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第39話 指定ダンジョン、戸田

 GW三日目。


 今日も、目覚ましより先に起きた。


 6時。外はもう明るい。


 装備を背負って、母が作ってくれたおにぎりを三つ鞄に詰めて、家を出た。


 地下鉄で名古屋駅まで出て、近鉄に乗り換える。


 名古屋駅を出た電車は、しばらくビルの間を走ったあと、急に景色が開けた。


 田んぼだった。


 右も左も、田んぼ。水が張られたばかりの田んぼが、朝の光をきらきら反射している。


「ほんとに名古屋?」


 思わず呟いた。


 名古屋駅から、たった十数分。同じ名古屋市とは思えない。


 戸田駅で降りて、田んぼの間の一本道を歩く。


 カエルの声がした。一匹じゃない。何百匹もいる。田んぼ全体が鳴いている。


 遠くに、こんもりとした緑が見えてきた。戸田川緑地だ。


 その入口に、人だかりができていた。


---


 戸田ダンジョンは、緑地の奥の、古い水門の横にあった。


 コンクリートの水門の壁に、扉が一枚。その前に、プレハブのギルド出張所が建っている。指定ダンジョンなので、職員さんが常駐しているらしい。


 そして、人。


 人、人、人。


 装備を着込んだ探索者が、ざっと100人はいた。パーティごとに固まって、地図を広げたり、装備を点検したり、出張所の前で列を作ったりしている。


 全員、Dランクだ。


 全員、Cランクを目指している。


 一番人気がない指定ダンジョン、じゃなかったのか。


 GWだからか。いや、GWだからだ。休みの日に、Cランクを目指すDランクがみんな指定ダンジョンに押しかけているのだ。人気がないはずの戸田にまで、溢れてきている。


 その中に、明らかに探索者じゃない人たちも混ざっていた。スマホを構えている人。ドローンを飛ばしている人。手書きの紙を持っている人。


『ダンジョンさんぽ 戸田に来ると思ってた!』


「うわあ……」


 読まれていた。


 GWに、十五歳のDランクが、Cランクを狙って指定ダンジョンに来る。しかも人の少なそうなところを選ぶ。誰でも思いつく話だった。たぶん、他の指定ダンジョンにも同じような人たちがいる。


 深呼吸を一つ。


 堂々としてる。笑って一言。立ち止まらない。


 お姉ちゃんの五本の指を、頭の中で一本ずつ立てていく。


 よし。


 人だかりのほうへ、普通に歩いていった。


「あ」


「え、あれ」


「ダンジョンさんぽじゃない?」


「本物!?」


 すぐに気づかれた。スマホが一斉にこっちを向く。


「ありがとうございます」


 笑って、軽く頭を下げる。


「写真いいですか!」


「すみません、今日はプライベートなので」


「C狙いですか?」


「ありがとうございます」


 答えになっていない。でも、それでいい。立ち止まらずに、出張所の列に並んだ。


 後ろから、まだ声が聞こえる。


「えー、写真だめかー」


「いや、でもちゃんと挨拶してくれたし」


「感じいいな、あの子」


 いけてる。


 たぶん、いけてる。


---


 列に並んでいたら、前の人が振り返った。


 四十代くらいの、がっしりした男の人だった。使い込まれた鎧に、傷だらけの盾。


「……兄ちゃん、ダンジョンさんぽか」


「あ、はい。そうです」


「いくつだ」


「十五です」


「十五か」


 男の人は、遠くを見るような目をした。


「俺は、ここに通って七年目だ」


「七年……」


「最高で112階層。そこから先が、どうしても抜けられねえ」


 七年。


 112階層。


 Cランクの壁、という言葉の意味が、急に重くなった。


「頑張ってください!」


 思わず言っていた。


 男の人が、目を丸くした。それから、がははと笑った。


「逆だろ! 兄ちゃんが頑張れよ!」


 ばしん、と背中を叩かれた。痛かった。でも、嫌じゃなかった。


---


 扉の中は、水の匂いがした。


 戸田ダンジョンの第1階層は、田んぼだった。


 正確には、田んぼみたいな場所だった。天井は高くて、ぼんやりと明るい。床の大部分に浅く水が張られていて、その間を、土を盛った細いあぜ道が迷路みたいに走っている。水面から、青々とした稲みたいな草が伸びていた。


