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第4話 魔法塾

「アステリアくん…」

おっと?俺の魔法に見惚れての告白か?

「アステリアくんの魔法かっこよかった!あんな魔法どうやって修得したの?」

そう簡単に恋愛は発展しないよな。

「順序をしっかりと踏んでいけば出来るようになるよ〜」

「これからも魔法教えてね!」

「うん!勿論だよ!」


みんなにチヤホヤされて、6限分は最高の気分で過ぎていった…


そして俺は学校から家へ帰ろうとした。今日は魔力を沢山使ってしまった。今日はゆっくり帰って早く寝よう。


スタスタスタスタ…


夕暮れのお陰で辺りが薄い橙色に囲まれている。

景色に見惚れていると、人にぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい。」

すぐに謝り、顔を見た。仮面を被っている。身長は少し子供っぽい。俺の前世でいう中学生くらいだ。何故か姿を見て既視感を覚えた。

「ごめんね。」

相手も謝ってきた。でも、こいつはなんで前から来たのだろう。この先は俺の家か畑しかない。さっきのやつが農家?そんな訳がない。まあ考えても無駄だ。しかも今日は疲れている。もう帰ろう。


「ただいま〜」

俺は家の扉を開ける。

リビングは静かだ。いつもなら出迎えてくれるのに。

「おかえりなさい……」

元気がない。体調でも悪いのだろうか。

「どうかしたのですか?」

何かがおかしい。

「いえ、何もないのよ。ご飯食べちゃおうか。」

何もない訳がない。さっきの仮面の男が関係しているのか?

今日はやることをして、寝よう。


朝になった。今日は休日だ。3ヶ月後の魔法試験のために、魔法の練習をしよう。俺は動きやすい服装に着替えて外を出た。

向こうから誰かがこちらに走ってくる。ルイだ。

「今日も魔法教えて!」

相変わらず元気で癒される。

「今日は……」

ルイに魔法を教えるとあっという間に時間が過ぎる。気づけば昨日と同じように夕暮れ時になっていた。俺たちはそれぞれの帰路に着いた。

「じゃあまたね!」

相変わらずの元気だ。

「じゃあね」

そして俺は少し舗装された土の道を行く。

(明日はどんな魔法を覚えようか。)

そんなことを思いながらのんびりと歩いている。そうしていると、我が家が見えてきた。

「ただいまー」そう扉を開ける。「おかえり。」

クレアはいつも通りに出迎えてくれる。

「アステリアに話したいことがあるの。」

突然そう告げる。

「あなた′魔法塾′に行ってみない?」

魔法塾!そんな最高なものがあったのか!

「もちろん行きたいです!」

そんなもんOKに決まってるじゃあないですか!

「魔法試験も控えてるんだし丁度よかったです!」

「分かったわ!じゃあ塾長に話をしておくわね。」

誠に最高である。これで俺も主人公人生まっしぐらだな。

          この話が出て数日後…

「これから貴方は塾に週3回行くことになったわ。」

少ないなー。だが我儘を言うわけにもいかない。

「はい。分かりました。」

「因みに今日の学校帰りにあるわよ。」

ん?急すぎないか?

「え?あ、はい。」

そんなこんなで俺は学校でいつも通りの時間を過ごした。

「よし!学校が終わった!早速魔法塾に行くぞー!」

俺は駆け足で魔法塾に向かう。

「ここかー!」

木造で一軒家くらいの大きさ。

「初めましてー!」

扉をあける。そこには30代ほどの明らかに強そうな、物凄い貫禄を持つ人がいた。

(すごい覇気だ。おそらく先生だろうか?パッと見、仲良くなれる気しねえわ)

「君がアステリアくんか。初めまして。」

お、おう。(見た目で人を判断してはいけないよな。うん。)

「早速だが、アステリアくん。君には一つの試験を受けてもらう。」

「その一つの試験って?」

「それは、私と戦うことだ。ルールは2つ。1つ、私は君に必ず危害を加えない。2つ、君はただ全力で私を殺しにかかること。」

(やはり頭のネジが数本弾け飛んでるタイプか。)

