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ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド  作者: naro_naro
第一部 靴ひもは自分でむすぶ
1/79

 きょうは一日中曇りだった。そのせいだろうか、音が雲にはねかえってくるようだ。花火はチーバランドだろう。いつものパレード。海を越え、この島に届く頃にはかすかでゆがんでいるが、たしかに花火だった。


 ウォーデがうなっている。ずっと。

「うるさいよ」

 ささやくような声で注意した。

「すまんな。まだ調整がうまくいかねぇんだ」

「ぜんぶひろうのか」

 かわいそうに。聴覚強化はいいが、取捨選択がうまくいっていない。すべての音がはっきりくっきり聞こえるのだろう。

「ほら」

 ヘッドフォンをほうってやった。遮音性の高いやつ。ノーマル人間用だがないよりましだろう。

「ありがと。仕事にはまにあわせる」

 あちこちひねりながらなんとかあてがったが、ぴんとオオカミ耳がはみ出ていた。


「ファーリーとビクタはあとから来るって」

 小声で教えた。

「そりゃ用心深いこったな」

 毛むくじゃらの腕を枕にしてソファに寝転がった。大あくびをすると牙が光った。こいつがいるとせまい部屋がますますせまくなる。これからもう二人来るのにすでにいっぱいだ。


 ぴろん、と接近注意報が鳴った。チェックしようとしたが、その前にウォーデがヘッドフォンをすこし持ちあげて様子をうかがい、すぐもどした。なら安心だ。ノックと同時にドアを開けた。

「お元気?」

 ファーリーが細身の体をくねらせながら先に入ってきた。ビニール袋を置く。いつもの菓子だった。あとからビクタの巨体がどたどた。無言でそのビニール袋から菓子を出すと、空いた袋をウォーデの耳元で揉んだ。

「ばか、やめろ」

「まだアジャストできてないんか。そんなぽんこつイヤーもぎとってやろ」

 ウォーデがうなった。それを受けてビクタの肩の培養筋がもりあがる。ファーリーはさわぎを無視して上着を脱いだ。外側は光吸収黒で裏地は真紅だった。


 ぼくは手をたたく。

「お菓子とおふざけは後。ちゃんと計画練ってから」

「聞こえただろ。坊っちゃんを怒らせるんじゃない。おとなしく座んな」

 ファーリーに怒られて二人ともしゅんとした。ビクタが菓子を開けようとして手をはたかれた。

「後だって坊っちゃんが言ったとこだろ」

「あのさ、やめてくんない、それ」と口をはさむ。

「いいや。坊っちゃんは坊っちゃんさ。あたしらにとっちゃね」

 そういうファーリーに二人とも微笑んだ。ぼくは言い争うのをやめてモニタに地図を映した。ぼくらのなわばりのなかに点がうたれていく。

「これがここ一か月ほどの状況。食い荒らされてる」

「なめられたもんだな」とウォーデ。

「わかってたけど、イットメイクスミーアングリー」ビクタの肩がまたもりあがった。

 ファーリーは黙っている。頭の中はわかる。坊っちゃんは甘いから、だろう。ほかの二人もおなじようなものだ。ぼくはたしかに甘かった。


「みんなの考えはわかる。でもぼくは自警団を組織するつもり。あきらめないよ」


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