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死ぬまで君を愛してる  作者: 白唯奏


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6/8

思い出なんて望んでない

 目を開けると、アリスが黒い傘をくるくると回していた。

「アリスー!」

斜めった信号機の上に座っていたアリスが振り返った。

「来てくれたんだね」

黒い傘をパラシュートのようにして優雅に私の前に降りてきた。

「これ…落としもの」

アリスが差し出してきた黒い傘はやっぱり綾音の物だった。

「ありがとう。…?もしかして気に入ってた?」

「うん」

こくりと頷く姿を見て、私は鞄からさっき店で買った折りたたみ傘を取り出した。この世界に溶けていってしまうような薄い青色。

「折りたたみじゃないほうが良かったかもしれないけど、これあげるね」

ひと目見たときにアリスに似合うと思って買った傘だ。

「いいの?ありがとう」

「うん。あっ、あとね、これも食べて」

「…なにこれ」

「お母さんが作ったシチュー。アリスに食べてほしくて」

「………」

「アリス?」

何か言った気がする。でも、こんなに静かでもアリスの声は聞こえなかった。

シチューの入ったタッパーを見つめたままアリスは動かなかった。

「私、ちょっと散歩してくるね」

そう言い残して私はアリスから離れた。なんとなく、一人にさせた方が良いと思った。

「シチュー嫌いだったかな?それとも、食べ物見たことないのかも…」

適当に歩いていると、小さな駅についた。『ありす』と書かれた看板を横切って、線路の中に入る。しばらく線路の上を歩いていると、あの海が見えてきた。

「空気も水なのに、海があるなんて変なの」

靴と靴下を脱いで海に入った。どこまで歩いても深さは足首程度しかない。

「_____カエデ」

「!アリス!」

ぱっと顔を上げると、アリスが空のタッパーを持っていた

「おいしかった。…”あの人”の料理、初めて食べた」

「?美味しかったなら良かった。お母さんもきっと喜ぶよ」

「…うん。もう帰るの?」

「今日はお母さんのお手伝いする日なんだ。って、アリス」

「なあに」

「ここへどうやって行けばいいの?さっきはたまたま来れたけど」

アリスは少しだけ首を傾げた。

「キスだよ。指輪についた宝石にキスすれば帰れるよ。帰りたいときはだめだよ?」

近づいてきたアリスの瞳にはピンク色の海が写っていた。

「もう、しょうがないなぁ。次は夜に来て良い?」

「うん。待ってる。またね、カエデ」

「また後でね」

アリスの薄青の折りたたみ傘が傾くと、唇が触れ合った。

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