第8話 アストロ王国王女との対面
アストロ王国からシャーロットがラムリア王国に来訪する日、ミネルバとアオラとザルトはアストロ王国から来訪するシャーロットを迎えるために謁見の間にいた。
「ミネルバ」
「なに?」
ザルトが声を掛けてきたため、ミネルバはザルトの方を見る。ミネルバは玉座に座っており、ザルトはミネルバから見て右に、アオラは左側に控えるようにして立っている。
「シャロが城の前に着いたから迎えに来てくれとメールしてきたんだが、行ってもいいか?」
「ついに来たんだね。うん、お願い」
「わかった。すぐ戻る」
ザルトはシャーロットからの連絡を受けたようで、ミネルバの頼みを受けると謁見の間から移動して城の外に向かっていった。
「ついにアストロ王国の王女様とご対面ですね」
「そうだね」
ミネルバもアオラも他国の王女との対面ということがあって少し緊張しているようだ。それからしばらくもしないうちにザルトはシャーロットを連れて戻ってきた。彼女の傍にはオルクという男性もいる。ザルトはシャーロットを連れてくると、先程までいた定位置に戻った。
「初めまして、ミネルバ王女。あたしはアストロ王国王女のシャーロット・アスラン。こっちはあたしの幼馴染みのオルク」
「オルク・トランディールだ。よろしくな」
「ラムリア王国王女のミネルバ・ラヴィリアです。こっちは私の筆頭使用人のアオラ」
「ミネルバ様の筆頭使用人のアオラ・クルミエールと申します!」
まずはお互いに簡単に自己紹介をするところから始める二人の王女。その後にミネルバが口を開く。
「自己紹介を終えたところで今日は遠路はるばる来訪いただき、ありがとうございます。シャーロット王女」
「堅苦しい挨拶は無しでいいよ。あたし自身そういうのあんまり好きじゃないし。今回は幼馴染みのザルトに会いに来ただけみたいなものだしさ」
シャーロットは砕けたような口調と態度でそう言う。一国の王女様のわりには堅苦しい挨拶などは苦手なようだ。
「まあ、そう言うなよ、シャロ。ミネルバもこうして迎えてくれているんだから歓迎を素直に受け入れてあげてくれ」
「ザルトがそう言うならそうするけど~っていうか、ザルト、主人のミネルバ王女を呼び捨てにして大丈夫なの?」
「ああ、本人から主命令で呼び捨てにしてくれとのご要望があったからな」
シャーロットからミネルバに対する呼び方について指摘されたザルトは正直に話す。この2人は幼馴染みらしく、そんなノリで話している。
「なるほどね~」
「シャーロット王女」
「ん?なに?」
ミネルバから名前を呼ばれたシャーロットはザルトの方からミネルバの方に視線を向ける。
「ラムリア王国とアストロ王国は隣同士だし、この際にそちらとの友好関係を築きたいと思っているんだけど、どうかな?」
「友好関係か~。それは構わないけど、一つだけ条件を出させてもらってもいいかな?」
「内容によるけど、言ってみて」
「模擬戦でいいからあたしと手合わせしてくれない?ラムリア王国の王女様がどれくらいの実力を持っているのか、興味があるの」
「模擬戦…」
シャーロットから模擬戦を申し込まれたミネルバは少し驚いたような表情をするが、ザルトが口を開いて説明する。
「シャロはこう見えて好戦的でな、俺やオルクもよく相手をさせられてるんだ」
「なるほど、それで相手してほしいと。わかった。それが友好関係を結ぶ条件なら飲むよ」
ミネルバはアストロ王国との友好関係を築くためならとシャーロットからの条件をのむ。
「さっすが!話がわかる~!」
「ミネルバ様!よろしいのですか!?」
「うん。ここはシャーロット王女の要求に従った方が良いからね。大丈夫、簡単に負けたりはしないよ」
ミネルバはそう言うと玉座から立ち上がって片手首を軸に杖を一回転させると魔法で光に包まれていつものドレス姿から動きやすい格好に変わった。
ミネルバは戦闘がしやすい衣装に魔法でチェンジすると、両サイドに控えるザルトとアオラに向かって言う。
「ザルトとアオラは手を出さないでね」
「わかりました…」
「わかった。ミネルバもシャロも危なくなったら止めるからな?」
ザルトはミネルバとシャーロットの2人にそう声を掛ける。するとミネルバとシャーロットはザルトの方を見ながら答える。
「わかった」
「わかってるって!」
2人の王女は戦闘をする準備をお互いに始めており、ミネルバは杖を持って、シャーロットは鞘に収めてある短剣の柄に手を掛けている。オルクは2人の邪魔にならないようにするためにザルトの近くに来ていた。
「場合によっては2人を止めるのはオルクも手伝ってくれ」
「おうよ。任せとけ!」
男性陣2人は力もあり、戦闘能力にも自信があるためかミネルバとシャーロットが危なくなった時は場合によっては2人がかりで止めるようだ。ミネルバとシャーロットは玉座の間の中心で向き合っている。
