「マルドゥック・スクランブル燃焼」冲方丁
『マルドゥック・スクランブル燃焼』
冲方丁/ハヤカワ文庫
(内容)
マルドゥック・スクランブルは、全3巻で構成された長編作品で、燃焼は第2巻です。
ボイルドとの戦いから逃げるように避難した先は、楽園と呼ばれる研究施設でした。そこで治療を受けるウフコック。彼を濫用してしまったバロットは、悔い改めます。ウフコックへの依存を辞め、芯の強さを手に入れたバロットがドクターに誘われたのは、シェルの経営するカジノでした。
(物語に出てきた具体的な色の紹介)
『深紅』
カジノのVIPルームへ案内されたバロットが見たものは、豪奢さに慣れた人々のための空間でした。そのVIPルームの絨毯が深紅で、ゲーム台が緑、とここでも赤と緑の対比です。
それまで色の描写がぐっと意識的に抑えられており、1つ成長したバロットが挑むステージの場面で一気に華やかな色が解放されます。
『蒼』
華やかなVIPルームで出会ったのは、シルバーブロンドの髪と蒼い瞳のディーラーです。ここまで細かく色が出ているのは、彼がバロットの対決する相手になるための印象付けではないかと。
蒼は読み方は「あお」ですが、色としては緑です。作者は青と緑どちらの色で考えていたかはわかりませんが、ディーラーはシェル側の人間です。クリーンなゲームをする設定ではありますが、バロットにとっては敵側なので、もしかしたら緑かもしれません。
(色の特徴)
1巻と違って、2巻では色名も登場回数も、ぐっと抑えられています。1番多かった赤でも、約半分は登場回数が減っています。
驚くことに、楽園の森林などの描写は一切「緑」色が使われず、登場するのはずっと後、VIPルームのゲーム台で登場した1回きり。
これも、シェルと戦う前の、バロットが乗り越えなければいけない大舞台という煌めきのためです。
(著者のカラーパレット)
『基本的な色』
赤、白、黒、青(蒼)、灰色、紫色、黄色、緑の8色で、1巻よりも少ないですね。赤が1番多く、次が白なのは1巻と同じです。しかし黒はたった1度のみ。3番目は大きく離れて、青でした。
『更に細かい色名』
銀色、水色、朱色、金色、深紅の5色だけです。1巻の3分の1という、厳選された色です。
『著者の作った色?』
著者が作ったのか、海外では普通なのか、私が見つけられないだけなのかわかりませんが、シルバーブロンドは色名事典にありませんでした。物語では銀髪は多く出るので、それを訳したのかもしれません。
『挿絵のカラー』
バロットの大舞台のVIPルームから、深紅と緑を抜き出しました。
細かい色名は、拙著『日本の伝統色』に載っています。よければそちらも参照ください。