俺がお前に伝えたいコト。
こんにちわ。就職活動中のルノです。
いやぁ、我慢出来ませんでした。やはり。
さて、今回はblanket番外編(しかも短編)になります。
私のお気に入りのCPの一つ、のお話です。
尚、この小説には仕掛けがありますので仕掛けを読み解いてくださいね?じゃないと……あの子が報われません←
ちなみに、本文中には名前は一切出てきませんので、どのキャラかは想像にお任せします。まぁ、口調で確定出来るような気もしますが。
では、始まります。
[俺はある人をある場所にやっとの思いで呼び出して。そして話し出すんだ。
黙ったまま俯くある人に対して俺は少しだけ素直になる。自身の癖に抗いながら。そしてようやく紡ぎ出すこの想いを、貴方に聞いて欲しい。全ての言葉が揃い、貴方が当てはめた時、俺の伝えたかった言葉がそこに。]
『ねぇ、何なのよ、こんなトコに呼び出して。』
「そんなの、空気を読んで察してくれよ。」
『察しろだなんて……こんな場所に呼び出すなんて…理由は…』
(そう、一つしかないだろ?)
「思った通りの事さ。お前は俺を理解している。そして、俺もお前のコトを…」
俺は、何を言いたかったんだろう。
はは…自分でさえ分かっていないなんて。
おまえに伝えたい言葉なんて、
まだ、纏まってさえいないのに。
えらそうに語り出す俺を、お前はどうみてん
の?
ことばって意外と難しくてさ、思ってるこ
とが全て伝えられる訳じゃなくてさ。まぁ、そー
がっかりしないで聞いてくれよ。
すんだら合図を出すから、それまでは
きもちを落ち着かせてさ。
な?
んで、俺が何を言いたかったかって話……
だったよな。
【こうして貴方が“今、聞いてくれたコト”に意味があるんだよ。】
これがさっき言った合図でさ、つまりはそういう訳。捻くれ者の俺が、考えに考えた結果さ。
“お前が誰を見ていようと、誰に惹かれていようと。”
“今、答えが導き出されてしまったとしても”
俺は運命に抗うよ。
“お前が靡かなくても”
“お前の想いがもし叶ったとしても”
“俺はお前を奪いにいくよ。俺は諦めない。それ程に”
「分かったか?」
無言の末の理解。お前は少し顔を上げて俺を見た。お前の好きなやつとは違う、この瞳を。そうして両手で自身の手を覆った。
……こうなると分かっていた。
苦しませる事になるとも分かっていた。
でもこれしか術がなかった。
今、お前を見送ってしまったらもう俺の元に戻る事はないから。
俺が嫌いなあいつらの元へ行ってしまうから。“それでも”自分は理解してる。
お前は今まで通り、手の届かない存在でいればいい。俺は追い続けるから。
『理解したわ。××、貴方は私のコトが』
「そうだよ、“ずっとずっと前から”」
『本当に?』
「“本当に”」
『でも私は』
「わかってる。」
『……××…貴方って人は…っ、何なのよ!私を困らせないでよ…ッ!』
「紫にも、緋色にも、黒にも、白にも、青にも、緑にも、赤にも、橙にも、水色にも勝てないのは分かってる。俺は、灰色だから。」
『…全ての色を混ぜたら貴方ね』
「そうだよ。俺は、皆の悪いところを寄せ集めた、言わばゴミ箱さ。そんな俺にそう思われても何ら嬉しくないのは分かってる」
そう伝えるとお前は俺に背を向けて、首を軽く傾けた。それがどういう意味だったのかは知らないが、恐らく、俺の言葉に対して何かを思っていたのだろう。
少しの間啜り泣きが聞こえていたが、やがて静寂が場を支配した。気まずくなる空気に俺も背を向けたくなったが、逃げるな、と俺の中の何かが語りかけてくる。今ここで背中を向けたらきっと後悔すると。
その何かに従うように、俺はひたすらお前が話すのを待った。
『私にだって、色々あるのよ。桃の色であろうとし、運命に抗うくらいはしているわ。例えその運命が変えることのできないものだったとしても』
「それは俺も同じことさ……結果も、な…。」
『だからって諦める事は出来ないわ!』
頬に残る涙の跡。それを隠すように手で顔を覆いながら話すお前。アイツが俺ならお前を絶対こんな風になんてしないのに。
このままずっと想い続けたって辛い事はお互い知ってるはずなのに、どうしてお前はそうやって俺と同じように……。
「俺も諦めない」
『……ッ、なんで貴方そんな目で…そんな性格だったかしら?貴方には捻くれのイメージしかないのだけれど??』
まっすぐ自分を見つめてくる目線。それがいつもと違うから戸惑っているんだろう。俺は、確かに捻くれている。でも今日は機嫌もいいし、少しだけ…ちょっとだけ素直なんだよ。
お前も素直になれよ。
本当は寂しいんだろ?
俺には分かるよ、相手が自身に構ってくれない事の辛さを。
他の人から優しくされたら揺らぐんだろ?
