シンデレラ
「__またね」
その日の夜は眠れなかった。
気がついたらアリスと出会ってから一ヶ月が経っていた。あの日からアリスの所には行ってない。なんとなく、行く気にはなれなかった。
学校ではもう文化祭の準備が始まっている。教室には段ボールや布が積まれ、放課後になるとクラスメイトの笑い声や話し声で賑わった。
「ここのダンスシーンをもう一回通してみて」
「はーい」
文化祭実行委員の人に声を掛けられ、体育館のステージに上った。
私のクラスでは劇をやることになった。劇名は『シンデレラ』。先生が決めたんだっけ、それとも投票で決めたんだっけな?
「じゃあスタート!」
スピーカーからワルツが流れ出した。それと同時に照明が落ち、光が私と王子様の男子だけを照らす。
_私がシンデレラ役を演るなんてね。
ちらりとステージの下を見た。そこには私をシンデレラ役にさせた張本人_綾音が「かえで、笑顔!」と言っていた。
「…分かってるよ」
小声で返して、無理やり口角を上げた。
「練習だし、気楽でやろう」
「ありがと…」
手を取られるまま数分踊ると、ダンスシーンはやっと終わった。
「お疲れさまー。やっぱよく似合ってるね、シンデレラ役」
「いやいやいや、どうして私になんかに演らせたの?他にも演りたいって子多かったんじゃない?ほら、王子様の男子って結構モテてなかった?」
「えっ?それはかえでが心ここにあらず、みたいな感じだったから他のことに熱中させたかったんだよね。あと、王子様役の男子がイケメンすぎて他の女子はやりたがらなかったよ。アンドかえでの男嫌いを直すためにだよ」
「うーん。それはそれで気まずいんだけど…」
ステージの端に腰を下ろすと、クラスメイトが文化祭の準備をしている姿が目に写った。衣装を作ってたり、カボチャの馬車型に切り取った段ボールに絵の具で色を付けてたり、少人数で台本を読み合わせてたり。
「そろそろ仲直りしなよ」
「…え?」
「何があったか知らないけど、いつものかえでじゃないし、誰かと喧嘩でもしたなら謝れば良いんじゃない?たとえ相手が悪くてもさ」
指輪嵌めてないじゃん、そう言うと綾音はぴょんとステージから降りた。
「あたしはいつまでもかえでの味方だから、頑張って」