「メテオライト!!」
ミネルバはそう叫ぶと魔力光を自身の周囲にいくつか出現させてシャーロットに向かって光の束を無数に放つ。
「うわっと!いきなり凄いの来た!?」
シャーロットはそう言いつつも表情に焦りは見られない。鞘から短剣を抜くと、それを構えながら魔法陣を出現させる。
「ロックウォール!!」
シャーロットはその場で巨大な岩の壁を出現させてミネルバが放ってきた光の束を防御する。ミネルバの攻撃を防御した直後に間髪入れず、岩を無数出現させてミネルバに攻撃する。
「ブレイドロック!」
「っ!ライトシールド!」
ミネルバは魔力光の防護壁を出現させてシャーロットの魔法攻撃を防御していく。攻撃と防御がすぐに入れ替わる戦いを2人の王女は展開している。
「シャロと互角にやり合うとは、なかなかやるじゃねぇか」
「そうだな」
シャーロットの実力をよく知るザルトとオルクはそんなシャーロットと互角に戦っているミネルバに感心しながら2人の王女の戦いを見ている。
「シャーロット王女、あなたは地属性の魔法を使うんだね」
「そういうミネルバ王女は光属性の使い手ね。光属性の魔法は範囲攻撃が多いから相手しづらいんだよなぁ…」
シャーロットはそう言いながらも表情は涼しげであるため、まだまだ余裕そうである。ミネルバはそれを見てなのか、杖の先端をシャーロットのいる真正面に向けて魔力光を収束させ始める。
「そう言ってもまだまだ余裕そうだね。それなら、これはどうかな?」
「っ!!」
ミネルバが魔力光を杖の先端に収束させ始めたことで威力の大きい攻撃が来ると察知したシャーロットは自身も短剣を構えて自身も魔力を収束し始める。
「エレメンタルバスター!!」
「デザートトルネード!!」
ミネルバは魔力光による魔力砲撃を放ち、シャーロットは魔力による竜巻を放って対抗する。二人の王女がほぼ同時に放った最大級の威力の攻撃は激しくぶつかり合う。その結果、相殺して魔力による爆発が巻き起こり、爆煙も発生した。その直後に煙の中からシャーロットが飛び出してきて向かってきて短剣で攻撃しようとしてきたため、ミネルバは杖でガードする。
「魔法戦は得意でも接近戦はどう!?」
「っ!!」
シャーロットは接近戦に持ち込むと、途端にミネルバが押され始める。ミネルバは魔法戦が得意でも接近戦は得意ではないため、シャーロットの動きについていけていない。やがてミネルバはシャーロットによって壁際まで追い込まれてしまう。
「トドメ!」
「っ!」
「シャロ、もう良いだろう?」
シャーロットはミネルバを追い詰めていると後ろからザルトが声を掛けてきたため、彼と話すために後ろを振り返る。
「…うん、もう満足だよ!ミネルバ王女の実力もわかったことだし」
「ミネルバ様!大丈夫ですか!?」
2人の王女による模擬戦が終わると、アオラがすぐにミネルバの側に駆けつける。ミネルバは今の戦闘で体力をだいぶ使ったのか、息が荒くなっている。
「はあっ…はあっ…うん。なんとか大丈夫」
「今、回復魔法をかけますね」
アオラはすぐさまミネルバに回復魔法を使って彼女を癒す。アオラもミネルバと同様に回復魔法を使えるため、今度はアオラが使う番のようだ。
「シャロはやはり接近戦に持っていくと強えよな」
「それ、馬鹿力のオルクが言う~?」
「シャロは接近戦と魔法の両方が得意だよな。オルクは魔法をほとんど使わないが」
そんな感じにザルトとシャーロット、オルクの幼馴染み3人組は仲良く話している。その間にもアオラはミネルバを回復魔法で癒し終えていた。
「ありがとう、アオラ。おかげで楽になったよ」
「どういたしまして!それにしてもシャーロット王女、お強いですね」
「うん。私は接近戦が得意じゃないから、接近戦に持ち込まれたらすぐに形勢逆転されちゃった。さすがはシャーロット王女だよ…」
ミネルバとアオラがシャーロットについて話していると、2人の会話を聞いていたであろう本人が声を掛けてきた。
「お褒めの言葉ありがとう!友好関係の件だけど、さっきので満足したから承諾するわ」
「本当?ありがとうございます。シャーロット王女」
「うん!それとあたしの呼び方についてなんだけど、呼び捨てで良いよ。その代わりあたしもあなたのこと、呼び捨てで良い?」
シャーロットはミネルバと仲良くなりたいらしく、自分のことは呼び捨てで良いと言うのと同時に呼び捨てにしても構わないかを聞いてきたため、ミネルバは快く了承する。
「喜んで。よろしくね、シャーロット」
「こちらこそよろしくね。ミネルバ」
シャーロットが握手を求めると、ミネルバは応じて握手した。これにより、ラムリア王国とアストロ王国の友好関係を結ぶことができたのであった。