「そんなことして大丈夫なんですか?」

「ああ。心配するな。私は強いからな。」

すっごい心配。間違えて殺しちゃったらどうすんだよ。

「では早速始めようか。」

俺と先生はグラウンドに移動した。

「さあ!思う存分に私を攻撃しなさい!」

「死んでも知らないですよ!」

氷風破壊(アイスウィンドバースト)!」

氷の風が先生の周りを渦巻く。

「まだまだ!身体強化!ギガンティックインパクト!」

俺の打撃は先生の腹に直撃する。

「なかなかやるじゃないか。」

先生はピンピンしている。

「な、なんで…」

だが俺には少しだけなら魔力は残っている。

「深淵の眼を開眼し、神の心は我の力に微笑みかけたもう。シャイニングセレナーデ!」

先生の足元に魔法陣が展開され、真上に向かって光の柱が放たれた。

「これが俺の全力だ……!」

さらに光の力は増していく。

「く、疲れた。どうだ?傷の一つや二つくらいは与えられたんじゃないか?」

光が徐々に消えていく。

「君は本当にすごいね」

なんで無傷なんだよ!強すぎるだろ!

「どうしたら無傷のままいられるんですか!」

俺は問いかける。

「君もいずれ出来るようになるさ。」

「いずれ…ですか…」

とりあえず試験は終わったらしい。

「君の実力は…そうだね…2級くらいかな。」

「え…なんで…あれほどの高難易度の魔法を使って見てたじゃないですか!」

「確かに使えていた。だが、全ての魔法が威力不足だ。あれじゃ下級魔法の火力と大して変わらんぞ。しかも、君はまだ自分と合った魔法を見つけられていないね?」

言いすぎやしないか?

「は、はい。」

「君は自分と合った魔法を見つければ幾らでも上を目指せる。そんなポテンシャルを秘めているのさ。」

一応は褒めてくれるんだな。

「これからは何をするんですか?」

「魔法試験までに得意魔法と、それぞれの魔法に磨きをかける。そうだ、言い忘れていたが君が受ける魔法試験は1級だ。」

結構上を目指すんだな。

「1級というとどれほど合格難易度が高いんでしょうか?」

「そうだな。魔法界の上位3%程と言われている。」

いや難しすぎるだろ。こんなまだまだ右も左も分からない子供に受けさせても良いのか?

「では、早速やっていこうか」

「わ、分かりました!」


「そういえば名前はなんて言うんですか?」

「名前…そうだな。先生と呼びなさい。」

「教えてくれないんですか?」

「また分かる日がくるはずだよ。」

なんだこいつ。


それから俺と先生の魔法の猛特訓は続いた。


         〜そして一ヶ月経ったある日〜


「アステリアくん。君は負けると確信した時どうする。」

急に変な質問してくるな。

「そうですね。地面から魔法を打つ…とかですかね。」

「そうか。ではもう一つ。相手と己の差が圧倒的だった場合はどうする。」

そんなの諦めるしかないだろ…

「それは運の尽きだったとしか…」

「君はこれから、他の一般人とは比べ物にならないほどの険しい人生を歩んでいくことになるだろう。私は君に死んでほしくない。だから秘技を教えよう。」

秘技?なんだそれ。

「一体どんなものなんですか…」

「それはだな……」

先生が話そうとした瞬間、俺たちの足元に魔法陣が展開される。

「なんですか!?これ!?」

俺は森の先を見る。そこには少し前に出会った仮面の少年だった。

「ちっ。これはまずいな。」

あの冷戦沈着、表情ひとつ変えない先生が焦りを隠せていない。

「俺が本当の魔法というのを見せてやろうじゃないか。シャイニングセレナーデ」

避けようがない。あいつの魔法の規模が俺とは比べ物ならないほどに大きい。

「アステリア!俺の腕に掴まれ!」

え…あ…足が……動か………ない…………

「早く!」

俺は重い足をどうにか引き摺り、先生の腕にしがみついた。


「安心しろ。私が絶対に守ってやる。」


俺の視界は光に包まれる。

先生の息が徐々に荒くなっていく。


「アステリア目を開けろ。」


俺は目を擦る。そこにはまだ仮面の少年が立っていた。そいつは口を開く。


「流石だね。君は。俺の魔法を防げるやつなんてそういない。しかも君は二人分。凄い以外の言葉が見当たらないよ。」


先生は話を遮り、半ば無理矢理質問をした。


「よく喋る小僧だ。一体何をしにきたんだ。」


あれ…あいつはどこいった?さっきまでいたはずなのに。俺は瞬きをしたほんの刹那の瞬間に仮面の少年は目の前にいた。腕を振り下げ、俺を殴ろうとしたところを先生が防ぐ。そして先生は小言を呟く。

