4話 余命あと、11時間。
午後1時 - 教室でのひととき
午後の授業が始まった。
結衣は机に向かっているが、頭の中はどこか遠くにあった。
先生の声も、友達の話す声も、すべてが遠くてぼんやりしている。
結衣は机に手を置き、少しだけ目を閉じた。
もしも、今すぐにでもこの教室を出て行ったら、誰も何も気づかないだろうか。
それとも、私がいなくなったことで、誰かが悲しんでくれるだろうか?
その考えが頭をよぎると、結衣は慌ててその思考を追い払った。
だめだ、そんなことを考えてはいけない。
今日は、最後の日。
できる限り笑って過ごすんだ。
午後4時 - 放課後
放課後、結衣は友達と一緒に帰り道を歩いていた。空が夕焼けに染まり始め、少し冷たい風が頬に触れる。結衣は歩きながら、友達と話し続けた。
特に面白い話題もないけれど、それでも楽しくて、心が温かくなる。
「結衣、今日、何か予定ある?」
と友達が尋ねた。
「予定?」
結衣は一瞬考えてから、
「うーん、ないかな。」
「じゃあ、みんなでカラオケ行こうよ!」
と彩花が提案する。
結衣は少し考えてから、頷いた。
「うん、行こう。」
その瞬間、結衣は思った。
この一瞬一瞬が、最後だということを忘れたくない。友達と笑って過ごせる時間が、どれだけ貴重かを感じていた。