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『すべてを奪われた皇子は、復讐の果てに【悪魔の王】として世界を塗り替える』  作者: 綾坂真文
第五章:鳴動の邂逅と宿縁の幻想曲

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第四十六話:決着(四栄王の影)

第五章:鳴動の邂逅と宿縁の幻想曲


「待ってな! 助太刀してやるよっ!」

 影をいち早く葬り去ったカトリアが、肩に魔具を担ぎ直し、力強く声を上げて、まだ戦いを続けている仲間たちのもとへと走る。


 その様子を横目で見ながら、リンシェンが不敵に笑い、叫び返した。

「へっ冗談じゃねぇ! 助太刀なんて願い下げだ! バーサーカー女、こっちは問題ない!」

 影の怒涛の剣閃を弾き、避け、激しい打ち合いをしていたリンシェンは、ふいに後方へとバックステップして距離を取った。

 影が追撃しようと踏み込んだ、その瞬間。

「ここだ!」

 リンシェンは右足を軸にして爆発的に加速し、影の懐へと飛び込んだ。

 瞬時に影も反応し、その両手に持つ影の短剣を左右からリンシェンの首を狩るように振り下ろす。


 だが、リンシェンの姿はそこにはなかった。

 寸前で体勢を低くし、スライディングのように滑り込むと、左手の短剣を地面に突き刺す。その持ち手の部分を支点として、ブレイクダンスのように身体全体を回転させたのだ。

 遠心力で一瞬にして影の背後へと回り込むと、そのままバネのように跳躍。上空から右手に持った短剣を、無防備な影の背中へと突き刺した。

「Й〇Δ§Λェェェェ!!!!」

 影が絶叫しながらも、リンシェンを振り払おうと振り返る。だが、それはリンシェンの計算通りだった。

「遅ぇんだよ!」

 振り返ろうとした刹那、地面に突き刺したままだった先ほどの短剣が輝きを放つ。刹那、短剣を起点に氷の蛇が舞い上がり、影の身体を下から抉り取るように貫いた。

 急激に紫色の煙が舞い上がると、その奥に、赤く輝くコアみたいな石の姿があらわになる。リンシェンはその一瞬を見逃さない。


 空中で体勢を整え、右手の短剣に加え、背中からもう一本の短剣を左手で抜き放つと、クロスさせるように構えた。

「とっておきだぜぇっ! 氷天青龍(ひょうてんせいりゅう)!!」

 両手の短剣を一気に振り抜く。放たれた冷気の斬撃は、絡み合いながら巨大な龍の顎となって影のコアに食らいついた。

 石が砕け、氷の龍を思わせる巨大な氷柱が天高くへと舞い上がる。

「Й〇Δ§Λェェェェエェエエェ!!!!」

 影は認識できない断末魔のような叫びを最後に、霧散し、消え去っていく。着地したリンシェンが、ゆっくりと短剣をくるりと回して懐にしまい、振り返った。

「甘いんだよっ! 過去の亡霊だかなんだか知らねぇが……今を必死に生きているやつの邪魔をすんじゃねぇ」

 跡形もなく消え去った影から、赤黎い煙のようなものがリンシェンの持つ魔氷四双剣へと吸収されるように戻っていく。武器が、勝利を祝福するように冷たく輝いた。


 リンシェンが決着をつけていた一方で、音の鳴らない魔楽器の攻撃に突破口を見つけられないアークが、傷だらけになりながらも影と対峙していた。

「はぁ……はぁ。くそ、本気で攻撃が読めない……」

 アークの持つ魔弦奏楽器とは違い、音が鳴らないままに衝撃波として発動する影の楽器。

 音で認識できない分、手元の振動と空気の流れを集中的に見る事によって、致命傷は避け続けているが、このままでは防戦一方で、いずれ体力が尽きてしまう。アークは、どこかに勝機の糸口を探すように、全神経を研ぎ澄ましながら影と対峙していた。


「Й〇Δ§ΛΛΛΛΛ!!」

 しかし対峙する影は、ケタケタと笑っているかのような不快な声を上げて、再びアークへと高速で接近し、楽器のようなものを至近距離で振動させる。

「っ! くそっ!」

 一歩下がり、受け身に徹しようとするアーク。だが、その後ろから一陣の風が駆け抜けた。

「おらぁ!!」

 カトリアだ。彼女はアークの後ろで大きく跳躍すると、手に持った魔変刀暗器を回転させながら、影の脳天へと振り下ろす。

「大人しくおねんねしてなっ!」

 一瞬の出来事に、影もその重い一撃を避けきれず、直撃こそ免れたものの身体を大きく掠められ、よろめいた。

 だが、着地したカトリアは止まらない。勢いのまま影に向かって魔変刀暗器をしなやかに、かつ激しく突きながら、連撃を繰り返す。

「オラオラオラ!」

 影は防戦一方となり、徐々に後退せざるを得なくなっていた。


「アークっ! 今がチャンスだ。やっちまいな! とでかいのお見舞いしてやるんだなっ!」

 カトリアが作った絶好のチャンス。アークは「あぁっ! 助かった」と叫ぶと、目を瞑り、乱れた呼吸を整え、全神経を集中させていく。

 そして、カッ! と目を開き、手に持った魔弦奏楽器を激しく掻き鳴らす。

「荒ぶる風の神よ、旋律となって舞い上がれ! 風神の旋律・渦巻風車(うずまきかざぐるま)!」

 ジャァァァァァァァン!!

