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『すべてを奪われた皇子は、復讐の果てに【悪魔の王】として世界を塗り替える』  作者: 綾坂真文
最終章:命動の戦場と信念の狂詩曲

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第六十話:雪原の死闘(前編)

最終章:命動の戦場と信念の狂詩曲

「ふぅひぃいい!! さあ、始めようぜ! 楽しい楽しい死合をよぉおおおお!!」

 雪煙を上げながら雪原地帯へと降り立ったディビラは、全身から禍々しい闘気を存分に開放する。その巨体は、まるで大地に根付いた巨木のようだったが、次の瞬間には、その質量からは考えられない程のスピードでまだ雪にまみれているアークとノインへと爆発的に踏み込んだ。


「ガハハハハハァアアア!! 戦争の始まりだぁぜぇええ!!」

 ディビラの拳が、まだ体勢を整いきれていないアークへと向かって、大気を引き裂く音を立てながら迫った。

「っ!! まじかよコイツ、あの高さから落下してんだぞぉ!! 化け物かよっ!」

 アークが必死に身体を起こし、拳を躱そうと身体を捻る。だが、深く積もる雪に足を取られ、思うように動くことができない。やられる。

「らぁああああ!!!」

 瞬間、迫りくるディビラの拳の軌道上に、真横から凄まじい回転を帯びた魔仭投三日月が投げ放たれる。

「ちぃいいい!! 小賢しい!」

 ディビラは咄嗟に軌道を変え、それを鋼鉄の手甲で裏拳のように振り抜き弾き返したが、そこにはもうノインが詰めていた。

 弾かれた魔仭投三日月を空中でガシッと掴むと、そのまま独楽のように回転しながら、勢いよくディビラの頭上へと魔具を振り下ろす。


 だが、その軌道は紙一重で空を切り、ディビラの身体に刃は通らない。そのまま着地したノインは、間髪入れずに次の行動へと移った。

「お前だけは絶対に許さない!! みんなの恨みをはらさせてもらう!! 地脈六芒陣!!」

 手に持った魔仭投三日月で、雪の大地に素早く六芒星を描いた。紋様が輝き、大地のエネルギーを一気に吸い上げると、その重く強大な力の塊を、至近距離のディビラに向かって一気に放出する。

「くたばりやがれぇえええ!!!」

 ノインの絶叫と共に、光の奔流となった全力の攻撃が、避ける間もないディビラを直撃した。

 その衝撃で大地が揺れ、地上の雪が猛吹雪のように舞い上がる。視界が白く染まっていく。

「まだだっ……ダメ押しだぁああああ!!!」

 その刹那、アークも立ち上がり、雪を蹴散らしてすぐにディビラから距離を取ると、空中で魔弦奏楽弓を構えた。

 風の矢一点に、ありったけの魔力を込めた膨大なエネルギーが集中する。

「風技・妖精乱舞(ようせいみだれまい)!!」

 放たれた一本の風の矢が、一瞬にして無数に枝分かれし、四方八方からディビラがいる爆心地へと集中砲火を浴びせた。

 連続した爆発音が響き渡り、地上が揺れ、空気の振動が波紋のように広がっていく。


「やったかっ!?」

 アークが着地し、弓を下ろしながらノインの横へと近付いた。

「はぁはぁはぁ!! 至近距離で地脈六芒陣が直撃したはずだ……いくら化け物でも……」

 ノインは肩で息をしながら、爆風の先を見据える。

 地上にぽっかりと空いた大きなクレーター。煙が晴れてきて、少しずつ見えてくるのは、粉々になった破片。それは、ディビラの身体ではなく――黒キ仮面の残骸。

「か、仮面っ!?」

 そうアークが呟いた瞬間には、もう既に遅かった。

 煙の中から、弾丸のように早いスピードで、巨大な影が飛び出し、アークの目の前に迫りくる。

「しまっ!!!」

 言い終わる前に、その剛腕が大砲のようにアークの腹を深々と撃ち抜いた。

「ぐぶぁああがぁああっ!!」

 嫌な音が響く。直撃を受けたアークは、口から血を吐き出し、まるで紙細工かのように歪に身体を曲げながら吹き飛んでいく。

 後方の大樹に激突し、幹をへし折ると、積もっていた大量の雪が一気に落ち、アークの姿は一瞬にして雪の下へと埋もれて見えなくなった。

「あ、あっ……アークっ!?」

 一瞬の出来事に、ノインは思考が停止し、戸惑いを隠せない。そんなノインに、ディビラは容赦なく迫る。両腕を握り合わせ、ハンマーのように頭上へ振りかぶると、その筋肉が不気味に脈動しているように膨張した。

「終わりだなァアアアア!!!」


「させるかよぉおおおお!!!! 氷蛇凍陣(ひょうじゃとうじん)!!!」

 ディビラの両腕が、まさにノインの頭蓋を破壊しようと迫った瞬間、地面から巨大な氷の蛇がうねるように牙を剥いて飛び出し、ディビラの腕に食らいついた。

 さらに、周りの雪が舞い上がり、その下から鋭利な数本の氷柱が一気にせせり上がる。その氷柱は、獲物を喰い千切らんとディビラの身体に激しく絡みつき、動きを止めた。

「ちぃっ!」

 その一瞬の隙を逃さず、ノインは後方に全力で跳躍し、ディビラから距離を取る。その横に、白い息を吐きながら魔氷四双剣を構えたリンシェンが滑り込み、並び立った。


「大丈夫かよっ! 少年!」

 声を掛けながらも、リンシェンの目は前方への注意を怠らない。

「あ、アークがっ!! アークが!!」

 ノインがアークが吹き飛ばされた雪山の方を見ながら、慌てた声で叫ぶ。

「わかってる!! キリリ!! その雪ん中にアークが埋まってる! すぐに掘り出して城へ戻れ!!」

 リンシェンが後方へ向けて大声で指示を出すと、第二防衛線に付いていたキリリが、数人の悪魔領軍の兵とともに雪をかきわけ、ぐったりとしたアークを助け出すのが見えた。

 キリリはアークを担ぎ上げ、すぐさま城の方角へと走っていく。


「少年、テメェはまだいけるか?」

 リンシェンが視線を戻し、低く問いかける。

「……当たり前だ! アイツは必ず僕の手で……」

 ノインが冷静さを取り戻し、ゆっくりと魔具を握り直した。

「上等だっ! 結界塔での借りを存分に返してやろうぜぇ……」

「第二防衛線は大丈夫なのか?」

「あぁ、数個小隊が海域戦を抜けて進軍してきているが、あっちはサティに任せてある。あの姉ちゃんなら問題ねぇよ」

 そして表情を引き締める。

「……それによ、どちらにしろあの化け物野郎をどうにかしねぇと、俺たちの勝利はねぇだろうからな。ここで食い止めるぞ」


 リンシェンが見据える先。拘束していた無数の氷の蛇と氷柱をバキバキと砕き、「ふぃひぃいい!!」と蒸気のような息を漏らす巨体が佇んでいる。

 仮面が砕けたことにより見えている素顔は、古傷だらけだが、不気味なほどにいやらしく、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

「……少年。出し惜しみはなしだ。全てを出し切らなきゃ死ぬと思え」

「……もとからそのつもりだ。絶対に僕の手で、アイツを葬ってやる」


 一瞬の静寂。風が止まる。次の瞬間、雪が爆ぜたように舞い上がる。リンシェン、ノイン、ディビラ。三人が雪原の中、同時に踏み込んでいた。

第六十一話:『雪原の死闘(後編)』に続く。

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