「すげえ」


 声が出た。


 ダンジョンの中に、田んぼがある。


 外の景色とそっくりなのに、全然違う。水の色がほんのり青く光っていて、稲の穂先には小さな光の粒がくっついている。


 こういうのが見たくて潜ってるところがある。


 同じダンジョンが、一つもない。金山の岩場も、千種の石造りも、赤津の焼き物も、城山の木の根も、全部違った。そして今度は、田んぼだ。


 あぜ道を歩き出したところで、最初のモンスターが出てきた。


```

マッドトード

難易度:D

```


 泥でできた、でっかいカエルだった。俺の腰くらいまである。


 水の中から、ぬるっと跳び出してくる。


「――無銘よ、我が手に!」


 呼んだ。


 手の中に、黒い刀が現れる。


 斬る。


 カエルが泥に戻って、水の中に溶けた。


「よし」


 振り返ると、同じ階層にいた別のパーティが、こっちを見ていた。


 四人組の大学生くらいの探索者だった。全員、ぽかんと口を開けていた。


「……今の、詠唱した?」


「無銘よ、我が手にって言った」


「本物だ……」


「本物のダンジョンさんぽだ……」


 そうだった。


 ここは、人がいるんだった。


 人の前で、毎回あの一行を叫ぶことになる。


「あ、ありがとうございます」


 とりあえず、お姉ちゃんの教え通りに笑った。


 そして、全力で走って逃げた。


---


 上の階層は、人が多かった。


 どこに行っても、どこかのパーティがいる。そのたびに「ダンジョンさんぽだ」と言われ、そのたびに「ありがとうございます」と笑って、走り抜けた。


 5階層の階段を下りたところで、ふと思った。


 今日、検証しとくか。


 無銘以外の武器。


 武器の書には、この頃の俺が特に気に入っていた何十本かに、口上まで書いてある。今まで使ったのは無銘と、エンペラー戦の槍と、千種の聖剣だけだ。他のやつが実際どうなるのか、一回ちゃんと試しておきたかった。


 人前で出すのは恥ずかしい。


 でも、どうせもう「ダンジョンさんぽ」だとバレている。何を出しても「スキルです」で押し通せばいい。武器を出すスキルなんだから、何を出しても武器を出すスキルだ。完璧な理屈だ。


 【書ノ保管】の一覧から、武器の書を開く。


 ページをめくって、手が止まった。


 中二の冬。オンラインゲームに毎晩張り付いていた時期のページだ。


 近未来の、光の刃の双剣。


 白と銀の柄に、青いラインが走っている。刃は実体じゃなくて、柄から伸びる光。柄の後ろには小さな噴射口があって、振る瞬間に光が噴き出して刃を加速させる。振ると、六角形の光の粒が軌跡に残る。設定画の横には、この頃の俺がゲームから覚えたばかりの横文字が、意味も分からずびっしり並んでいた。フォトン、コンバット、ブースト、アーツ。


 【双極光刃】(デュアル・ノヴァ)