少しは俺のほう……向いてくれよ。
「じゃあ、単刀直入に聞こうか。お前は俺のコトが嫌いか?」
ここで嫌いと言われたら、諦めよう。
何度も執拗に迫るのはいけない。
自分がお前を悲しませちゃ、ダメだ。
そう思って聞いた筈なのに、怖い。
もしここでキライと言われてしまったら、俺はどうすればいい?あぁ、そうですかなんて流せるものじゃない。
『嫌い…じゃないわよ…、でも、好き、でもないわ』
当たり障りのないセリフを選んだのか。お前らしい。
「なら俺にもチャンスはまだあるって事か。そっか……良かった。」
本心から笑みが零れる。
お前が俺に対してその対応をとった事で、俺は少なくとも嫌われていないコトが分かった。
本当なら、もっとお前と関わっていたい。
お前と時間を過ごしたい。
でも、俺の嫌いな彼奴らはどうやらそれを許してくれないらしい。
憎きアイツの声がする。
「もう暗くなって来たから帰ろう」と。
その声が聞こえた途端にお前はハッとしたように耳を反応させ、そそくさとその場を後にしようとした。お前に踏まれた草が微かに音を立てる。
………いかないで。
『…ッ!?』
……あと少しだけ。
「もう少しだけ、側にいてくれよ」
抑えきれなくなった本音は檻をぶち壊して溢れ出す。さっきまで隠していた事も、すべて流れ出した。
砂時計が割れ、砂が外へ流れるように。
掴んだお前の腕は温かくて。そして何かに似ていた。親しみのある、何かに。
お前はアイツの元に早く行きたいというように、早く俺から離れたいというように、腕を振り切って走ろうとした。
……今だ。
逃げないように、落ち着かせるように。
手を伸ばし、やんわりとお前を囲った。
またさっきのように振り切ろうとすれば、すぐに解けるほどの強さで。
『な……何……?貴方らしくない』
「らしくないと言われようがなんだって良いよ。今はこうしていたい気分。」
呆れた、というような微かな吐息に気付き、少しだけ広角があがる。これは…キタ、かもしれない。
『貴方の方が、よっぽど猫みたいよ。いつもはツンとして、誰も寄せ付けないくせに。いつも黒であろうとするくせに。その割に、白の部分は無くせないものだから、隠している。だから貴方は灰色なのよ』
「うん」
『……だけど何ででしょうね。不思議と今は、このままでいようかって気持ちよ。ただ、私は猫だから気まぐれ。いつ気が変わるか分からないけどね』
またアイツの声がした。
いかないのかと。
『今日は一人で帰るわ。先に行って頂戴。』
お前はそう返事をする。そうしてアイツ達が帰ったのを確認すると、黙ったまま俺に身を任せた。
『本当に不思議。何だか落ち着くわ。腕の中って。』
「アイツの腕じゃなくて悪かったな」
『そういう事言うのね。……でもそっちの方が貴方らしいわ』
「だろ?」
『あのね。貴方に相談があるの。身勝手なのは分かってるんだけど……』
「何?」
『……私の話を、聞いてほしいのよ。恋愛噺とか、世間噺とか。』
「いつでも聞いてやるよ。愚痴だろうがなんだろうが。お前のため……なら。」
段々と言ってる事が恥ずかしいと思い始めるが、この夢にも思ってなかった状況では、引くに引けない。
アイツみたいには出来ないけど、俺はこれで良いと思う。
『私ね、正直悩んでいるの。私はこのまま追い続けるのが良いのかって。』
「それはアイツの事?」
『…そう。貴方を見ているとどうも、頑張ろうって思うのよ。ライバル視してるみたいに。』
「いいんじゃない?俺は止めないけど。止める権利なんてねぇし。……でも、後悔だけはするなよ。辛くなったら俺のとこに逃げて来ていいからさ」
『そうね……それも悪くないわ。貴方なら、私を大切にしてくれそうだもの。……なんてね?冗談よ。逃げる気はさらさらないわ。貴方は……親友以上恋人未満、かしらね。現在は。』
「なら、これから変えてやるよ。親友でもいいけどさ。」
『………そう。』
そう言いながらくるりと体を回転させ、向かい合わせの状態になる。至近距離にお前の顔があるせいで、心臓の鼓動が速まっていくのがわかる。
このままじゃ俺、早死にする。確実に。
何のためにこっちに向きを変えたのか俺が必死に考えていると、お前は少しだけ俺に抱きつき、上目遣いで
『……楽しみにしてるわよ?』
とポツリと呟く。
……本性を現したな、猫娘。
“でもそんな所も含めて”。
お前が俺の気持ちに応えるのは、いつになることやら。
いかがでしたでしょうか。
【台詞や二人称について】
「」は捻くれた主人公。
『』は愛しのあの仔猫ちゃん
貴方、は画面越しでこの作品を読んだ貴方。
お前、は愛しの仔猫ちゃん。
彼奴ら、はカミサマ。
アイツ、は主人公の恋のライバル(笑)
です。
【色について】
本文中に出てきた色は、それぞれのキャラクターを指しています。分かりやすいのが一人いますね。
因みに、「」内で出てきた色の順番にも多少意味があったりなかったり。
【仕掛けについて】
まず、仕掛けを解いて頂くととある言葉が浮かびます。次に、その言葉を“”内の言葉の後に繋げてみてください。
すると、捻くれた主人公がかなり想いを連呼している事が分かります(笑)
…という、ちょっとした仕掛けでした。
以上、blanket番外短編でした!
(実はもう一作番外短編があったりしますが、それはまたいつか(*´∪`))