「これを使うしか…」

先生は大声で叫ぶ。


「アステリア!下がれ!」


俺は訳も分からず後ろに走る。

先生は秘技を使う。俺は無我夢中で走った。先生の方を見ずにただひたすら前を向いて。

そして、またそいつは喋りだす。


「俺の目的を簡単に言うなら、アステリア。君だ。アステリアくんはこの世界の歴史すら揺るがしてしまうほどの存在だ。」


(急になんだ?)

「あ、え。」

そいつは意味深なことを言う。


「まあ、まだ分からないだろうね。でも僕は君たちの敵じゃない。これだけは分かっといてくれよ。」


本当になんなんだこいつは。


一息ついて先生は言葉を発した。


「あいつの魔力量は神にも匹敵する。次に不意打ちを仕掛けられたらまずいな…」


先生は極めて深刻な表情をしている。

ここは俺が安心させてやるか。


「先生!任せてください。私が必ず強くなってみんなを守って見せます!」


先生の顔には笑みが浮かんだ。


「それは頼もしい。将来が本当に楽しみだよ。」


     〜一ヶ月後〜


「そろそろ魔法試験が始まる。その試験会場がここから遠いんだ。いや、遠すぎる。」


そんな遠いの!?


「大体何日くらいで行けますかね…?」


「一ヶ月。」


え?


「だから、一ヶ月。」


ん?


「明日には行ってもらうぞ。」


ちょっと情報が…

えーと。明日にはこの村から出ないといけないのか…



     まだ別れの挨拶もしてないんだけど!?



「そういうことだから、今日は仕上げにかかるぞ。」


「は、はい。」


あっという間に練習は過ぎ、俺は帰路についた。


「たっだいまー!」


奥のキッチンにいるクレアがこちらを振り向き、急に抱きついてきた。


「どうしたんですか?」


クレアは泣きながら、嗚咽混じりだが、口を開いた。


「もう何ヶ月も会えないんだなって。こうして、子は親の元から離れていくんだなって。」


そうか。もう何ヶ月も会えなくなるのか。


「大丈夫です。必ずお母様の元は帰ってきますし、ずっと愛しています。」


母はさらに大きな声を出して泣き出した。


「絶対だからね…絶対…」


安心したみたいでよかった。


「さあ!ご飯も出来たところだし、食べましょう!」


「はい!」


俺はご飯を食べ終えた後に体を洗い、すぐにベッドに入った。

明日からここから離れるのか。やっぱり寂しい。俺の目からは涙が溢れていた。

おい…寝ることができないじゃないか…


〜その後、不安で全く眠ることができなかった〜


窓からは光が差し込み、見慣れた部屋は明るくなっている。


「はあ。全然寝ることできなかったわ。」


取り敢えず俺は身支度を終え、これからの長い旅のために荷物をまとめていた。


「すご…デカすぎだろ。これ背負えるかな…」


俺は階段を降りる。


「階段降りるのも一苦労だな」


階段を降り終えると、そこにはハンスとクレアが待っていた。


「おはようございます…」


クレアは昨日のように抱きついてくる。

「絶対に無事に帰ってきてね…」

ハンスも口を開く。

「我が息子がこうやって自分の道を突き進んでいくんだ。これはその第一歩。かっこよく見守るのが父親ってもんだ。」

おーい。めっちゃ顔赤いぞ。


「絶対にここに帰ってきます。これは必ずです。二人とも、お元気で。それじゃあ行ってきます。」


俺は見慣れた扉を手で開ける。その扉は見慣れたはずなのに、今だけ眩い光が差し込んでくるような、そんな不思議な感じがする。


俺は馬車に乗るために、村の入り口に向かう。それまで、この故郷の景色を目に焼きつけておこう。後ろでは二人が見送ってくれている。


「今日でこの故郷とは少しさよならかな。」

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