 その下に、性能の説明がある。


 ・空中に留まり続けることができる。地面に降りる必要はない

 ・攻撃を当てるたびに、攻撃力が掛け算で上がっていく。上限はない


 ページの端に、小さく書いてある。


 ※二刀流はロマン


「ロマンだな」


 声に出していた。


 二刀流。光の刃。近未来。


 ロマンしかない。


 口上を確認する。二行。いつも通りだ。


 よし。


 6階層のあぜ道の真ん中で、両手を前に突き出した。


「――起動。双極光刃、展開!」


 両手の中に、重さが生まれた。


 白銀の柄。握った瞬間、青いラインが柄の上を走って、しゅん、という音と一緒に、光の刃が伸びた。


 二本。


 右手に一本、左手に一本。


「うおおおお……」


 声が漏れた。


 かっこいい。


 めちゃくちゃかっこいい。


「――我が両手に、未来を!」


 二行目を言い切った瞬間、刃の光が一段強くなった。


 ちょうどそこへ、水の中からマッドトードが跳び出してきた。


 踏み込んだ瞬間、柄の噴射口から青い光が噴き出した。


 体が、前に押し出される。


 速い。自分の足で踏み込むより、ずっと速い。


 右で斬る。噴射。左で斬る。噴射。


 斬るたびに刃が加速して、光の軌跡が六角形の粒になって宙に散った。


 三体目のカエルに向かって跳んだとき、柄の噴射が止まらなかった。


 体が、ふわっと浮いた。


 空中で、斬る。噴射して、もう一回斬る。


 と思ったら、二秒くらいで落ちた。水しぶきが上がって、膝まで濡れた。


 ずっと空中にいられる、とは書いてあった。今の俺だと、どうやら二秒が限界らしい。攻撃力が掛け算で上がっていく感じも、今のところ全然ない。


 でも、二秒でも飛べた。カエルが泥に戻る前に、もう次のカエルに向かって踏み込んでいた。


「二刀流、ロマンだろおおお!」


 叫んでいた。


 気持ちいい。


 無銘の一振りとは全然違う。右と左で、リズムが生まれる。斬って、斬って、回って、斬る。体が勝手に踊るみたいに動いていく。


 楽しい。


 楽しすぎる。


---


 そこから先のことは、正直、あんまり覚えていない。


 いや、覚えてはいる。覚えてはいるが、思い出したくない。


 7階層で、中学のときに考えた技名を叫んだ気がする。


 10階層で、「フォトン・ブースト!」と叫びながら水路を飛び越えた気がする。技でも何でもない、ただのジャンプだった。


 15階層で、リードスネーク三匹を一気に斬ったあと、双剣をくるっと回して逆手に持ち替えて、決めポーズを取った気がする。


 全部、他の探索者のパーティがいる階層だった。


 全部、見られていた気がする。


 でも、そのときの俺は、そんなことは一ミリも気にしていなかった。


 楽しかった。


 ただ、ひたすら楽しかった。


---


 25階層で転移陣を登録して、おにぎりを食べたあたりで、ようやく少しだけ頭が冷えた。


 いや、冷えてない。


 まだ楽しい。


 30階層を過ぎると、人の気配がほとんどなくなった。


 ここなら、もう一つの検証ができる。


 召喚。


 城山で兵士を呼んで、分かったことがある。呼び出した配下は、ちゃんと自分の考えで動く。だったら、隠れるのが得意な奴を呼べば、人の多いダンジョンでも目立たずに手伝ってもらえるかもしれない。


