悪役令嬢として婚約破棄されて、妹をいじめたという無実の罪で国外追放されもう20年ですか、でもあの時のことを忘れた日はありませんでしたわ……。因果応報ってご存じ? 元婚約者殿、その浮気相手のわが妹よ。
「そういえばそろそろ隣国の王太子の婚約者選びが始まるそうよ。お母さま」
「へえそうですか」
私はもう20年以上たつのかと私の前でお茶を飲む娘を見ました。
もうこの子も14歳ですか、早いものです。
「お母さまも昔婚約者だったことがあったのよね?」
「昔のことよ」
私はほろ苦い青春を思い出します。
昔、王太子殿下の婚約者だった私は、悪役令嬢として、実は婚約破棄されて、国を追放されたのです。
実はそれは嘘で、私の妹を愛した殿下が、妹と結託し私に妹いじめの罪を着せたのですが。
「そういえば、私のおばさまに当たる人が隣国の王妃と聞きましたが」
「あなたが婚約者選びの列に入らなくてよかったと安堵したわ、あの人が義理の母になるなんて」
私は深いため息をつきました。隣国の王妃は豪遊にふけり、王家の財政を傾けさせている一人でした。
「隣国も大変らしいですわね。お金がないうえに、みんな王太子の婚約者になるのを嫌がっていると」
「まあそうでしょうねえ」
妹にいいなりの元婚約者、今は陛下、女好きと大評判の王太子殿下、そして豪遊にふける悪役王妃と名高い人が義理の母……。
これだけそろっていて誰も婚約者なんてなりたがらないでしょう。
「お母さま、そういえば隣国の王太子の婚約者が国内で決まらず、わが国も打診があったとか」
「それで?」
「リリア王女と婚約が決まったそうですわ」
「あの方私より年上ですわ!」
「お母様38歳ですものね、あの方、45歳でしたか……」
一度結婚したが、その性格の悪さで離縁されて出戻ってきた王女が相手? 確か王太子は18歳。
親子くらい年齢が違うのですか。
「財政難の国に援助をするという目的だったそうで、それに王女様は顔がいい年下ならだれでもいいと」
「そういえばそうでしたわ」
「何を楽しそうに話してるんだい?」
「あなた、えっと」
扉が開いて入ってきたのは私の夫、娘はお父様あのねとたたたっと走り寄り楽しそうに話しかけます。
「ああ、そういえばあの国の王家は君の親戚にあたるのか」
「もう遠い昔のことですわ」
私は夫の上着を脱がしながら、お帰りなさいと笑いかけます。
この国の公爵である彼は、私と結婚してもう15年でした。そして王女にストーカーされてひどい目にあったんですわ。でっぷりの体に厚化粧、おーほほほほの高笑い、性格が悪いと若いときも大評判でしたわ。
「しかし、大変ね、貧乏なお国は、うちはそんなことなくてよかったですわ」
「外ではそんなこと言ってはいけないよ、レイナ」
「はーい、お父様」
国外追放となり野垂れ死にしそうなところを、たまたま拾ってくれたのが主人で、使用人として館で働いているうちに恋に落ちて……。
私は今は幸せですわ。
「王女のお相手とは大変だな」
「あなたも昔言い寄られましたからねえ」
「そうだなあ」
顔がいい人なら誰でもいいという王女に言い寄られた貴族令息は数知れず、飽きたらぽいの王女。
しかしそんな王女に甘い我が国ですが、それ以外はしっかりしている王のおかげかなとは思います。
まあ欠点はどこの家にもあるもので、欠点だらけの隣国とは大違いですわねえ。
「王太子殿下がいつ捨てられるか賭けている人もいたが……」
「王女が嫁ぐ形になるのですか?」
「しかし、あの王女がいなくなるだけで少し宮廷も静かになるだろう」
「ほんとに……」
私たちは笑いあいました。因果応報、あの王女の義理の母となる私の妹のことを思い、いい気味ですわと心の中で笑う私がいました。
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