1話
古今東西前世の記憶を持った物語の主人公というものは、その事実を隠そうとすることが多い。当時の知り合いから「何も知らないくせに!」と言われ、知らないどころか実は当事者なんですけどね……なんてパターンもままある話。
それは色々あったが故の後ろめたさだったり、恨まれていると勘違いしていたり、前世に縛られない生活を送りたいからだったり……と理由は様々だ。
そんな展開を所詮はフィクションだと笑えない私、七瀬珠璃愛にも前世の記憶がある。愛する人と結ばれず、その上彼の意思を無視して先に死んだ、なんとも虚しい前世だ。でももし私が彼にもう一度出会えたなら、絶対にすぐ明かすだろう。決して良い別れではなかったし、それこそ恨まれている可能性だってあるが。それをちゃんと謝って、叶うなら今世こそ結ばれたいから。
……なんて、同じ日本どころかこの世界に転生してるかは分からないし、していたとしても会える確率は限りなく低いけれど。
例えどんな見た目になってても、おじさんでも幼児でも(その場合は流石に大人になるまで待つが)なんなら女の人に生まれ変わってても、それが彼なら絶対好きになる。
だからもし会えたなら、必ず、私がジュリアだって言って、今でも好きだと絶対伝えるって───。
思っていた、のに。
(この場合は、どうしよう)
目の前の状況に言葉を失う。彼がまだ生きていたのは、分かる。彼は長命な種族だから。……でも。
(前世の私が、まだ、生きている時は)
僅かしか書き溜め出来なかったのですが尻叩きの意味も込めて投稿を始めることにしました。応援よろしくお願いいたします。