 その旋律は、激しく無数の音数ひとつひとつが実体を持つ刃に変わるようにうねりを上げ、巨大な竜巻となってその全てを飲み込んでいく。舞い上がる風の刃は、風神の怒りが如く影を粉々に斬り刻んでいった。

 影の防御が剥がれ、胸の中心にある赤いコアが露出する。


「アーク、いけるだろ!」

 カトリアの言葉に、アークは素早く指を走らせ、手に持つ魔弦奏楽器を変形させる。それは弓のような形へと姿を変えると、風の刃のひとつが一本の鋭い矢のように変化し、つがえられた。

「あぁ。決着をつけさせてもらうぜ!」

 アークは弓を引く。放たれた風の矢は、竜巻の中心でもがく影のコアを、正確無比に撃ち抜いた。石が砕け散る音が、風鳴りの中で響き渡る。

「Й〇Δ§Λェェェェグアェエガェ!!!!」

 影は断末魔とともに消え、赤黎い煙のようなものがアークの持つ魔弦奏楽器へと吸収されるように戻っていった。

「っ! はぁ、はぁ……ざまぁみろってんだ」

 アークは荒い息を吐きながら、その場に片膝をついた。


 残る影はあと一体。少年、ノインが対峙している方へとアークたちは顔を向ける。

「Й〇Δ§Λ!!」

 認識できない言語を繰り返し叫びながら、影の持つ円盤状の魔具が、ブーメランのように空間を不規則に舞っている。

 ノインはその軌道を正確に読み、驚くほど素早い動きで躱しながら、自身の持つ魔具、魔仭投三日月を構え、影へと応戦していた。

「幼い頃に僕の角を折った影……やっぱり同じだよね」

 ノインは、小さく呟き、自身の折れている角を触る。古傷が疼くような気がした。恐怖が蘇りそうになる。

「……でも、あの頃とはもう違うんだ。僕は、僕には守りたいものもあるっ! 逃げるだけの子供じゃない!」

 ノインは覚悟を決め、叫ぶと、その素早い身のこなしで対峙する影へと自ら飛び込んでいく。

「理不尽に命が奪われるようなこの世界を、僕が変えてやる! その為には、こんなところで立ち止まってなんていられない!」

 影の投擲を紙一重でかわし、ノインは跳躍し、影の懐へと入り込んだ。


「ノインっっ!!!」

 後方で隠れていたテナが心配そうに叫ぶ。

 ノインは空中で、手に持った魔仭投三日月を投げ放つと、手から離れたはずの魔具が、ノインの指先の動きに合わせてまるで操られているかのように複雑に軌道を変え、空中に光の紋様を描き出す。その形は六芒星。

「決めてやるっ!! 地脈六芒陣(ちみゃくろくぼうじん)!」

 瞬間、空中に描き出された紋様が輝き、大地のエネルギーを一気に吸い上げる。そして、その重い力の塊を、至近距離の影に向かって一気に放出した。


「Й〇Δ§Λェェエガェ!!!!」

 大地が揺れた。その純粋な力の塊に身体を貫かれた影から、赤いコアが露出する。

 ノインは手元に戻ってきた魔仭投三日月をガシッと掴むと、空中で回転し遠心力を乗せ、そのコア目がけて手裏剣のように全力で投げ放った。

 それは見事にコアを打ち砕き、影は霧散し、跡形もなく消え去っていく。

 着地したノインの手に再び戻ってきた魔仭投三日月に、赤黎い煙のようなものが吸収されるように戻っていく。

「はぁはぁ……僕だって、できるんだよ……」

 そう言って、糸が切れたように座り込むノインに、隠れていたテナが涙目で駆け寄る。

「ノイン……良かった、ほんとに良かった……」

 その周りに、いつの間にか、リンシェン、カトリア、アーク、そしてコルネも集まり、声をかけていた。

「……やるじゃねぇか。少年!」

「あぁ。上出来だろう」


 四つの影は消えた。だが、まだ根源が残っている。彼らは一斉に、広間の奥、玉座へと目を向けた。そこには、巨大な悪魔王の影と対峙している、ルーシェの姿が映っていた。

第四十七話:『総力戦』に続く。

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