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「懲りていなかったんですね?」

上書きしました(2022/7/2)



「……川本君」

「はいっ!」


 冷ややかな目に、楓はなんの躊躇もなくその場に正座した。

 絢香は左手にパスケース、右手に一枚の写真を持っている。

 写真に写っているのがただの風景写真ならばこんなに怒ることはない。怒っているのは、それが明らかに隠し撮りとわかる明後日の方を向いた絢香だからだ。


「懲りていなかったんですね?」


 以前、隠し持っていたカメラのデータは彼女自身の手で全て消した。その程度では生ぬるかったようだ。いっそ叩き壊せばよかった。

 ポケットから滑り落ちたパスケースを、親切心で拾ってあげたことを心底後悔している。

 ……いえ、悪事が発覚したからむしろ拾ってよかったのでしょうか……?


「まだ隠し撮りを続けているんですか。盗撮は犯罪だと、きちんと教えましたよね?」

「だって普通には撮らせてくれないんだもんっ」


 口を尖らせて不満をこぼす楓に反省の色はない。これは絶対にまたやる、そう思った。

 しばし考えて、絢香はまず左手に持っていたパスケースを彼の胸ポケットに返却した。続いて右手に持っていた、ご丁寧にプリントアウトされた自分の写真に左手をかけ、勢いをつけて半分にする。


「あああぁぁぁぁあぁ!?」


 楓が大きな声を出したので、周囲にいた生徒が驚いて振り返る。だが声の主が誰かわかると、またかという生暖かい目を向けるだけで誰もなにも言わない。

 写真をさらに四等分、八等分にして、結果ただの紙切れになったゴミをスカートのポケットにしまった。追い縋るように伸びてきた手は問答無用で叩き落とす。


「私は写真が好きではないので」

「そんなぁぁぁ!」

「ところで、これだけですか」


 ビクッと小さく跳ねた肩が応えてくれた。

 それを見逃さなかった絢香がさらに冷ややかな目で睨みながら手を出せば、楓はゆるゆると動き出す。

 制服のありとあらゆるポケットから写真が出てくるのを見て、なんとも言えない気持ちになった。手に乗せられた写真は、思いの外厚みがある。


「……怒りを通り越して、呆れます。なんなんですか、これ」

「き、嫌わないでぇえぇぇっ!」

「次はありません」


 次は本当に、許さない。



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