 部下の書を開く。


 第二席ヴィルヘルムの配下のページ。


 【影の使用人】


 ・老執事の配下。影がたくさん

 ・王の城の掃除と、身の回りの世話をしている

 ・影の中に潜れる。誰にも気づかれない

 ・掃除もできる


「掃除もできる」


 なぜ二回書いた、この頃の俺。


「よし、呼ぼう」


 決めた瞬間、頭に言葉が浮かんだ。ページの一番下の空白に、俺の字が刻まれていく。


 水路の横の、稲の影が濃いところに立って、手を前に出した。


「――影よ、主の足元に侍れ。音も無く、塵も残さず」


 足元の影が、ざわりと揺れた。


 俺の影の中から、何かが、にゅっと顔を出した。


 真っ黒だった。


 人の形をしているけど、輪郭が影そのものでできている。燕尾服みたいな形の黒い影が、一人。俺の影から這い出してきて、音もなく膝をついた。


「……お呼びでしょうか、王」


 声が、水の底から聞こえてくるみたいに小さかった。


「うわ、喋った!」


「……申し訳ございません。声が大きすぎましたか」


「いや、むしろ小さいくらい」


「……恐縮です」


 影の使用人は、影なのに、どことなく申し訳なさそうだった。


「えっと、人の多いところでも、見つからないように手伝ってほしいんだけど、できる?」


「……お任せください。我らは、影でございますので」


 影の使用人が、すうっと俺の影に沈んでいった。


 足元を見る。


 ただの影だった。どこからどう見ても、普通の俺の影だった。


「すげえ」


 試しに、次に出てきたマッドトードを双剣で斬ってみた。


 斬った瞬間、足元の影から黒い手がにゅっと伸びて、泥に戻りかけたカエルの魔核を拾い上げた。そのまま影に沈んでいく。一秒もかからなかった。


 ついでに、飛び散った泥も、影の手がきれいに拭き取っていった。


「掃除もしてる!?」


「……掃除も、できますので」


 二回書いたのは、このためだったのか。


 いや、絶対違う。


---


 40階層を過ぎたあたりで、遠くに一つだけパーティの気配がした。


 影の使用人に聞いてみる。


「……前方に四名。こちらには、まだ気づいておりません」


「ありがと。助かる」


 ドロップは影が拾ってくれるし、先の様子は影が教えてくれる。王にならなくても、これならどんどん進める。


 王にならないぶん、経験値もまるまる入る。


 と、思っていた。


 45階層で、影の使用人が、足元から小さく声を上げた。


「……王。水の中に、何か大きなものが」


「え?」


 あぜ道の両側の水面が、同時に、ざばっと割れた。


```

オオタガメ

難易度:D(上位)

