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『すべてを奪われた皇子は、復讐の果てに【悪魔の王】として世界を塗り替える』  作者: 綾坂真文
第三章:黎明の反逆と奔走の行進曲

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第二十六話:決死の空中離脱戦

第三章:黎明の反逆と奔走の行進曲

 爆発音と警報音が、断続的に、そして次第に間隔を狭めながら響き渡っている。


 コンベアーに運ばれ、格納庫へと滑り込んだサティとモッズは、瓦礫が散乱する床を蹴り、目の前に見える一機の小型艇へと向かった。

 激しい揺れが足元をふらつかせる。耳をつんざく爆発音は、まるでこの巨大な戦艦の断末魔の叫びのように、どんどんとその数を増しているように感じられた。


「ちくしょう! あとどのくらい持つんだよ……!」

 モッズが崩れゆく艦内通路の方を、不安げに振り返りながら呟いた。

「……あいつらが、心配か?」

 操作パネルに素早くアクセスしながら、サティが問いかける。

「そりゃあよお、気にはなるだろう……」

 モッズが、歯切れが悪そうに答えた。

「……信じるしかないさ」

 サティは短くそう返すと、すぐに目の前の小型艇のコックピットへと乗り込んだ。メインパネルを起動し、エンジンの状態を確かめる。

「私たちは、私たちの出来ることをする……。さっさと乗れ!」

「……ちげぇねぇな」

 モッズも観念したように小型艇へと飛び乗ると、サティは慣れた手つきで操作パネルを叩き、エンジンを起動させた。

 連動して開いた格納庫のハッチから、二人を乗せた小型艇が、崩壊する戦艦から吐き出されるように空へと飛び立つ。


 夜は、既に明け始めていた。

 空には薄い青色が広がり、東の地平線からは、夜明け前特有の淡い光が、世界を静かに染め上げている。

「ひゅーっ! ……んで、目的地は?」

 隣の副操縦席で、シートベルトを締めながらモッズが声をかける。

「東のスクロニアだ。ギルジエンドに対抗するには、もはやスクロニアに協力を仰ぐ他ない……」

「おーけー。だったら行こうぜ……東のスク……!?」

 モッズが軽口を言いかけた、その時。空にはサティたちの小型艇を追尾してくる、いくつもの飛行艇の黒い影が見えた。

 その影は、二人の乗る小型艇を囲い込むように急速に接近すると、容赦なく対空機銃の雨を撃ち込んでくる。


「おおっい! まじかよ!」

 モッズが叫ぶのと同時に、船体に弾丸が当たる鈍い音が響く。

「くそ、新手か!」

 サティが小型艇を急旋回させながら、その攻撃を回避する。

 だが、相手の数は五機。執拗な追尾と、弾幕のような機銃掃射が、二人の乗る小型艇を撃ち落とさんと迫ってくる。

「このっ!」

 サティは操縦桿を限界まで引き、小型艇を回転させ、艦体を垂直に傾けながら、迫りくる敵機との接触を避けつつ、アクロバティックに空を駆ける。

 だが、相手の機銃は、そんな二人の小型艇の動きを正確に予測し、翼や装甲を執拗に攻め立ててくる。

 完全に避けきることは不可能だった。二人の乗る小型艇は、火花を散らしながら、なんとかその機銃の嵐を掻い潜るので精一杯だった。


 小型艇内では、攻撃の衝撃と急激な機動で、身体を左右に激しく揺さぶられながらも、サティが必死の形相で操縦桿を操っている。

「……翼に描かれたマーク、あれはギルジエンドの聖竜空団だ! くそ、あの逃げた指揮官の野郎が救援を要請しやがったのか? っと、うぉ!」

 声を上げながらも、激しい揺れに身体を持っていかれそうになるモッズ。

「おい、どうすんだ! ここで撃ち落とされたら終わりだぞ!」

「……うるさい! 少し黙ってろ! 状況を冷静に分析してる余裕なんてないんだ!」

 サティが一喝すると、パネルを操作し、さらにエンジンの出力を上げた。

「うぉおおおっとぉおお!!」

 急激な加速にモッズが悲鳴を上げるが、サティはお構いなしにスロットルを最大まで押し込む。


「最速でここから離脱する! 舌を噛まないように黙ってろ!」

 そう言って、サティは包囲網の一角へ向かって、決死の正面突破を試みる。放たれた敵機の機銃が、四方八方から二人の乗る小型艇の翼や艦体を無慈悲に破壊していく。

 それでも限界を超えたスピードで、二人の乗る小型艇は黒煙を引きながら、その空域からの強引な離脱を図った。

 やがて、二人の小型艇を執拗に追尾していた敵機の影は見えなくなり、なんとか撒くことに成功したかに思えた。


 だが、安堵したのも束の間だった。

 あちこちの損傷箇所から黒煙が上がり、火花が散る。操縦桿は動かしても鈍い反応しか返さず、操作パネルは次々と不吉な赤色へと変わり、システムダウンの警告音だけが虚しく響き渡る。

「くそっ!」

 サティが、赤色に点滅し続ける操作パネルを、苛立ちと共に叩いた。

「おいおいおいおい……もしかして……」

 モッズの顔色が青ざめる。

「……墜落だ」

 サティが、事実を淡々と告げた。


「うそだろぉおお!!」

「死なないように祈っておけ……」

 慌てふためくモッズとは対照的に、サティは覚悟を決めたように、逆に冷静さを取り戻していた。小型艇は煙と炎を吹きながら、地上へと落下していく。

「しょ、衝撃緩和用の空気袋とか、付いてねえのかよぉ~! この小型艇はよぉ~!」

 嘆くモッズの横で、サティの目が窓の下に広がる景色を捉えた。そこには深い緑の森と、その中心に水を湛える小さな湖が映っていた。


「……生存率を上げるぞ」

 サティはそう言うと、緊急脱出用のレバーに手をかけた。もうあと数秒で、小型艇は地上へと激突する。

「は?」

 ガコンッ!

 サティがレバーを引くと、操縦席を覆う透明な天蓋が吹き飛び、艇内に猛烈な風が一気に吹き荒れた。

「おぉお~っ! お次はなんだよ!」

 混乱するモッズの腕を、サティが強く掴む。

「えっ?」

「飛ぶぞ」

「はぁああああぁああ!?」

 モッズの抗議を無視して、サティはモッズの腕を強引に引っ張りながら、落下する小型艇から空へと身を躍らせた。


「なんなんだよぉ~!!」

 モッズの絶叫と共に、無人となった小型艇は森に激突し、大爆発を起こした。

 その強烈な爆風が、空中にいた二人をさらに吹き飛ばす。

 二人の身体は、まるで木の葉のように空を舞い、そして、眼下に見えていた湖面へと勢いよく投げ出された。


 ドッパァァァァン!!

 豪快な水しぶきを上げて、サティとモッズの身体は冷たい湖の底へと沈んでいった。

第二十七話:『しばしの休息』に続く。

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