第2話 ミネルバとアオラ
ミネルバは自身の言葉と抱擁でアオラが大人しくなると彼女から離れてザルトの方を見た。
「改めて、ラムリア王国へようこそ、ザルト。歓迎するよ」
「先程は私の我儘に付き合っていただき、ありがとうございました!ようこそ、ザルトさん!」
ミネルバとアオラがそこで改めてザルトを歓迎してくれる。どうやら受け入れてもらえるようだ。
「歓迎してくれるのは嬉しいんだが、さっきの模擬戦で俺の実力はわかってもらえたか?」
「はい!これならミネルバ様の守護騎士をお任せしても大丈夫であることがわかりましたので!」
アオラはザルトと手合わせをして彼の実力を充分に知ることができたため、ザルトがミネルバの守護騎士になることを認めたようだ。
「それなら良かったよ」
「それじゃあ、ここからはゆっくり話したいから私の部屋に行きましょうか。ついてきてくれる?」
「はい」
ザルトはミネルバにこれから主として仕えることになるため、彼女に対しては敬語を使うようだ。ザルトはミネルバとアオラの案内でミネルバの私室にたどり着く。
「ここが私の部屋だよ。良かったら座って」
「は、はい」
ミネルバがソファに座ると、ザルトにも座るよう促す。ザルトはミネルバが座っているソファの向かいにある椅子に座る。
「ただいま、お茶をお持ちしますのでお待ちくださいね!」
「あ、ちょっと待って」
「はい?」
アオラがいつものようにお茶を淹れに行こうとするとミネルバに止められる。するとミネルバは椅子から立ち上がってアオラに回復魔法をかける。
「さっき戦闘していたから一応、回復魔法をかけておくね」
「ああ…!?大丈夫ですよ!そこまでダメージは受けていませんので、お気遣いなく!」
アオラの言うとおり、先程のザルトとの模擬戦でアオラは魔力を使ってもダメージはほとんど受けていないのである。
「それでも、戦った後でしょう?だから、アオラには無理をさせたくなくて…」
「ミネルバ様…ありがとうございます!」
アオラはミネルバの厚意を無下にはしたくないため、大人しく回復魔法を受けることにしたようで終わるまではじっとしていた。
「はい、終わり。少しは楽になったかな?」
「はい!おかげさまで!今、お茶とお菓子を用意してきますね!」
アオラはそう言うと元気にお茶とお菓子を準備しに行った。そんな2人の様子を見てからザルトが口を開く。
「アオラとは主人と従者というよりは仲良しな姉妹といった感じに見えますね」
「そう見えた?」
「はい。アオラのこと、とても気に入っているんですね」
ザルトはミネルバが自分の向かいに座ると、そんな感想を口にした。するとミネルバはアオラが準備している姿を見ながら微笑む。
「アオラは私にとっては従者というよりは親友みたいな感じかな。普通にお喋りしたい時や何か相談したい時はアオラにしている時が多いんだ」
「そうなんですね。微笑ましい限りです」
「それにしても、ザルトは強いね。アオラは並大抵の相手ならその銃撃で近付けさせないくらいの強さなんだよ。それを軽く弾き飛ばして迎え撃つなんて」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
ザルトは主であるミネルバに褒められて素直にその言葉を受け取る。守護騎士にとって主にお褒めの言葉をもらえることは誇りなのである。
「あ、そうだ。ザルトにも回復魔法かけておくね」
「いや、俺は…」
「遠慮しないで。アオラにもやってあげたから、ね?」
ザルトは遠慮しているとミネルバに手を優しく掴まれて回復魔法を掛けられる。ザルトもアオラと同様にダメージは受けていないため、回復魔法はすぐに終わった。
「これでよし、と。少しは楽になったかな?」
「はい。ありがとうございます」
ミネルバはザルトに回復魔法をかけ終えたことでザルトの腕から手を離した。ザルトはミネルバに回復魔法をかけてもらったことで身体が楽になっていた。
ザルトとミネルバがそんなやりとりをしているとアオラがお茶やお茶請けのお菓子をワゴンに乗せて戻ってきた。
「お待たせいたしました~!ザルトさんは紅茶でよろしかったですか?」
「ああ、構わないよ」
アオラはまず紅茶が入っているティーカップをテーブルの上に置いてから、そこからお茶請けのお菓子が乗った皿を置く。
「今回は紅茶ということで、お茶請けのお菓子はクッキーにしてみました♪」
「あら、美味しそう」
アオラがミネルバの隣に座ったことでティータイムがスタートした。ザルトはまずアオラが淹れてくれた紅茶から飲んでみる。
「はい、ミネルバ様。あ~んしてください」
「もう、アオラったら。ザルトもいるんだよ?」
アオラはクッキーを1枚手に取ってミネルバに食べてもらおうとしている。端から見ればイチャついているようにしか見えないが…
「おっと、失礼いたしました!」
「ああ、俺は気にしないから続けていいぞ」
ザルトはアオラとミネルバが仲良しであることは知っているため、このようなことでは動じない冷静さを持っているようだ。
「ザルトさんは気にしないそうですよ!はい、どうぞ!」
「もう、アオラったら。あ~ん」
ミネルバはそう言いつつもアオラの厚意を無下にはせずに彼女にクッキーを食べさせてもらう。
「そういえば、ミネルバ様。質問してもよろしいでしょうか?」
「ん?何かな?」
ザルトに質問されたことでミネルバはアオラの方からザルトの方に視線を向ける。
「アオラは氷属性の使い手ということはわかったのですが、ミネルバ様はどの属性の使い手なのですか?」
「私?私は光属性の使い手だよ」
ミネルバはそう言うと魔力で光球を出してみた。これだけでミネルバが光属性の魔法を使えることがわかる。
「ご覧の通り、ミネルバ様は光属性の魔法を使えるんですよ~」
「そしてザルトは火属性の魔法を使えることがわかったから、アオラが模擬戦をしてくれたおかげだね」
ミネルバはザルトが魔法で使う属性がわかったことはアオラによる功績があるため、アオラの頭を撫でる。するとアオラは素直にとても嬉しそうな表情をしていた。
「えへへ~。そういえば、ミネルバ様!ザルトさんにこの国について説明してさしあげた方が良いのではないでしょうか?」
「そういえば、そうだね。ザルト、これからこのラムリア王国について説明するよ。アオラ、手伝ってくれる?」
「はい!わかりました!それではザルトさん、よろしいですか?」
「はい。お願いします」
ミネルバとアオラがラムリア王国について説明すると言ってくれたことでザルトは真剣に聞く表情になる。




