プロローグ
「現実を見なさい!」
後ろから送られる叱咤から逃げるように自室ドアを閉めた。
部屋はカーテンーを全て閉め切っているため昼間でも薄暗い。
布団を被りスマホをいじる、動画投稿サイトを見て時間を潰す、それでも飽きが来たので布団の横に置いてあるVRゴーグルを手に取った。
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「現実はクソ」
「それ毎日いってね?」
日々の鬱憤をゲームで晴らす。
「まじでこっちが現実になんねぇかな」
「それも毎日いってるよな」
惰性、暇つぶし。
「ここでだべってないでなんかクエストいこうよ」
「ええー」
「面倒くさがんなよ、ほら行くぞ!」
「ひん」
VRゲームが一斉を風靡したのは5年前の事だった、今では数多のVRゲームが存在しており、ゲームジャンルの一種として定着した。
今俺がやっているのは王道のVRMMORPG、4年前から配信を初めて今でも運営を続けているゲームだ。
「お前ゲーム下手じゃないのになんでそんなやる気ないんだよ」
クエスト失敗
原因は俺の余所見だった。
「そんな怒んなよ」
「いや、マジでちゃんとやって、おもんないから」
「、、、」
ギスギスした空気が流れる。
「ごめん、俺落ちるわ」
耐えられず俺は逃げた。
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ため息が漏れる。
自分はなんなんだろう。
ネガティブ思考に陥る。
スマホを眺めながら時間を潰す。
そこでふと一つのネットニュースが目に入った。
『VRバトルロワイヤル Xリング 第1会世界大会優勝 賞金1億円獲得』
「ハッ」
鼻で笑う、1億とかw
それでもこの記事が妙に気になった、記事を読む。
読んでる内に自分がプロゲーマーだったら、そんなことを妄想する。
くだらないことだ、いつもの現実逃避のための妄想、そんなことを心のどこかでわかっていても妄想は止まない。
誰もが俺を称える、俺の凄いプレイに解説は驚く、そんな安い妄想。
ああ、こうなれたら、きっと人生は素晴らしい。
このゲームの公式サイトに飛んだ。
最近配信が始まったゲームでハイスペックVRの機能をふんだんに使ったゲームらしい、多くの大手ゲームメーカーが共同で作り上げたバトルロワイヤル式のローグライクゲーム。
俺は衝動的にこのゲームがやりたくなりダウンロードのボタンをクリックした。しかし
このVRゴーグルでは利用できません aqos 9 1130X以上のCPUが必要です。
4年前買ったVRゴーグルではスペック不足だった。
「なんだよ」
無性に腹が立つ手にあるVRゴーグルを投げたくなるがそれを抑え、横にあるエナジードリンクを飲み干し怒りを沈めた。
「、、、クッソ」
ふて寝した。
朝起きてキッチンへ向かい冷蔵庫を開け、エナジードリンクを飲んだ。
まだ、妄想を続けている。
スマホで最新のVRゴーグルを調べる。
最新VR
Oqulus me 3
300,000
「ブッ!」
エナジードリンクを吹き出す。
30万!?
馬鹿げている、引きこもりのニートが買えるような値段ではない。
諦めよう。
そうタブをスライドさせようとした時。
「何吹き出してんの!」
母が現れた。
俺は全力で逃げるを選択。
「ちょっと待ちなさい」
逃げられない。
母に捕まった俺は吹き出したエナジードリンクを拭かされていた。
「何これ、あんたまたゲーム買うの?」
母は人のスマホを勝手に見た。
「いや、買う金が無いよ」
俺は手早く拭き終わり、そそくさと逃げる。
「なら、バイトすればいいじゃない、30万なんて2ヶ月頑張ればすぐよ」
俺は自室に戻った。
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「バイトか、」
バカバカしい、今更働いてどうするんだ。
そう考え動画投稿サイトを開いた。
飽きた。
妄想が始まる。
みんなが俺を称える、みんなが俺を褒める。
俺はバイト求人を開いた。
「赤坂 乃吉くん今日から2ヶ月間短い間だけど、よろしくね」
俺はバイトを始めた。