```


 でかい、水の中の虫だった。


 平べったい茶色の体。鎌みたいに曲がった、太い前足が二本。それが、左右から一匹ずつ、あぜ道に這い上がってくる。


「虫は、ちょっと苦手なんだけど!」


 右のタガメが、前足を振り下ろしてくる。


 双剣で、受ける。


 重い。鎌の先が、光の刃にぎりぎりと食い込んでくる。


 左のタガメが、背後から来る。


 挟まれた。


 右の前足を弾いて、噴射で横に跳ぶ。


 左のタガメの鎌が、さっきまでいた場所を空振りして、あぜ道の土を抉った。


 着地して、振り返る。


 二匹が、並んでこっちを見ていた。


 硬い。前足の鎌は、光の刃でも簡単には斬れない。


 じゃあ、鎌じゃないところ。


 体の、裏。


 右のタガメが、また前足を振り上げた瞬間、その懐に飛び込んだ。


 噴射。


 体が、ふわっと浮く。二秒だけの、空中。


 タガメの真上から、背中に回り込むように、双剣を振り下ろした。


 背中の、甲羅の継ぎ目。


 光の刃が、すっと入った。


 右のタガメが、ばたばたともがいて、水に落ちていった。


「――っ、一匹!」


 着地した瞬間、左のタガメが突っ込んできた。


 しゃがむ。鎌が、頭の上をかすめる。


 低い姿勢のまま、タガメの腹の下に潜り込んで、双剣を二本同時に突き上げた。


 左のタガメも、動かなくなった。


「はあっ、はあ……」


 あぜ道に、膝をついた。


 影の使用人が、足元から、そっと声をかけてきた。


「……お見事でございます、王」


「やっぱ虫、苦手だわ……」


「……では、次に大きな虫が出たときは、先にお知らせいたします」


「ぜひ、お願いします」


 影の中から、ほんの小さく、くすっと笑う声が聞こえた気がした。


 50階層に着いたのは、午後五時過ぎだった。


 転移陣を登録して、影の使用人を呼び戻す。


「今日はありがと。すっごく助かった!」


「……恐悦至極に存じます。第二席様にも、ご報告いたします」


 第二席様。


 ヴィルヘルムにも、報告が行くのか。


 今日の俺の双剣のはしゃぎっぷりも、報告されるんだろうか。


「あ、あの、双剣のとこは、報告しなくていいから」


「……かしこまりました」


 影の使用人は、ほんの少しだけ間を置いてから、すうっと消えていった。


 あの間は、何だったんだろう。


---


 出張所でドロップを換金した。


 朝の列は消えていて、窓口には職員さんが一人だけ座っていた。


「お疲れさまでした。……ずいぶん、たくさんですね」


「今日は、50階層まで行けたんで。がんばりました」


「ごじゅう……」


 職員さんが、手元の端末を見て、それから俺の顔を見た。


「……今日が、戸田は初めてですよね?」


「はい。初めてです」


「……そうですか」


 職員さんは、それ以上何も言わなかった。代わりに、手際よくドロップを鑑定して、換金してくれた。


 合計、16万8000円。


 税金を引かれても、納税額はしっかり積み上がっている。


 外に出ると、夕焼けが田んぼを真っ赤に染めていた。


 人だかりは、もうほとんど残っていなかった。代わりに、カエルの声がさっきより大きくなっている。


 田んぼの間の一本道を、駅に向かって歩く。


 足が、ちょっと重い。でも、気持ちいい重さだった。


 ステータスを開く。


```

Lv:111

```


 一日で、11。王にならなかったぶん、経験値がまるまる入った。


 戸田で、50階層。


 あと、100階層。


 GWは、まだ四日ある。


「へへ」


 夕焼けの中で、一人でにやけた。


 そのとき、スマホが震えた。


 トークアプリの通知だった。


 送り主の名前を見て、足が止まった。


 遠野灯。


『5日、空いた』


『戸田、一緒に行かない?』


『私も、C狙ってる』


 戸田。


 遠野先輩も、Cランクを狙っていた。


 当たり前だ。先輩もDランクなんだから、目指す場所は同じだ。


 ということは、5日は、遠野先輩と一緒に戸田に潜る。


 王には、なれない。


 無銘の詠唱も、先輩の目の前でやることになる。


 いや、双剣の詠唱はもう今日、何十人の前でやったから、今さらだ。


 今さら……だよな?


 何か、大事なことを忘れている気がした。


『行きます!』


 打ち込んで、送信した。


 すぐに既読がついた。


 少しして、返事が来た。


『ありがとう。楽しみ』


 楽しみ、って言われた。


 田んぼの一本道の真ん中で、しばらく動けなかった。


 カエルが、うるさいくらいに鳴いていた。


---


 その夜。


 風呂から上がってスマホを開いたら、トリッターのトレンドに、見覚えのある文字列があった。


『#二刀流ロマンだろ』


「うそだろ」


 震える指で、タップした。


 動画が出てきた。


 田んぼのダンジョンで、光の双剣を振り回しながら「二刀流、ロマンだろおおお!」と叫んでいる、俺だった。


 別の動画では、「フォトン・ブースト!」と叫びながら、ただの水路を飛び越えていた。


 別の動画では、双剣を逆手に持ち替えて、決めポーズを取っていた。


『ダンジョンさんぽ、テンションどうした』


『千種のときと別人で草』


『完全にゲームの主人公になりきってる』


『楽しそうすぎる』


『でも普通に強いのがずるい』


『二刀流はロマン、わかる』


 全部、見られていた。


 気がする、じゃなかった。


 全部、撮られていた。


「うわあああああああああ!!」


 枕に顔を埋めて叫んだ。


 隣の部屋から、聖奈の「兄さんうるさい。あとトレンド見たよ。キモーい! あははは」という声が聞こえてきた。


 明日も、戸田に行く。


 あの人たちも、たぶん明日も戸田にいる。


 枕に顔を埋めたまま、俺はしばらく動けなかった。


 でも、二刀流がロマンなのは、撤回しない。

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