は2次元を3次元に移行させ、由紀をこの世界へと連れてきた。
だが、結果は残念なものだった。
そう、由紀の召喚は自分の魔力が持つ限りしか無理。
30分。それがタイムリミットだった。
それゆえ時田は願う。
由紀が現実の嫁となることを。
ずっといっしょにいられることをーーー